◇あの日からずっと、これからもきっと/白石蔵ノ介 「ほら白石くん、じっとしててよ?」 「名字は、ほんま手慣れとるなぁ」 「弟達がよく怪我して帰って来てたからね。軽い怪我の手当てぐらい簡単よ」 「そっか」 名字は慣れた手つきで、俺の顔の怪我した箇所の手当てをする。 真剣な顔で手当てをしている名字は、なんだか可愛くて。 しかも、名字の顔が目の前にあって。 …こんなに近くで名字の顔みたの初めてやな。 そういえば。 「なぁ、名字」 「なに?」 「初めて名字と逢った日から、こんなふうに手当てしてくれるようになったんやったな」 「そういえば、そうだった…かも?」 「かも?ってなんやねん、かも?って。そうか…初めて逢ったのが1年の時やから、もう2年も経つんか…」 初めて名字と逢ったのは1年のころ。 部活であちこち怪我だらけだった俺は、帰ろうとした時に名字と偶然逢って。 『君、怪我だらけじゃない!私と保健室行こ!』 そう言われて、半ば無理矢理保健室に連れて行かれ、名字は俺の怪我の手当てをしてくれた。 あの時…こんなやつおるんやなと思った。 初対面の相手にいきなり怪我の手当てするやつ。 けど、それと同時にその慣れた手つきと真剣な顔に見とれた。 そう。 その時俺は名字を好きになった。 あの日からずっと名字を好きでいて、俺が怪我をしたら名字がその手当てをする。 そんな関係が続いていた。 「白石くん、どうかした?」 「いや、なんでもあらへん。なぁ名字、また俺が怪我したら手当てしてくれるよな?」 「えー…って言いたいけど、もう日常的なものになっちゃってるもんね、白石くんの怪我の手当てするの。てか、出来るだけ怪我しないようにしてよね?」 「わかっとるって。これからもよろしくな名字」 「はいはい。了解しましたー」 「棒読みやん」 そう言うと、お互いの顔を見て笑いあう。 あの日から。 これからもこの関係は続いて行く。 この関係が壊されることなく、これからも。 お題:『あの日からずっと、これからもきっと』 END [*前へ][次へ#] [戻る] |