小説
第14話 「正義への答え」
「チーム、カタストロフィー、出撃だ。」
ヴィレイサーの凛とした声に、デュアリス達は頷き返した。
そして、ヴィレイサーを筆頭に、彼ら彼女らは飛翔した。
魔法少女リリカルなのはStrikerS─JIHAD
第14話 「正義への答え」
「スカリエッティ達はどうだい?」
ニクスの問いに、偵察に出ていたネブラが通信して伝える。
[個々に撃破していってるよ。
でも、完璧には潰せて無いみたい。]
[中々決定打を撃ち込めずにいるようだな。]
別の場所で見ているゲイルも同意見のようだ。
「共倒れになれば、それが一番なんだけどね。」
[介入するのか?]
期待に胸を膨らませたミラージュが聞いてきたが、ニクスは首を横に振っただけだった。
[騎士ゼストが地上本部に到着したよ。]
ヴァンが見せた映像には、融合騎に後を任せているゼストの姿があった。
[どうする? 例のNo,2、ドゥーエだっけ? アレから魔力をもらっておく?]
ニクスは少し考えるが、やがてある事に気付く。
「その前に彼の相手を頼むよ」
[彼?]
[誰だよ?]
ミラージュ達の詮索に答えようとした時、ゲイルが割り込んだ。
[ニクス、奴らが来たぞ。]。
「やはり生きていたか……ヴィレイサー・セウリオン………。
ゲイル、ヴァン、ネブラ、ミラージュ、レーゲン。
君らは1対1で彼らと戦ってくれ。 間違っても“殺さないでよ?”」
[[[[[了解。]]]]]
5人と通信を終え、ヘイルに連絡を取る。
「そっちはどうだい、ヘイル?」
[順調だ。
最深部には早めに着きそうだぜ。]
「そうか。」
ヘイルの報告に、ニクスは笑った。
「僕も今からそこに向かうよ。
そろそろ動かないと、後々大変だからね。」
純白のバリアジャケットを展開し、彼はヘイルの元へと向かった。
◆◇◆◇◆
「もうすぐ戦闘空域だ。」
ヴィレイサーの言った通り、戦闘の光が視認できた。
「なんだ?
この感じは………。」
戦場に近付くにつれて、デュアリスは何かを感じていた。
しかもそれは、徐々に明確に感じ取る事ができた。
周囲を見回した時、空色の何かが急速に迫ってきた。
「思い出した! この感じは………。
だとすれば、アイツも!」
編隊を崩し、デュアリスは左からくる何者かと対峙した。
「なるほど。
貴様が“セイバーの末裔”か。」
仮面で素顔を覆った男、ゲイルだった。
「そういうあんたからも、同じ感じがするけど?」
「ほう………。
気配の察し方は見事だな。
だが、それだけでは俺には勝てんぞ!」
素早く、2対の剣、クレイモアを引き抜き、構える。
対するデュアリスは、右手に短剣を逆手持ちに、左手に長剣を順手で持った。
「俺と剣で戦うか、セイバーの末裔よ。」
相当の自信があるのか、ゲイルは不敵な笑みを浮かべた。
「行くぞ!」
そう告げたかと思うと、ゲイルは既にデュアリスの眼前にいた。
(速っ!?)
それを既の所で受け止め、デュアリスは舌打ちした。
◆◇◆◇◆
「ヴィレイサー、デュアリスが………。」
戦いに逸早く気付いたリュウビが声を上げるが、そこに敵の増援の砲撃が迫る。
「散開!」
即断即決し、指示を出すと、3人はそれに従った。
「デュアリス………。」
仲間の所へ駆け出すべく焦っていたリュウビは、
側面からくる一閃に反応するのが遅れた。
「キャアッ!」
風圧も加えられた刃に吹き飛ばされ、リュウビはビルに体を強く打ち付けた。
だが幸いな事に、イーブンが緩衝材を働かせてくれた為、大事には至らなかった。
「無事のようね。」
空から聞こえた女性の声に、そちらを見やる。
そこには、微笑するヴァンがいた。
(他の皆は………。)
視線を僅かに逸らし、周囲を探る。
すると、1箇所だけ爆発が起こった地点があった。
(あそこは多分………エクシーガがいる。
だとすると、ヴィレイサーとヴァンガードはあそこら辺かな。)
先程の砲撃を散開して回避した位置。
そして、散開し終えた箇所から、攻撃を喰らった場合の地点をすぐさま割り出す。
(結構離されてる可能性が高いなぁ………。
合流するなら、やっぱり………。)
鋭い視線を向け、キッとヴァンを仰ぎ見る。
(彼女を突破するしか無い。)
決断し、刃が少し反ったサーベルを出現させる。
「行くわよ、イーブン。」
[Sure.]
愛機が応えた刹那、リュウビはヴァンに肉薄した。
◆◇◆◇◆
ガキィン!
ブォン!
刃がぶつかり合ったり、空を切る音が、2人だけの戦場に響く。
「中々やるなぁ、女。」
ライフルと実弾銃を交互にエクシーガに放ちながら、レーゲンは関心したように呟く。
エクシーガは、レーゲンが放つ弾丸を悉くかわし、
自分の間合いに捕捉した瞬間に翡翠色の長剣を振り下ろす。
だが、レーゲンは紙一重でそれを避け、バズーカを構える。
「アルバレスト!」
[Homing Dash.]
