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小説
#8






《これが、お前の言う正義なのか、五飛!》

「俺は、犠牲の上に成り立つ平和と言う名の正義が、本当に正しいかどうか確かめたいだけだ!」


 ビームサーベルを抜き放ち、迫りくる【ウイングガンダムゼロ】に対し、五飛も【アルトロンガンダム】のツインビームトライデントを構えて迎え撃った。


「そのためなら俺は、悪にもなる!」


 かつてタウゼントに言われた言葉が脳裏をよぎる。それすらも引き裂かんとするかの如く、上段から強く振るわれたツインビームトライデント。【ウイングガンダムゼロ】はそれを既の所で受け止め、なんとか押し返す。


「人類は変わらなかった……! 斃すべき敵を斃しても、地球は何も変わらなかったんだ!」


 何故自分がこうも正義に拘るのか。傍から見れば不思議で仕方がないだろう。しかし五飛の中にはしっかりとその正義への気持ちが根付いている。故に、1度迷ってしまうとそれ以外の見方を知らぬために己を悪に染めてまで世界を見直すしかなかったのだ。


……俺が悪となってまで正義を見定めようとする姿勢を、お前は嗤うだろうな)


 かつての五飛は、そこまで正義に心酔などしていなかった。寧ろ普遍的な正義など存在しないと否定的だったのだ。そんな彼を変えてくれたのは、伴侶として生きるはずだった妹蘭だ。竜妹蘭(ロン・メイラン)が正義を貫かんとする姿勢を、結局は最後まで見直してやることはできなかった。

 たったの14歳で亡くなった彼女こそ、五飛に正義を見出させ、【アルトロンガンダム】をと呼ばせることになった存在だ。自らをと呼ぶ妹蘭が守ってくれたからこそ、機体名で呼ばないでいる。


《お前が戦えば戦うほど、平和の犠牲が無駄になっていく……もう分かっているはずだ!》


 無我夢中で振り続けたツインビームトライデントをはじき返し、【ウイングガンダムゼロ】がその巨大な翼を羽ばたかせて後退しながらバルカンを放ってきた。相手のパイロットの声が耳を劈く度に認めてしまいそうになるが、まだ自分は自分を折るわけにはいかない。


《俺たちの戦いは、もう終わっている!》

「だから……戦いのためだけに生きた兵士は、切り捨てるのか!?」


 激昂する五飛の気持ちに呼応するように、ツインビームトライデントの刃が光を増していく。

 【ウイングガンダムゼロ】へと食らいつこうとしたドラゴンハングを戻し、【アルトロンガンダム】が肉薄する。ツインビームトライデントが唸りを上げて振り下ろされるも、それはまたも受け止められてしまった。


(ならば……!)


 鍔迫り合いを続けたまま、地球へ向けて一気にバーニアを噴かせる。元々地球に近い位置で接触したためか、すぐに大気圏へと突入する形になった。


「俺は平気として扱われてきた全ての人間たちの代弁者だ! 俺は貴様を含む兵士、全てのために戦っている!」

《…五飛!》

「俺と貴様は同類だ! 戦場でしか、己の存在意義を見出すことができんのだ!」


 そうだ。彼と自分は、戦っている時こそ充実している──はず、なのに。


(なのに、何故……!)


 どうにも、苦しくて仕方がない。何か大事なことを忘れているような、そんな気がする。


《五飛、トレーズはもういない! トレーズはお前が斃したんだ!》


 かつてタウゼントに言われたのと同じ言の葉が響く。しかし、それだけで己を律することができるほど、今の五飛には冷静さが足りていなかった。


「違う! 俺は今でも、奴と戦っている!」


 2人の機体が真っ赤に燃え上がり、それすらも容易く呑み込むように地球へと吸い寄せられていった。





◆◇◆◇◆





《ゼクス、ブリュッセル大統領府はシェルターシールドを展開しています。強行突破は無理です!》

「無理は承知している。だが、これぐらいのことをしなければ、誰も立ち上がろうとしない!」


 ノインの警戒の声に返しながら、ゼクスは【トールギスV】を駆って、迫る【サーペント】の一機を下から抱え上げるようにして仰向けに仰け反らせる。そのまま空中から後ろへ下がりながらヒートロッドを一閃し、ガトリングガンを引き裂いた。


