BL小説
◇君の支えに/ちとくら
どうしたのだろう…。
頭が上手く働かない。
「しらいし…?」
あ…誰かが俺を呼んでいる。
けど、駄目だ。
目の前がどんどん暗くなっていく。
体の力が抜ける…。
「蔵っ!!」
「…あ……?」
目を開けると蛍光灯の放つ光りが眩しくて、思わず目を瞑った。
「白石?やっと起きたたいね」
「ちとせ…?」
「心配したばい…突然倒れるから」
「千歳…ごめん…」
やっぱ俺は倒れてしもたんか…。
せやから保健室のベッドに寝かされてるわけか。
「疲れが溜まってたみたいばい。軽い貧血って先生が言ってたけん」
「そうか…」
「最近頑張りすぎばい」
「そう言うてもな…」
「一人で頑張らんでよかとよ」
「千歳…」
「部長だからって一人で全部やることはなか。俺が居るたいね」
ベッドから起き上がることもせず、千歳をじっと見つめる。
心配してくれてんやな。
「あ、でも俺より小石川の方が役に立つかもしれんね。副部長だからな」
「なんやそれ。結局千歳は役に立たんってことか?」
「んー、そうかもしれんたい。部長の仕事を支えるんは俺には出来んばい、きっと。みんなをまとめるのは白石じゃないと無理と」
ははっと軽く笑う千歳。
その後、でも…と千歳は付け加える。
「白石の部長としての仕事は支えられんばってん、白石を支えることは出来るばい」
「千歳…」
「な?」
「そうやな…」
「白石やけに素直たい」
「…ほっとけ」
何故だか嬉しそうな千歳に対して目を逸す。
「蔵」
優しく名前を呼ぶ千歳に一瞬目を向けると、唇を千歳の唇で塞がれた。
「…んっ」
けれど塞がれていたのは少しの間ですぐに千歳は離れた。
「ちと…」
「蔵は無理ばっかするけん、俺に頼ること。蔵の為なら俺に出来ることはなんでもするたい」
「……」
「だけん、今は少しでも寝て疲れを取る。それだけに集中するんばい?」
「…わかった。千歳には適わんな。じゃあ、今度から遠慮なく頼らせてもらうで?」
「良かよ。蔵に頼られるなら嬉しいもんたい」
「あほか」
「ほら、少しでも寝るばい。俺がここに居るけん」
千歳が俺の手を握る。
その心地良い暖かさを感じながら、静かに目を閉じた。
「綺麗かね…蔵は」
10分もすると白石は寝てしまった。
白石の寝顔を見ているとその綺麗な顔につい見とれてしまう。
「蔵…」
握った手を離さないように握り締めると、その手を自分の口元へと引き寄せる。
「俺が蔵の支えになる」
だから、もう無理しないで。
心配させないで。
「俺が側に居るから」
君の支えになるから…。
END
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