弾が当たると確信したが、エクシーガには着弾しなかった。
何故かエクシーガをすり抜けたのだ。
「残像だと!?」
レーゲンは驚いていたが、我に返り、抜刀して背後を向く。
「ハアアアアァァァァァァ!!!」
目の前には既に、切っ先で貫こうとしていたエクシーガが迫っていた。
しかし、彼女の刃はレーゲンの剣に止められる。
「クッ………。」
「出来る!」
相手の力量を再び褒め、レーゲンはエクシーガを押し返す。
2人はしばし対峙し、そして、どちらとも無く肉薄し、刃をぶつけた。
◆◇◆◇◆
「よもや生きていようとはな、堕天使!」
ミラージュがケルベロスを差し向け、自身もヴィレイサーの死角から奇襲をしかける。
その2つの攻撃を、高度を上げてかわしながらも、
ヴィレイサーは敵を双眸から離さない。
「堕天使だからな。
堕ちたらまた、舞い戻るさ。
地獄の底からでもな!」
冗談めいた口調で言い、今度は彼からしかける。
「IS、シャドー・ファントム!」
ヴィレイサー自身がミラージュに接近する間に、
ビルの影が人間と、アローモードを象る。
[Shadow Edge.]。
矢の先端に影が集まり、ケルベロスに放たれる。
「フン!
影ごときにケルベロスを抑えられるものか!」
ミラージュの言葉に応えるように、ケルベロスは一吠えし、跳躍する。
シャドーが放った技をかわし、そのままシャドーに食らい付く。
だが、シャドーはそれを避けなかった。
「捕った………。」
ヴィレイサーはそれを待っていたのか、呟き、指を鳴らす。
すると、シャドーはケルベロスを呑み込むほど巨大になり、逆にケルベロスを喰らった。
「ケルベロス!?」
ミラージュがそれに気付いた時には、影の球体ができていた。
「悪いが、番犬には消えてもらう。」
言うが早いか、球体から影の針が生えた。
そしてそれが、一斉に中心に向かった。
内部にいるケルベロスを、無数の針で串刺しにしたのだ。
「貴様………。」
ケルベロスを失ったミラージュは、苦々しくヴィレイサーを睨む。
「覚悟っ!」
太刀を抜刀から一閃する動作まで行うが、その一閃は、ヴィレイサーを捉えられ無かった。
(クッ………彼奴はかなり厄介になったな………。
ニクスが“主”を早く目覚めさせなければ、俺は、負ける………。)
ヴィレイサーの力強さを痛感し、焦りを覚える。
だが、そんなミラージュに、ニクスから念話が入る。
[ミラージュ、ヴィレイサーを例の地点まで誘導してきてくれ。
“主が目覚めるには、もう少し魔力がいるからね”]
[わかった。
だが、時間がかかる。 今の奴は、前回よりも厄介だからな。]
そこまで伝えた後、眼前にいる堕天使を見る。
「分が悪いな。
ここは退かせてもらおうか。」
一気に空へと舞い上がり、ニクスの元へと駆ける。
「逃がすか!」
ヴィレイサーは、仲間への危険を考慮し、ミラージュを追跡する。
(そうだ、それでいい。
貴様の最期の戦場に来い。)
◆◇◆◇◆
「ハアアアアアァァァァァ!!!」
「デヤアアアァァァァ!!!」
ヴァンガードの大剣を、攻防一対の盾で防ぎ、左手にある鉤爪の籠手で反撃するネブラ。
先程からそれを繰り返しているばかりだった。
しかも、戦闘の最中にも関わらず、ネブラはある箇所のチラチラ見ていた。
「そんなに地上本部が気になるのか?」
ヴァンガードの核心をつく質問に、ネブラは「まぁね」とだけ答えた。
(一体、何があるっていうんだ?)
気になったヴァンガードは、ネブラを押し返した刹那、チラリと地上本部を見た。
すると、いくつか人影が見えた。
(まだ誰か残っているのか!?)
ネブラが人質として使うのかとも思えたが、
未だにその行動を取っていない所からすると、恐らくは違うだろう。
(なら、何が目的なんだ?)
再び肉薄してくるネブラを見据え、ヴァンガードは答えを探った。
◆◇◆◇◆
一方、ネブラが気にしていた地上本部の一角では、
オーリスがレジアスに説得を試みていた。
2人の傍らには、一般の女性局員が1人だけだった。
その時、彼らがいる部屋に、轟音と揺れが響いた。
「すまないな、レジアス。」
オーリスはレジアスを庇うように立ったが、それをレジアス自身が制する。
「構わんさ。」
「ゼスト…さん………?」
未だに煙っている箇所からゆっくりと姿を現したのは、
ゼスト・グランガイツその人だった。
彼はゆっくりと、だが、威圧感のある動きで、一歩一歩レジアスに近づく。
「オーリスは、お前の副官か?」
彼女の方をチラリと見やり、座したままのレジアスに問う。
「頭がきれる分、我儘だがな。」
一瞬だけ、過去に浸るレジアスの顔を見て、ゼストも本の僅かな笑みを浮かべた。
だが、それに気付く者はおらず、ゼスト自身もすぐに自分の目的に移る。
「1つだけ聞かせろ。」
そう言って、懐から2枚の写真を放る。
それはレジアスの前に運ばれる。
「俺と俺の部下を殺させたのは、お前の命令で間違いないか?」
放られた2枚の写真の内、1枚にはゼストの部隊の面々が。
「共に語り合った正義は、今はどうなっている?」
そしてもう1枚には………。
若かりし頃の、ゼストとレジアスの姿があった。
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