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小説
第10話 「戦禍への投身」
魔法少女リリカルなのはWars
第10話 「戦禍への投身」

「どうやら、本当にレーベは宣戦布告をされたようだ。」

クロノの言葉に、全員が息を飲む。

「行こう。 レーベに。」

「なのは・・・。」

「こんな事、見過ごせないよ!」

「せやな。」

「おっし! 準備すっか。」

「うん!」


レーベに到着した彼女達を出迎えたのは、デュアリスだった。

ヴィータはセグルニア沖で、
はやてに攻撃したのを怒っており、敵意を剥き出しにしていた。


「ヒズミ代表、管理局からの遣いをお連れしました。」

許可がおり部屋に入ると、そこには厳格な男性(技術大国レーベの代表ヒズミ)と、
ミゼット提督、そしてリュウビがいた。

なのは達はそこで、ヴィレイサーと引き合わされた理由を知った。

「これからの戦いに私達が、ですか?」

「そう。 その為にはまず、ヴィレイサーの人間不信を治さないとならなくてね。」

「それで何度も我々に任務を。」

「どうやら、ヴィレイサーは君達の事を無意識の内に認めているみたいだった。」

デュアリスが全員を見回しながら言った。

「どうしてそんな事がわかるんだよ?」

「先程通信した時、アイツは「創世主軍と戦っていた」と言った。
 君達を出さなかったのは、関係が拗れるのを避ける為だ。」


「この戦禍に身を投じるかを決めるのは君達だ。」

ヒズミ代表の言葉に、なのははすぐに答える。

「戦います。」

それは、他の仲間も同様だった。


「それじゃあ、作戦を考えようか。」

部屋を出て、デュアリスとリュウビが先頭に立って、別の部屋に案内する。

「あぁ、そうだ。
 はやて、だっけ? 君に謝ろうと思っていたんだ。」

デュアリスが振り向き、はやてを見る。

「え? ウチ?」

「うん。 セグルニア沖で、君を攻撃したこと。」

「なんや、理由があるんやろ? 取り乱してた感じやったし。」

「俺には、俺を拾ってくれた母と父がいたんだ。
 2人は軍医で、いつも戦場の兵士を助けていた。 敵も味方も、分け隔て無く。
 でも、最期の戦場には、管理局の人間もいた。
 彼らは「戦闘行為を中止しろ」と言って、その場は一時的に治まった。
 だが、父と母が負傷した兵士を介抱していた時、
 停戦を呼び掛けた管理局が兵士を含めた母と父を殺したんだ。
 「呼び掛けに応じなかった」という名目でね。
 2人は、戦闘行為をしていた訳でもないっていうのに・・・。」

「う、嘘・・・。」

「いや、確かにそういう事件は少なからずある。」

クロノが冷静に答えるが、その目にはそのような管理局員に対する怒りが見て取れた。

「だから、はやての言葉に取り乱してしまって・・・。」

「あの、拾ってくれたっていうのは?」

「俺は『研究所』で生み出されたんだ。」

全員が驚愕する中、リュウビが言った。

「デュアリスだけじゃない。 私もよ。」


「なのは達は知ってるかな? プロジェクトFというのを。」

「それって、私の・・・。」

「フェイトの? どういう事?」

「それを作り出したのは、私の母さん、プレシア・テスタロッサ。
 そして私が、最初にその技術で生まれたの。」

「君が・・・。」

フェイトはバツが悪そうに俯く。

「なにも、君が落ち込む事はないよ。
 俺達が恨んでいるのは、研究者だ。

 俺は、太古の英雄、セイバーを現代に造り出す事は出来るかという名目で、
 プロジェクトFによって生み出されたんだけど、3番目の奴が一番強くて、
 それ以外のはゴミ扱いされて棄てられたんだ。

