◆この夢が醒めるまででいいから/財前光 どうか、この夢が醒めるまで。 ここは…。 気が付けば、何もない空間に立っていた。 「なんやここ。夢、か…?」 なんとなく自分が夢の中にいるのだと感じた。 それにしちゃつまらん夢やな。 「ひかる…?」 「…え?…なっ」 どうして。 なんで自分が…。 「光」 「あ…」 不覚にも泣きそうになってしまった。 目の前に居るのはどこからどう見ても名前で。 一年前に病気で亡くなってしまった名前だった。 俺の想い焦がれていた人。 まさか夢に出て来てくれるなんて思っとらんかったわ…。 一年経っても忘れることなんか出来なくて、ずっと心の中に名前の存在を閉じ込めていた。 「名前…」 優しく名前を抱きしめる。 「光…逢いたかったよ」 「俺もや…」 どうか、お願い。 この夢が醒めるまででええから、このままでおらせてくれ…。 名前と離れたくないんや…。 そうや名前。 俺、一つだけ伝えたくて伝えられんかったことがあるんや。 「好きやで、名前…」 お題:『この夢が醒めるまででいいから』 END [*前へ][次へ#] [戻る] |