《…誰を、待っているのですか?》


 答えを知りながらも問うてきたのは、きっと単なる答え合わせだろう。ゼクスは口の端に小さな笑みを浮かべながら答えた。


「平和を望む者たちだ。このままマリーメイアの独裁を赦すようなら、いずれ第二のミリアルド・ピースクラフトを生み出すことになるだろう!」


 ビームサーベルが【サーペント】のメインカメラを潰し、【トールギスV】はさらに中心部にある大統領府へと急ぐ。そんな【トールギスV】を行かせまいと、鈍くなった機体を懸命に動かそうとする【サーペント】だったが、ノインの駆る【トーラス】がビーム砲を放って武器を破壊し、たちまち無力化した。


「…ノイン。こんな私に付き合わなくてもいいんだぞ」

《いいえ、ゼクス。私は1年前、言ったはずです。あなたの傍から、離れないと……。
 ずっと待っていたんです……もう、待つのは御免です》

「……分かった」


 心強い言葉に背中を押されるようにして、ゼクスは急いだ。





◆◇◆◇◆





《皆さん、準備はいいですか?》

《おう、いつでもいいぜ》

「こちらも準備完了だ」


 カトルの問いかけに、デュオとタウゼントがすぐに返す。

 デュオとトロワに連れ添われてカトルと合流したタウゼントは、彼らの厚意で整備と補給を行うことができた。まだロールアウトしたばかりと言うこともあって、いきなり無理をさせ過ぎてしまったのは考え物だと、トロワに苦言されてしまったが。


《やはりオペレーション・メテオはこう在るべきだ》


 微笑するトロワの後ろにつくと、マントで全身を隠した【ガンダムサンドロックカスタム】が、両腕を振り上げてヒートショーテールでハッチをX字に切り裂いた。

 そして【ガンダムサンドロックカスタム】を先頭に、【ガンダムデスサイズヘル】、【ガンダムヘビーアームズカスタム】、そして【ガンダムサダルメリク】と続いて地球へと向かって一気に降下していく。


(ゼクスの話だと、既に【サーペント】の部隊と交戦中らしいな。
 敵部隊は相当数だし、パイロットを1人も殺めずに済ませるのは骨が折れるな)


 だが、しり込みする気は毛頭ない。次第に地球へと近づいていくにつれて、機体が赤く染まっていく。


(さて……うまく戦わないとな)


 誰も殺めずに、この戦いを終わらせなくてはならない。しかし、不安はなかった。この【ガンダムサダルメリク】に搭乗していると言う事実が自信に繋がっているから。





◆◇◆◇◆





 次第に赤色からいつもの色彩を宿していく視界。五飛はスイッチを押してパラシュートを展開し、すぐさまツインビームトライデントを構えて【ウイングガンダムゼロ】へと追走した。


「俺はリリーナ・ピースクラフトを認めない。
 兵器を捨て、兵士を封印すれば、それが平和だと言う考え方は間違っている!」

《だからマリーメイアの独裁を赦すのか!》

「それが戦う者の魂の拠り所になる!」


 ツインビームトライデントの一閃が、遂に【ウイングガンダムゼロ】を捉えた。胸部を浅く薙いだだけだが、それは確実なダメージとなったに違いない。


(そうだ。俺だけではない。マリーメイアに従っている全ての兵士には今、トレーズがいないからこそ、マリーメイアと言う拠り所が必要なんだ!)

