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小説
第7話 「奏でられる大戦」
魔法少女リリカルなのはWars
第7話 「奏でられる大戦」

Side:創世主軍

「ラントナー師団長、戦闘準備、完了しました。」

部下の声を聞いて、創世主軍、第1師団師団長ラントナーは目を開いた。

「そうか、わかった。」

(エクシーガ様からの命でここまで準備したが、本当に堕天使はくるのか?)

エクシーガより下された命令は、
レーベで開発された無人護衛機、アストレイを試験的に稼働させる場所に出向き、
それを襲撃、その後増援が来た場合、レーベ軍を殲滅(せんめつ)せよ、との事だ。

増援はほぼ確実に来るだろうが、問題はここだ。

その増援がヴィレイサーでなければならいのだ。

(確かにこの物量なら確実にヴィレイサーとやらを墜とせるだろうな。)

今回の作戦には、どこから仕入れたのか、ガジェットまで用意してある。

ただ、自身の直属の部下はMSデバイスの微調整中で、この戦闘には参加できない。

(さて、さっさと終わらせるか。)

「よし、オペレーション・ダイダロス、開始せよ!」

ラントナーの言葉に、部下が復唱し、作戦が開始された。

Side:創世主軍 了


「レーベの試験艦隊が!?」

デュアリスが驚きの声を上げる。

「うん、しかもかなりの物量らしいわ。」

リュウビが沈痛な面持ちになる。

「それで? 三提督とヒズミ代表はなんて言ってきているんだ?」

ヴィレイサーが聞いてくる。

「三提督はこれを任務として出撃してほしいって。
 でも、お父様からは何も言われていないの。」

リュウビの言葉に、デュアリスが頷く。

「そうか。 ならいつも通り俺が出撃するよ。」

ヴィレイサーはそう言ったが、2人は首を振った。

「さすがに、今回は1人じゃキツイよ。」

「えぇ、だから私たちも出撃するわ。」

「・・・。 わかった。」

ヴィレイサーは静かに了承した。

「そうだ。
 ヴィレイサー、さっきも言ったように今回は相手の物量がかなりのものだから、
 これをエターナルの対として持って行って。」

そう言ってリュウビはヴィレイサーに紺碧の刀身をした剣を渡した。

「これは?」

「私が創った、非人格のデバイス剣、名前は『インペリアル』。」

「これはまた、えらくスゴイのを創りだしたな。」

「かなり強度があるから、少しはヴィレイサーの使い方に対応できるようにしてあるわ。」

(嫌味か!)

ヴィレイサーはリュウビの武器をほんの数回使用しただけで、
それらをことごとく壊していくのである。


「2人とも、準備ができたのなら行こう。」

デュアリスの言葉に、2人が従う。

「エターナル・デイブレイク!」

「トワイライト・クレスト!」

「イーブン・クレイドル!」

3人が各々のデバイスを取り出し、告げる。

「「「セット・アップ!」」」 [[[Set Up.]]]


彼らを包み込む光が消えた後、3人はそれぞれのバリアジャケットを展開し、出撃する。

ヴィレイサーはいつもの漆黒のバリアジャケットに、腰部に2本の剣を装備している。

エターナルはいつもの逆で右側、そして左側にはリュウビから受け取ったインペリアル。


デュアリスは翠色のバリアジャケットに、背部に大きな2対の砲身がある。

その砲身はどうやら脇の下を通して前面に展開する形のもののようだ。


リュウビは、淡い桃色のバリアジャケットに、機動性を上げるためか、
背部にスラスターを装備しており、肩と腰にそれぞれ短剣を配している。

3人は同じ速度で戦場に向かう。


Side:はやて

同時刻 時空管理局 ブリーフィングルーム。

「今回の任務は、はやてと守護騎士の君たちだけだ。
 危険な任務なのに、加勢できなくてすまないな。
 気を引き締めてくれ。」

クロノの言葉に、皆が頷く。

「「「「「「了解。」」」」」」


「まさか、ばあちゃんたち(三提督)からご指名を受けるなんてな。」

ブリーフィングルームを出て、開口一番ヴィータが言う。

「そやな。 ほんなら、急いで現場に急行しよか。
 レーベと創世主軍が戦っとる場所・・・セグルニア沖に行くで。」

はやての言葉に、ヴィータ、シグナム、ザフィーラ、シャマル、リィーンが頷く。

Side:はやて


「アレだっ!」

ヴィレイサーの言葉に、リュウビとデュアリスがそれぞれ砲撃の準備をする。

「トワイライト! カートリッジ・ロード!」

[Load Cartridge.]

