[通常モード] [URL送信]
◇天才の気持ち/財前光


最近、俺には一つ年上の彼女ができた。



彼女の名前は名前て言うてかわいい先輩なんやけど。



はっきり言うて、俺の気持ちわかっとらんわ。



俺は、名前先輩に惚れたから告ったんやで。



俺が先輩にかなり惚れてるてこと…。



ちゃんとわかってるんか…?












「先輩。帰りますよ」


「あ、光くん。ちょっと待って」


「はよして下さいよ先輩」



名前先輩は部活が終わるまで待っててくれる。


それはええけど、俺が部活してる間は先輩は教室で待ってるんや。



付き合い始めて一週間。



まだ一度も俺がテニスしてるとこ見に来てないんやで。


今は冬で寒いやろうけど、一回ぐらい見に来てほしいんや…。








すっかり暗くなった道を並んで歩く。



あんま会話もない。


俺がちょっと機嫌悪そうやから、先輩もあんま話しかけてこん。


さっきからチラチラと俺の方を見てるだけ。


気になってるんやな俺のこと。


「…光くん」


「なんですか」


「あ…その。光くん、私のこと怒ってる…?」


「怒ってませんわ。ただイラついてるだけです」



俺がそう言うたら、先輩は「そっか…」と小さく呟いた。

別に先輩を困らせる気はない。


ただほんまにちょっとだけ、先輩にイラついてるだけや。


「光くんって正直だよね」



唐突に先輩がそないなことを言う。



「どこがです?」


「思ったことは口に出すってところ」


「まあ、そうっすね」


「羨ましいな私…そうやって思ったことを正直に言えるところ」


「先輩…?」




先輩の足が止まる。


俺も足を止め、先輩に向き直る。



「部活見に行ってないことにイラついてるんでしょ、光くん」


「…先輩。わかってたんすか」


「うん…なんとなくね」


「そうですか…」


「ごめんね光くん」


「謝らなくてええですわ。そんなこと」



謝られても困るだけやしな。



「明日からは絶対見に行くから」


「それほんまですか?」


「うん、本当。やっと今日出来上がったから、明日からは見に行けるよ」


「出来上がった?何がです?」


名前先輩は手に持っていた紙袋の中から何かを取り出す。


「これ光くんに作ったんだけど…受け取ってくれるかな?」


そう言って渡してきたのは緑色のマフラー。


「これ先輩が編んで…?」

「うん。最近すごく寒いから…それに、私なんかを好きになってくれた光くんへのお礼でもあるの」


「…名前先輩。これ作ってたから放課後教室にいたんすか…」


「そうなんだけど…光くんをイラつかせちゃったし…ほんとごめんね」



イラついてたんが、馬鹿みたいやな俺…。


「先輩」


「え…ひ、光くん?」


嬉しくて自然と先輩を抱きしめとった。


俺にマフラー編んでくれとるなんて思ってもなかった。





「名前先輩のこと、やっぱ大好きですわ」






耳元で言うたら、先輩は顔赤くして照れてた。






名前先輩はかわいくて、俺が一番大好きな彼女や。



これからは部活も見に来てくれる。




ずっと一緒にいて下さいよ?



名前先輩…。









END

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!