《…今はそれで良いかも知れない。だがマリーメイアは歴史を繰り返すだけだ。悲しく惨めな戦争の歴史をな!
 ここで流れを食い止めなければまた俺達のような兵士が必要となってくる。そうなれば、悲劇と言う名の戦争の歴史がいつまでも続く……!》


 歴史を繰り返すだけ──その言葉に、かつて自身の出身であったコロニーが戦火の拡大によって失われたことを思い出す。


《教えてくれ、五飛……。俺達は後何人殺せば良い……!
 ……俺は後何回、あの子とあの子犬を殺せば良いんだ》


 突如として、【ウイングガンダムゼロ】が急降下を始めた。逃げ出したわけではなく、パイロットが操縦をやめたのだと分かったが、それを追いかけることもできずにいた。


《ゼロは俺に何も言ってはくれない……教えてくれ、五飛!》


 何も答えることができず、【ウイングガンダムゼロ】が海中に没していく。


「あれがまた、繰り返されると言うのか……」


 戦火に巻き込まれた自身の故郷、L-5コロニー。最後には老師竜の手によって自爆したが、その時ほど自分の無力さを嘆いたことはない。あの悪夢が再び起こるかもしれない──五飛は【アルトロンガンダム】を地上におろし、今正に戦いが繰り広げられているブリュッセル大統領府に視線を向けた。


(俺は、俺の正義は……)


 目を閉じた五飛と同じく、【アルトロンガンダム】の瞳からも光が失せた。





◆◇◆◇◆





《先行します!》


 大気圏突入を終え、カトルが更にバーニアをふかせて地上へ降りていく。デュオとトロワは散開し、それぞれ見定めた【サーペント】へ強襲を開始した。


「俺も、後方部隊を叩く」


 カトルがゼクスとノインの援護に回ったのを見送り、デュオとトロワが左右へ移動したのを確認してから、自身は後方へ下がる。【ガンダムサダルメリク】をモビルアーマーへと変形させ、【トールギスV】の後ろから迫っていた【サーペント】に攻撃を開始した。


《なんとか、間に合いましたね。
 お二人とも流石です。これだけの相手がいながら、1人も殺さないなんて》


 ガトリングガンを連射しながら迫っていた【サーペント】のメインカメラが吹き飛ぶ。それを切り裂いた【ガンダムサンドロックカスタム】は、ヒートショーテールを構えたままマントを外し、次なる敵に備える。


《地獄への道連れは、ここにある戦争と兵器だけにしようぜ!》


 ハイパージャマーを搭載したことによって、敵に察知されずに接近していた【ガンダムデスサイズヘル】が、アクティブクロークを広げてビルの影から躍り出る。月をバックに、正しく死神と呼ぶに相応しい勇猛を見せたそれに慄いたのか、【サーペント】は何もできずに武装とメインカメラを裂かれる。


《残り250機か。1人42機の割り当てだ。これならなんとかなるだろう》


 道化師を演じる時のように素早い動きで【サーペント】を翻弄しつつ、複数の敵に狙いを定めてガトリングガンとミサイルを解き放つ。脚部を、武器を次々と破壊していく【ガンダムヘビーアームズカスタム】は、隙を見せることなく敵部隊を殲滅する。


「…ゼクス!」


 モビルアーマー形態のまま、【サーペント】へと突っ込んで次々と押し倒し、空中へ身を躍らせるとモビルスーツ形態へと姿を変えた。そしてドーバーガンを構え、メインカメラや武装を破壊し、改めて降り立った【ガンダムサダルメリク】と、【トールギスV】が背中合わせになる。


《あぁ、行くぞ!》


 ゼクスの言葉に頷き返し、タウゼントは【ガンダムサダルメリク】を、街の中心部へと走らせた。


(流石はガンダニュウム合金だけある。ちょっとやそっとじゃ、大したダメージにもならないか)