 そんな死にかけの俺を拾ってくれたのが、今は亡き、父と母だ。

 Fはプロジェクト名、セイバーは被験者全員につけられたんだ。
 だから、デュアリス以外は残りものをあわせただけ。」

「私は、私の母さん、ティエン・キリシマとしてだったんだけど、
 父様のヒズミ・キリシマ代表が助けてくれたの。

 母さんは元々体が弱くて、病気を患って長くないと知った権力者どもが、私を造ったの。
 それで、母さんのティエンの頭文字、Tを受け継いで、この名になったの。」

「そうだったんだ・・・。」

「ヴィレイサーを含めた俺達3人が、創世主軍の部隊を殲滅しているのは、
 何かの力によって生み出された奴等だからなんだ。」

「ただの興味本意だったり、下らない理由だからこそ、ソイツらを許せないの。」

「あの、ヴィレくんもプロジェクトFで生まれたの?」

「いや、あいつは違う。
 けど、俺達が勝手にそれを言う事も出来ない。
 あいつが言うのを待ってほしいんだ。」

「うん。 もちろん。」


ブリーフィングルームで早速打ち合わせをする。

「敵の勢力は恐らくガジェットが主流になるかな。」

「どうかしら。 MSデバイスや、人型が出ないとは限らないわ。」

「なのは達は絶対に機械型以外とは戦わないでくれ。
 君達に人殺しじみた事をさせる訳にはいかないから。」

「わかった。」


開戦まで、残り2時間17分


海上に浮かぶ数多くの創世主軍の船は全て、戦争の準備をしていた 。

「カラミティ、フォビドゥン、レイダーの最終チェック、完了。」

「ダガーの方はどうだ?」

「そちらも問題ありません。」

ダガーというのは、MSデバイスの戦闘データを組み込んだ機械の事だ。

無人なのだが、いかんせんコストが結構かかる為、中々大量生産に着手できない。

それでも、新型のMSが3機と、ダガー、ガジェットの軍隊で行けば、
レーベを陥落させるには充分な物量だった。

「残り45分か。」


「ヒズミ代表、配置が完了しました。」

「市民は?」

「避難完了しました。」

「創世主軍からの回答は?」

「ありません。」

(やはり、戦争回避は不可能か。)

こちらの戦力は、管理局の手伝いがあるとはいえ、あまり多くは無い。

無人の護衛機、アストレイも全て駆りだしたとしても、
相手の物量とは、かなりの開きが出る。

デュアリスは出撃するが、リュウビは指揮をとっているため、身動きがとれない。

(やはり、彼奴等(きゃつら)の本拠地を直接叩くしか・・・。
 だがそのためには、ヴィレイサーが到着しなければ。 力の差に敗れるかもしれん。)

ヒズミ代表は、戦禍に包まれるであろう自国を、モニターから見ていた。

そして、開戦までの時間は刻一刻と躊躇無く迫っていた。


「時間だ。 全軍、出撃せよ!」

創世主軍の艦隊から、次々とガジェットとダガーが排出される。

その中に一際大きな船があった。

船内では、新型のMSデバイス使用者が出撃を今か今かと心待ちにしていた。

ようやく戦争という『晴れ舞台』に出られるのだ。

落ち着いている方がおかしかった。

[カラミティ、フォビドゥン、レイダー、遊んでこい。]

「待ってたぜ!」

カラミティの少年が喜ぶ。

「いくらやってもいいんですよね。」

フォビドゥンを扱う、あどけなさのある少女も笑顔だった。

「どれだけこの日を待ち望んだ事か。」

レイダーの少女が一番楽しそうにしている。


「行くぜ。 戦争(祭り)だ!」

カラミティが船から飛び出し、それにフォビドゥンとレイダーが続く。

目的地であるレーベは既に、戦禍に包まれていた


「ガジェットに加え、新たな無人兵器との編隊か。」

デュアリスは背部にバスターシルエットを生成しながら言う。

バスターシルエットは、拡散砲と普通のライフルを左右に配したものだ。

威力、もしくは射程距離を上げる場合はそれぞれを連結する。

「なのは。 君達はガジェットと新型の無人兵器を頼む。」

[了解。]

できれば、彼女らを巻き込む事は避けたかったが、止むをえない。

(ヴィレイサー、なのは達と一緒に行動するって知ったら、怒るかもなぁ。)

デュアリスはこちらへ最速で向かって来ているであろう友人を思い出す。

なのは達と行動を開始する事に、彼は賛成するのか。 それとも・・・。


「そぅらぁーっ!」

カラミティが肩部の2対の砲身で、レーベのアストレイを悉く破壊していく。

「ハハハハ。 最高だぜ!」

無惨に消えていく敵を見て、彼は気分をよくしていた


「ハンッ! さっさと本部をぶっ壊すか。」

「シュワルベフリーゲン!」

そんな彼の動きを止めたのはヴィータだった。

「これ以上やらせねぇ!」

「あん? テメェは楽しませてくれんのか?」

カラミティは楽しみに顔を歪ませた。


「墜ちろ、墜ちろー♪」

レイダーの少女が右手に備えた2つの砲身のあるマシンガンをアストレイに発砲し、
それを次々と破壊していく。

その様を見て、レイダーは笑顔だった。

「これ以上にないくらい、楽しい〜。
 これだから戦争は止めらんないんだよね〜。
 次はどいつをやろうかな?
 ん? あの白いの、おもしろそうね。」

レイダーはなのはに目を付け、加速していく。

「っ!?」

「撃滅!」

こちらに気付くのが一足遅かったなのはに、
左手に持っている鉄球を投げようとするが、
その直前に、フェイトが「ソニックムーブ」を加えたスピードで、
レイダーを体当たりで吹き飛ばす。