デュアリスの言葉に、トワイライトが従い、2つの砲身から薬莢(やっきょう)が飛び出す。

「喰らえーっ!」

砲身を前面に展開し、射撃する。

「オルトロス・ブラスト!」

デュアリスの砲撃は複数の敵を破壊していく。

「な、何だっ!?」

いきなりの砲撃で、創世主軍は慌てふためいた。

そこに、リュウビが追撃の魔法を放つ。

「駆けよ、猛き水流! アクアレイザー!」

水の奔流が直線に並んだ敵を次々と襲撃する。

「ディフュージョン・カートリッジ、読み込み開始。」

最後にヴィレイサーがカートリッジ・セレクトを行い、
「拡散」の名を持つカートリッジをセットする。

[Diffusion Cartridge Get Set.]

「レイディアント・ランチャー!」

砲撃を放つと、それが不規則に拡散し、創世主軍やガジェットを破壊する。

[今の3回の攻撃で約25人の創られし者と15機の破壊を確認しました。]

トワイライトが分析する。

「だいぶ減ったな。
 ヴィレイサー、俺はこのままホバリングで移動しながら敵を殲滅する。
 リュウビを任せたぞ。」

言いながらデュアリスは着水し、敵艦隊に向かう。

「了解、無茶すんなよ。」


Side:創世主軍

「本当に来たな、堕天使。
 だが今回は他に2人連れてきているのか。」

ラントナーは嘆息しながらモニターを見ていた。

「第5師団、出撃してくれ。」

[[[[了解。]]]]

別モニターに映っていたザイア、ラギ、リグル、セナの4人が出撃する。

「今度こそ消えろ。 ヴィレイサー・セウリオン。」

ラントナーは苦々しげにモニターに映っているヴィレイサーを睨んだ。

Side:創世主軍


「うん? アイツらは・・・。
 アクネリア工場でのケリつけてやる。」

ヴィレイサーはラギたちを確認した後、レーベの守護をリュウビに任せ、向かった。


「ラギ、右から回り込め!」

「おう!」

ザイアとラギの2人で、ヴィレイサーを相手にする。

「「行けっ! サイコミュ。」」

「そんなもんに!」

2人の砲火をエターナルの太刀型ではじき、かわし、防御する。


「そぉらぁっー!」

リグルが水中から飛び出し、両肩のシールドを展開し、
そこに配された計6つの砲を放った。

「ちぃっ!」

それに対してデュアリスはモジュールのスラスターを切り、
水中に一度身を隠してそれをかわし、再び姿を現すと、

「死ねぇ!」

リグルがランスを振り下ろす。

「させるか!」

デュアリスがジャベリンを取り出し、その柄で受け止める。


「走れ疾風、唸れ烈風、我に仇なす者を切り刻め!」

リュウビは、自身とレーベの艦隊に接近するガジェットを見据え、魔術を放つ。

「ゲイルブレード!」

放たれた風の大剣を模した術に、ガジェットが次々と破壊されていく。

「っ!?」

「堕ちろぉっー!」

突如頭上から接近したセナがサーベルを振り下ろした。

「ぐっ!」

「受け止めた!?」

既の所でリュウビはセナの攻撃を受け止め、押し返した。

「チィッ。」

セナは再度接近するが、リュウビが魔術で牽制する。


「いい加減堕ちろ!」

「コノォッ!」

ザイア、ラギはヴィレイサーと2対1の戦いをするが、なかなか追いつめられない。

「っ!?」

と、不意にヴィレイサーが自身からは多少距離があるが、右側にいる人物を見据えた。
そこにいたのは・・・・・・。


「創世主軍、レーベ軍、今すぐ撤退するんや!」

はやてだった。

否、彼女だけではなく、シグナムたちヴォルケンズ、リィンフォースもいた。


Side:デュアリス

「撤退だと?」

デュアリスは突如現れたはやてたちを苦々しげに見据えた。

その間にも、はやてはまだ訴えている。


「撤退したら危害は加えへん。 せやから撤退してください。」

その言葉にデュアリスが動揺を覚える。


(「撤退してくれたら危害は加えません。」 「残念ながらそのような特例はありません。」
 「父さん! 母さん!」 「彼らは我々の言葉を無視したのです。 死んで当然です。」)

いつからか、遠い記憶の片隅に追いやったはずの辛い過去が思い出される。

(管理局なんて、信用できない!)

