グラール・小説
★君とのバレンタイン/アルビレオ
悩んで考えた結果、誕生日プレゼントとバレンタインのチョコレートを一緒に渡すことにした。
1月30日の彼の誕生日に渡そうと思っていたマフラーがなかなか完成しなくて、結局数日前に完成したのだった。
渡す相手はアルビレオ・ラトナラジュ。
勿論、誕生日プレゼントもバレンタインのチョコレートも女の子からたくさん貰うことはわかってる。
女の子から人気はあるし、女の子からの贈り物を拒む性格でもない。
「だから私からのプレゼントも貰ってくれるはず。多分、他の子達からのと一緒で笑って受け取ってくれるはず」
そう声に出し自分に言い聞かせてはいるものの、なかなか渡しに行く勇気が出ない。
アルビレオは大抵、休み時間は女の子達と一緒に居て、アルビレオ自体を見つけることが出来ても声をかけることは難しい。
特に今日はアルビレオの誕生日であり、朝からアルビレオの周りには女の子達が側を離れなかった。
「どうしょう、渡したいのに渡せない…」
朝から隙を狙って渡そうとしているものの隙等出来やしない。
そうこうしている間に夕方になってしまっていた。
「もしかして今日は無理なのかも…」
中庭のベンチに一人座りため息を吐く。
でもバレンタインは今日一日しかない。
出来れば今日渡したい。
「あ、名前!どうしたのこんなとこで?」
「え?あ、ナイル。こんにちは」
「うん、こんにちは!」
元気に近寄って来たのはナイル。
そんなナイルは名前が持っている袋をじっと見つめる。
「なんか甘い匂いがする…あ、わかった!それチョコレートでしょ!?今日はバレンタインだってホクトが言ってた!」
「うん。実はアルビレオに渡そうと思ってて」
「アルビレオに?なんだーおれじゃないのかー」
「馬鹿ポチ。名前がお前なんかにチョコを渡すわけないだろ?」
「え、アルビレオ!?」
「よ、名前」
突然現れたのは目的の人であるアルビレオ。
「えっと…その、アルビレオこんにちは」
突然のことで心の準備が出来ていない名前。
アルビレオに会えたのだから渡さないと。
「あ、アルビレオ。これ受け取ってもらえる…?誕生日プレゼントとチョコ、なんだけど…」
緊張して袋を持つ手が震える。
袋を差し出すとアルビレオは微笑みながら受け取ってくれた。
「サンキューな名前」
「う、ううん。遅くなったけど誕生日おめでとう」
これでひとまず一安心。
「いいなーアルビレオばっかり。アルビレオいっぱいチョコ貰ってたのに」
「そりゃあ俺様にチョコを渡したいっていう姫達は多いからなぁ。ポチとは違うんだよ」
「む〜…」
「それじゃあ、わたし帰るね。目的達成したし帰って勉強しなきゃ」
言いながらベンチから立ち上がるとアルビレオに手を掴まれた。
「え?」
そしてそのままアルビレオの顔が近づいてきて耳元で囁かれた。
「名前からのチョコは特別だから大事に食うな。お前からチョコ貰えて嬉しいぜ?」
「…!」
「ありがとうな」
その直後、頬に温かい感触。
「え…!?」
「お礼のキス」
「……!!」
顔が真っ赤になっていくのが自分でもはっきり分かる。
「…さ、さようなら!」
恥ずかしすぎていたたまれなくなり、アルビレオの手を振りほどくと一目散に寮へと走り出した。
「あ、名前!もー、アルビレオがいきなりあんなことするからー!」
「べつにいいじゃねぇか、お礼なんだし。…お、マフラーか」
名前から渡された袋を開けてみれば、入っていたのはマフラーとチョコレート。
一目見てマフラーが手作りなんだとわかった。
おそらくチョコも手作りだろう。
「気持ち嬉しいぜ。ありがとうな名前」
見えなくなった彼女の姿を想い浮かべ、アルビレオは小さく呟いた。
END.
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