「うあぁぁーー!?」

レイダーは姿勢を立て直す前に、海中へと叩きつけられた。

だが、そこから新たな敵が姿を現した。

フォビドゥンだ。


「フフッ・・・。」

フォビドゥンは近くにいたレーベの艦を大きく湾曲した鎌で真っ二つに斬り裂いた。

「何て事を!」

「ん?」

フェイトが真っ先に飛んでいくが、フォビドゥンは距離を取るように、
更に上空へと飛翔した。


「てぇめぇー・・・。」

海中から吹き飛ばされたレイダーが顔を出し、フェイトを追う。

その速さはかなりのもので、2人の距離はあっというまに近づきつつあった。

「抹殺!」

鉄球をフェイト目掛けて思い切り飛ばすが、彼女はそれを紙一重でかわす。

「チィッ! フォビドゥン!」

「ハイハイ・・・。」

2人は連携しながらフェイトを徐々に追い詰める。


「トーデス・ブロック!」

「こんのぉっ!」

カラミティのバズーカをかわし、ヴィータは接近戦をしかけた。

相手は武装からして、砲撃型だ。 接近戦に持ち込めば、かなり有利だろう。

「アイゼン!」

[Explosion.]

「チッ。 ケーファー・ツヴァイ!」

左手にマウントされたシールドにある2つの砲身から魔力弾を打ち、牽制する。

「ラケーテン・ハンマー!」

しかし、どれも当たらず、ヴィータの重い一撃が、見事にカラミティの肩を捉えた。

だが、相手は何故か平気な顔をしていた。

「その程度じゃあ、俺の装甲は簡単には壊せねぇぜ。」

カラミティのバリアジャケットは、かなりの重装甲となっていたのだ。

「レイダーの奴は飛行速度を上げる為に通常より薄いが、
 俺は接近戦対策として、重装甲なんだよ。
 ちなみに、フォビドゥンは特殊な波長を出す装甲だったなぁ。
 まぁ、俺の装甲をブチ抜くんだったら、こんくらいはやんなきゃな!」

胸部の砲身に、魔力が徐々に収束されていく。

「喰らえぇっ! スキュラァッ!」

「ウオワッ!?」

ヴィータを目掛けて発射された砲撃は、そのまま直進していき、
護衛をしていた奥のアストレイを数多く薙ぎ倒し、破壊した。

「アッハハハハハハ。」

「ヴィータ! 下がれ! 俺が相手をする!」

高笑いしているカラミティの所へ、デュアリスが駆けつけた。

「へぇ〜? 今度はテメェか?
 まぁ、誰が来ようと構やしねぇぜ。」

「なめるなよ。」

「ハン! スキュラ!」

「させるか! オルトロス・ブラスト!」

カラミティとデュアリスの砲撃がぶつかり合う。

「やるなぁ、お前。
 もっとだ、もっと俺を楽しませろぉーっ!」

カラミティは狂喜の笑みを浮かべ、戦争を楽しんだ。


「プラズマバレット、ファイア!」

フェイトが雷を伴った弾丸を発射するが、レイダーとフォビドゥンは容易くかわす。

「ハァーッ!」

死角へと回り込んだフォビドゥンが鎌を振り切る。

「ぐぅっ。」

フェイトは間一髪でシールドを展開するが、
思いの外相手の力が強く、大きく体勢を崩してしまった。

「もらい♪」

そこへ追撃にきたレイダーが、砲撃を放つ。

「ツォーン!」

「っ!」

レイダーが放った砲撃は、完璧にフェイトを捉えた。

だが、黒い影が舞い降り、フェイトへの砲撃を妨げた。

そして、

「幻影刃!」

黒い影は、太刀を抜き放ちざまに衝撃波を放った。


「っ!?」

「あんたは・・・。」

レイダーは驚きながらもかわし、フォビドゥンは反撃した人物を静かに睨んだ。

そこにいたのは、聖なる堕天使、ヴィレイサー・セウリオンだった。


Side:スバル

ポートフォール・メモリアルガーデン

「父さんは先に行ってて。
 必要なのは私とギン姉で持ってくから。」

「おう。」

私は父さんを先に母さんの所へ行かせ、ギン姉と一緒に花などを購入した。

「ヴィレ兄は来てるかな?」

「どうかしら。 兄さんも忙しいだろうし。」

「そっかぁ・・・。」

私は肩をがっくりと落とした。

7年前、母のクイントが事件で殉職した数日後、
兄は地球へ帰ると言い、それ以来まったく会っていない。

帰ってくるのなら母の命日ぐらいなのだが。


「あれ? 父さん、その手紙は?」

墓石に到着し、先にいた父が持っている手紙に目が奪われた。

「息子からだ。」

「「えっ!?」」

「ヴィレイサーからだよ。」

「ホント!? ねぇねぇ、何て書いてあるの?」

「あぁ。
 ミッドチルダに戻って来たのに会いに行けなくてすまないって事と、
 今は、レーベで創世主軍と戦っているって事だ。」

「創世主軍と・・・。」

ギンガが不安に顔を曇らせる。

「大丈夫だよ、ギン姉! ヴィレ兄なら絶対に!」

「スバル・・・。 うん! そうね。」

「帰ってきたら、盛大に迎えてやるぞ。」

「「うん!」」

Side:スバル 了


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