彼はなおも訴え続けているはやてをおぞましい目で睨みつける。

「誰が・・・。」

彼は低い声で言い始めた。

「誰がそんな綺麗事を・・・
 信じるっていうんだぁっーーー!!!」

言い終えるや否や、デュアリスの背部にある砲身の上部にあるミサイルが火を噴いた。


「デュアリス!?」

それを見たヴィレイサーが驚きの声を上げる。

はやてにミサイルが届く前に、ザフィーラが間に入り、全てを防ぐ。

その瞬間、シグナムがデュアリスに肉薄し、
炎に包まれた刀身を躊躇いもなく振り下ろした。

「お前も・・・。 ふざけるなぁっーーー!!!」

が、それが当たる瞬間に、デュアリスの体の奥で何かが弾けた。

SEED-Mだ。

デュアリスは背部モジュールのスラスターを微調整し、のけぞった。

それによりシグナムの振り下ろしたレヴァンティンは空を斬った。

その上、本来なら海中に倒れ込むはずのデュアリスは、微妙なバランスを保ちながら、
海上に寝そべるような姿勢で滑空する。

意外な形で攻撃をかわされたシグナムも、驚きながらも突入の姿勢のまま体を流す。

と、その刹那デュアリスがそのままの姿勢でジャベリンで攻撃を仕掛けてきた。

が、シグナムの方が先に反応し、離脱する。

デュアリスのジャベリンが虚空を薙ぎ払う。

(くっ! 逃したか。)

彼は苦々しげにはやてたちを睨みつけた。

Side:デュアリス 了


(もう少し反応が遅れていたら・・・。)

離脱したシグナムは眼下にいるデュアリスを見て、背筋がゾッとした。

だが、休む間もなくヴィレイサーがシグナムに躍りかかる。

「っ!? ヴィレイサーか。」

「貴様は?」

ヴィレイサーの問いかけに、刃を交えながらシグナムは答える。

「烈火の将、シグナム。」

ヴィレイサーの剣戟を弾く。

「シグナムか・・・。
 問おう、何故こんな事を。 俺たちには関わるな言ったはずだ!」

確かにヴィレイサーはかつてエテレニア荒原でシグナムたちにそう言った。

「・・・。」

シグナムはその質問に答える事ができなかった。


Side:リュウビ

「水禍天狼迅(すいかてんろうじん)!」

リュウビが短剣をセナに振るい、
それが彼女の人間で言うところの心臓部に当たり、セナは消えさった。

その間にレーベ艦隊に接近していたガジェットが火を噴いた。

「守って! クラールヴィント!」

が、それらの攻撃は届く前に、緑色の壁によって妨げられた。

シャマルだ。

それを見ていたリュウビは、何を思ったのかシャマルに攻撃を仕掛けた。

「な、何を!?」

「あなたには悪いけど、創世主軍に目をつけられては困るの。 だからっ!」

(例え恨まれようとも、
 『今』彼女たちをこの戦いに巻き込むわけにはいかない・・・。)

リュウビは沈痛な面持ちで短剣を振るった。

Side:リュウビ 了


一方、ヴィレイサーとシグナムは凄まじい速さで剣戟を繰り出していく。

が、そこにラギがライフルでヴィレイサーを的確に狙ってきた。

「もらったぜぇ、テメェラ。」

しかし、ヴィレイサーはそれをなんなくかわし、ラギの後ろにピタリとつけ、
彼がこちらを向いた瞬間、

「蒼天悠牙斬(そうてんゆうがざん)!」

たった1振りしかしなかった。

否、ザイアにはそう見えた。

だが、ラギは両腕を失い、胸部を真一文字に深く斬られた。

「貴様っ!」

ザイアが激情に身を任せ、ヴィレイサーに肉薄するが、
いつの間にか額にスティレットが刺さっていた。

ラギとザイアは消えていった。


「っ! ヴィレイサー・・・。」

シグナムはそれをただ茫然と見ているだけしかできなかった。

ヴィレイサーはシグナムと対峙していたが、
ヴィータがデュアリスに接近しているのを捉え、
そちらに向かって、一気に加速し、ヴィータを蹴り飛ばす。

「うあぁっ!?」

いきなりの攻撃に、ヴィータは反応できなかった。


「くっ・・・。 SEEDの限界時間か。」

デュアリスは締め付けられる胸を押さえる。

と、その時海中からリグルが身を躍らせる。

「死ねぇっー!」

6門の砲身をデュアリスに浴びせるが、
デュアリスは全身を爆発的に反応させ、背部のシルエットを身代わりにする。

「シルエット、パージ(分離)!」

[Purge.]