 しかし、敵の数は相当なものだ。見えているだけで250機もいるうえに、まだ潜んでいる可能性もある。被弾も最小限にしていかなければならない。

 先陣を切って突進をする【ガンダムデスサイズヘル】に続き、【ガンダムサダルメリク】も近接戦闘を繰り広げる。援護を【ガンダムヘビーアームズカスタム】に任せつつ、時折【ガンダムサンドロックカスタム】が撃ち漏らした敵を次々と伏せさせた。


《行くぜえぇ!!》


 少しずつではあるが、中心部へと接近することができてきた。しかし、それに従って敵の数も増えていく。増援に駆け付けた【サーペント】が、幾つものミサイルやガトリングガン、ビームガンを撃って接近を阻んだ。


《くっ……! ガンダムのパイロット、もういい!》

「ゼクスの言う通りだ。後は俺たちに任せて、撤退しろ」


 エネルギーとて無尽蔵ではない。徐々に枯渇していくそれを気にしていては被弾し、体勢を崩される。


《て、撤退!?
 命を奪う戦いなら、もっと早くに終わっています。でも、それじゃ僕たちが来た意味がないじゃないですか!》

「しかし!」

《まぁ気にするなよ。これでも負け続ける戦いは得意でねぇ!》


 2本あるヒートショーテールの1本が打ち砕かれ、雪原に突き刺さる。ダメージを食らい続けたのか、装甲に黒い焦げ跡が目立ってきた【ガンダムサンドロックカスタム】。それを庇うようにして、デュオが【ガンダムデスサイズヘル】のバーニアをフルスロットルでふかし、【サーペント】の部隊を奥へと押し込んでいく。


《こいつらはかつての俺たちと同じだ。
 デキムの口車に乗せられているだけだ》

「お前ら……なら、最後まで付き合ってもらう!」

《へっ! 最初からそのつもりだぜ!》


 最早エネルギーが切れる寸前なのだろう。ビームで形成された刃が小さくなっていく。それでも、デュオはビームサイズの尖端でメインカメラを潰して敵を無力化していった。

 カトルも折れたヒートショーテールを捨て、素手で【サーペント】に対抗している。敵に突っ込み、武装を奪っては射撃に優れたトロワへと譲渡した。


「…ダメだ、こいつもエネルギーが……!」


 形を保っていたビームソードが何度か点滅を繰り返したかと思うと、やがて消え失せてしまった。ガンダム自体のエネルギーもそうだが、ビームソードに備えられたバッテリーも切れてしまう。

 他のガンダムもエネルギーが尽きてしまい、それを待っていたのか【サーペント】が集結し、周りを取り囲んだ。


《どうする? 自爆すれば残りの半数は片づけけられそうだが……》

《いや、止めておけ。死ぬのは俺たちだけで充分なはずだ》


 デュオも本心ではないだろう。しかし、その方法すら躊躇わないであろう覚悟を籠めていた。それを感じ取ったからこそ、トロワは制したのだろう。

 動かなくなったガンダムらに対しても警戒を怠らないようで、【サーペント】は武器を構えて次の指示を待っている。

 冷や汗が頬を伝った──と、その時。


《な、何だ!?》


 デュオの驚きの声に続き、【ガンダムサダルメリク】のコックピットに警戒音が響き渡った。


《上空!?》

《新手か?》

「あ、あれは……!」


 カトルとトロワも、機影が確認された上空に視線を移す。そこにいたのは───


「ウイングゼロ!」


 ───【ウイングガンダムゼロ】が、その特徴的な翼と2挺のバスターライフルを合体させて空中に佇んでいた。

 しかしただ静止しているだけかと思いきや、突如として眩い閃光が走る。合体させてあるバスターライフルから放たれた強烈な砲撃が、ブリュッセル大統領府が展開しているシェルターシールドに弾かれた。


「何を……!」

《まさか、シェルターシールドを壊そうと言うのか!》

「そんなことが……」

《あいつならやりかねないぜ! なんたって、ガンダムを渡すまいとして自爆するような奴だからな》


 こんな状況でもありながら、デュオは軽口を叩くように言った。そうこうしている内に、2射目が放たれる。まったくぶれない射軸は、あっという間にシェルターシールドを半壊させていく。


