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BL小説
◇誕生日/光謙


それは自分の誕生日の日だった。



あんまり誕生日という自覚はなくて、家族に朝から「おめでとう」と言われ、そういえばそうだったぐらいの感覚だった。




誕生日か…。




そう思ったら、何故だかむしょうに会いたくなったやつがいた。






財前光。






後輩で、ダブルスパートナーである光に会いたくなった。










屋上―。






「光、自分一人寂しく昼飯か?」



「…なんスか?別に関係ないやろ謙也先輩には」



屋上の扉を開けると、光は一人で屋上の真ん中あたりに座っていた。


昼休みだというのに、屋上にたった一人でパンを食べている。



いつも一人なんやろうか…?


ふと、謙也はそう思った。




「で、先輩はなんでここに来たん?」



突然やって来た謙也の方を振り向きながら光は言う。



「ん?」


「まさか、俺の昼飯邪魔しに来たんじゃないスよね?」

「なんで邪魔せなあかんねん!ただなんとなく来たんや。光の顔が見たくなっただけや」

「うわ、なんやそれ。頭おかしくなったんとちゃう?」

「あほ。俺の頭は正常や!ったく…」



謙也は屋上の扉を閉めると、光のとこまで歩き、隣りに腰を降ろした。



「俺もここで昼飯にする」

「なんで?」

「光が一人で寂しそうやからや」

「それ、謙也先輩の勝手な思い込みやないっスか?」

「ええから!光は気にせんでええねん!先輩の後輩に対する気配りや」

「そんな気配りいらんわ」











なんで急に光に会いたくなったのかわからない。



けど、会ってみてなんだか安心した自分がいた。




なんやろな、俺…。









「そろそろ昼休み終わりやないスか?」

「ん?あー、そうやな」



いつの間にか、昼休みはあと数分で終わる頃になっていた。



「なんや早いな、時間過ぎるの」

「あ」

「どないしたん?光」


光は何か思い出したかのように、ズボンのポケットの中を探り始めた。



「なんか探してんのか?」

「謙也先輩」

「なんや?」

「コレやりますわ」

「?」



光はポケットから出した物を、謙也に渡す。



「これ…光が付けとるやつやろ…?」



謙也が受け取った物。


それは、光がいつも耳に付けているピアスと同じものだった。



「光…ピアスなんてもろても、俺付けられんやん」

「穴開ければええっスよ」

「いや、あのな…」

「なんなら、俺が開けてやってもええですよ?」

「光…ほんまに言ってるんか…?」

「ほんまです」



いきなりこいつは何言うてるんや…。




「謙也先輩、今日誕生日やろ?それ、一応プレゼントやから」




「な…、なんで光が知っとるんや?」

「知っとったらあかんでした?」

「そないなことは…ないけど…」

「俺、たいしたもん持ってないからそういうのしかやれへんけど。ま、勘弁して下さい」

「いや、くれるだけでええって!まさか光から誕生日プレゼントもらえるとは思ってなかったんやし…」



期待してた訳じゃない。


けど、光は俺の誕生日を知っていて、プレゼントまでくれた。





すごく嬉しいと思う俺がいた…。






「プレゼント、ほんまは俺でも良かったんやけど」

「は…?」

「あ、でも俺の誕生日の時に、謙也先輩ってことでもええか」

「な、なに言うとるんや…?光…?」



目の前にいる光がなんだか怖くなってきた謙也。



「こういうことっスよ」


「へ?…って、うわ!な、なにすんや光っ!」



突然、謙也は光に押し倒された。



「ま、楽しみはとっておきますわ」

「た、楽しみって…」

「俺の誕生日楽しみにしててええですからね。謙也先輩」

「どーゆう意味やねん!?それ!!」



「謙也先輩」



光は謙也を楽しそうに見ながら―




「Happy Birthday」






と、告げた。









END

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