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◆毒手からの恋/白石蔵ノ介


私には気になってしょうがないことがある…。


それは、蔵の包帯がしてある左手…つまり毒手のこと。


包帯をとったら…どうなってるんだろう…?


でも、毒手だし…怖いんだよね…。


本人に聞いてみようかな…。







「蔵!」





「ん?名前か」


「えーと…ちょっと聞きたいことが…」


「聞きたいこと?名前からの質問やったら何でも答えるで。なんや?」


「…毒手について」


「毒手?これが気になってるんか?」



と、蔵の毒手が目の前に。



「うわわっ!毒手はいい!毒手は近づけなくていいから!」


「もしかして名前、毒手が怖いんか?」


「だって毒手だよ!?毒が染みてるんでしょ?それに触れたら死んじゃうんでしょ?」


「名前、金ちゃんと同じこと言ってるで?でも、可愛いな名前は」


「かっ…」


「顔真っ赤やん。それも可愛いけど」

「く、蔵…」


「なあ名前」




蔵の左手が私に近づいてくる。




「実は…毒手はな」





蔵の手が私の頬に触れる…。



「くく、蔵っ!!」




触れてきた手を、私は反射的に叩いて突き放してしまった。





「…名前?」





蔵はびっくりしてる。


けど私は、なんだかすごく恥ずかしくて…。



蔵から逃げ出していた…。








「名前!?……どうしたんやあいつ…あ、もしかして」


今、名前に触れたの左手…つまり毒手の方。



「そうか…毒手怖がってたもんなあ…しくじったか…」











それからというもの。


名前を見つけては声をかけるが、名前は俺から逃げてしまうというのを繰り返していた。


この前のことを謝ろうとしても、逃げられたらできへんやん…。


そんなに毒手は嫌なんやろか…?


俺自身が避けられてるみたいで嫌なんやけどな…。


……しゃあない、捕まえるか。













「なにやってんだろ私…」



蔵の顔を見る度に恥ずかしくなって逃げ出してしまう…。


反射的にそうなって、ここ何日かはこんな調子。


どうしちゃったんだ私は…?


「いいや…考えてもわかんないし…帰ろ…」




と、その時。




「捕まえた!」




「きゃあっ!?」




えっ、なに!?


後ろから誰かに捕まえられた…?


というより抱きしめられてる!?



「やっと捕まえたでぇ名前」



耳元から聞こえてくるこの声は…。



「蔵!!ちょっ…離してよ!」


「嫌や。離したら逃げるやろ?」


「うっ……」


「それにしても、なんでそこまでして逃げるんや?」


「だ…だって…」


「…ごめんな」


「え?」


「この前、名前は毒手怖がってたのに毒手で触ったりして…」





「…………はい?」





「なんや、それやないんか?てっきり俺は、それで名前が嫌がってるんかと思っとったんやけど…」


「いや、あの私は…毒手はもうどうでもよくて…」


「はあ?なんやねんそれ…俺、毒手のことで名前に嫌われたかもって考えたりしてたのに…まあ、違ったならええか」


「ごめん、蔵。勘違いさせちゃって」


「ええよもう。で、毒手のことやないんやったら、名前はなんで俺から逃げてたんや?」


「え?それは、蔵の顔見るとなんだか恥ずかしくなっちゃって、それで…………あ」


「俺の顔見ると?へぇ〜」



うわわ…私ったらなに言って…。



「名前」


「……なに?」






「俺のこと好きなんやろ?」





「なっ……」


「ほら、顔真っ赤」


「う……」


「そっか。名前は俺のこと好きになったから、恥ずかしくて俺から逃げてたんか。可愛いな」


「お、お願いだから耳元でそういうこと言わないでっ」


「もっと言ってやろか?」


「言わなくていいっ!」


「可愛いで名前」


「ちょっ…蔵ってば!!」


「嬉しいなぁ。名前が俺のこと好きになってくれて」




俺は名前を少しだけ強く抱きしめる。






「俺も好きやで。名前のこと」








このぬくもりをずっと離したくないぐらいに…。









END

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あきゅろす。
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