《あ、ウイングゼロが!》


 そして3射目が放たれようとした瞬間、それまで呆然としていた【サーペント】が殺到し、少しでも射線を逸らそうと試みる。しかしかなり高い位置にいる【ウイングガンダムゼロ】には攻撃が届かず、届いたとしても大したダメージにはならないようだ。

 やがて次なる砲撃が放たれた。だが、何度も砲撃を繰り返し続けてしまったからなのか、耐えきれなくなったバスターライフルが壊れ、その爆発に巻き込まれるようにして【ウイングガンダムゼロ】にも火の手があがる。


《ヒイロ!》


 全員の言葉が重なった。それでもまだ、【サーペント】の武器がそれぞれに照準されていて動けない。


「ん? これは……!」


 だが、新たな動きがすぐに起きた。


《五飛! あの野郎、今まで何やってたんだ!》


 デュオが毒づくのも無理はない。しかし【アルトロンガンダム】の前に何人もの人だかりができているのを見て、その怒りもあっという間に失せてしまった。口々に戦争への不満を叫んでいる。


《また自爆装置が無駄になったな》


 溜め息交じりに呟いたトロワのそれに、激しく同意するばかりだ。大した面識はないとは言え、彼らに自爆などされてはたまったものではない。


「…トレーズ、終わったぜ」


 コックピットのハッチを開け、戦火を物語る黒焦げた大地から寒空へ視線を移す。夜空には何事もなかったかのように、ただただ満天の星がちりばめられていた。










 マリーメイア軍の決起から既に1週間が経過していた。


「…暇、だな」


 あの戦いの後、デュオたちガンダムのパイロットは、それぞれの愛機を自らの手で永遠の眠りにつかせた。五飛も、己が決めていた場所で【アルトロンガンダム】を眠らせたと聞く。情報元はプリベンターのサリィなので間違いないだろう。彼女はそのまま五飛をっプリベンターにスカウトしたとか。

 ゼクスとノインは、ある程度落ち着いたところで早々に姿を消してしまったらしい。しかし、タウゼントは彼らが旅立つ直前に会っていたので行先を知っている。曰く、「リリーナが無理するから」とのこと。火星へのテラ・フォーミング事業を先行するらしい。

 そしてカトル、デュオ、トロワの3人は、それぞれの帰るべき場所へ戻って行った。トロワは再びサーカス団で道化師の役を懸命に勤め、デュオはヒルデと共にジャンク屋を営みながら貯金し、やがては孤児院を開くのだそうだ。カトルは、新天地を求める者たちのために建設業に従事しているらしい。もともと大規模な事業を行ってきたこともあるので、それほど苦ではないとか。

 そんな中、タウゼントは何もせずにいた。最初はマリーメイアを見守っていこうかと思ったが、それはレディに任せて放浪癖に任せて適当にぶらついている。

 暇ではあるが、戦争が起きないのなら暇にこしたことはない。そんなことをのんびりと考えながら、スクランブル交差点を渡っていると、向こうから端正な顔立ちの少年が歩いてきた。冷めた瞳と人を寄せ付けない雰囲気だが、その心の内に秘めているものは暑い気がする。


「…ヒイロ・ユイだな」

「……タウゼント・ジューゼか」


 言葉を交わすのはこれが初めてだが、互いに相手の顔には見覚えがあった。立ち止まった2人を気にすることもなく、周囲を幾つもの人が通り過ぎていく。


「マリーメイアを呪縛から解き放ってくれて、ありがとうな」


 何も言葉を交わさないでいると、ヒイロは隣を通り過ぎた。しかしタウゼントが声をかけると振り返ってくれる。


「別に。俺はただ、任務を行っただけだ」

「…そうか」


 再び踵を返したヒイロを見送り、タウゼントも歩みを進めた。


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