切り離したシルエットの爆発で起こる爆風に身を任せ、
勢いそのまま、ジャベリンを思い切り敵に投げる。

「何っ!?」

咄嗟の事にリグルは反応できず、
ジャベリンが突き刺さり、そのまま消え去った。


それを確認したヴィレイサーは、リュウビに指示を出す。

「リュウビ! デュアリスを撤退させろ。」

「ど、どうして?」

リュウビはいきなりの指示に困惑する。

「今のデュアリスは精神が不安定だ。
 このまま戦闘を続けるのは危険すぎる。」

「了解。」

リュウビが頷き、デュアリスに指示する。

撤退を了承したデュアリスの足元に転送用の魔法陣が出現する。

「逃がすか!」

それを見たヴィータがグラーフアイゼンを思い切りぶつけようとするが、

「スプレッド!」

リュウビが魔術を使い、それを阻止する。

「こんのぉ・・・。 っ!?」

ヴィータがひるんだ隙に、ヴィレイサーが重力付与を行った刃で彼女をたたきつけた。

「ヴィータ!」

はやての声が海上に響いた。


Side:創世主軍

「頃あいだな。」

ラントナーの言葉に、クルーがこちらを振り返る。

「撤退しますか?」

「あぁ、これ以上は危険だ。 艦を1隻囮に使って、我々は撤退する。 急げ!」

ラントナーが的確な指示を出す。

(しかし、これだけの物量を持ってしても堕とせないとはな・・・。
 改めて恐ろしいと思ったよ、ヴィレイサー・セウリオン。)

Side:創世主軍


その後リュウビはレーベ艦隊の護衛へ、ヴィレイサーは敵の殲滅を開始した。

「聖漣光迅(せいれんこうじん)!」

ヴィレイサーの剣から閃光の波が放たれ、敵を破壊していく。

と、そこにシグナムがやってきた。

「俺を捕らえるのか?」

「そうだ。」

シグナムはレヴァンティンを構えるが、ヴィレイサーは興味がなかった。

(艦隊の殲滅が最優先だな。)

そう思って身を翻し、シグナムを無視する。

当然シグナムはこちらを追ってくる。

「ヴィレイサー、何故こうも一方的に戦い、創世主軍を駆逐する?
 何故わかり合おうとしない?」

確かにシグナムの言うとおりだ。

だが、

「理由など簡単だ。 俺の大切なものが危機にさらされる。 それだけだ。
 それに、奴らだって同じだ。 わかり合おうとせず、一方的に仕掛けてくる。
 それを知っているから、俺は、俺たちは戦って守る決意をしたんだ。」

「ヴィレイサー・・・。」

彼の言葉に、シグナムが暗くなる。

「シグナム、今回のお前たちのやり方は間違っている。
 アレで創世主軍が本当に撤退すると思うか? 一歩間違えば、レーベ軍は・・・。
 なのにこの戦闘も、この犠牲も、全部俺たちのせいだと、
 そう言ってお前たちは討たれるのを見過ごすのか?
 リュウビとデュアリスが守ろうとしたものを!」

「ヴィ、ヴィレイサー・・・。」

シグナムは困惑する。

「ならば、俺はお前を討つ!」

ヴィレイサーがSEEDを発現させ、身を翻し、一気に『敵』に迫る。

「っ!」

シグナムもレヴァンティンを閃かせ、加速する。

だが、ヴィレイサーは剣と剣が交わされる前に、スティレットをシグナムに投げつける。

「ぐっ!」

それを弾いたシグナムの刃が鈍る。

そしてそのままヴィレイサーは懐に入り、
左手で抜き放ちにインペリアルでレヴァンティンを払う。

と、レヴァンティンにヒビが入り、こなごなに砕け散った。

しかしヴィレイサーはそこで動きを止めず、
複雑な軌跡を描くように2本の剣を振るう。

「クロス・ラッシュ!」

縦横に弧を描いた刃が、
シグナムの頭部を、腕部を、脚部をほとんど同時に『浅く』斬った。

それでも、ほとんどの個所をほぼ同時に斬られたシグナムは意識が飛びかけ、
そのまま海上へと落下していった。


「創世主軍は撤退したか。」

シグナムを退けたが、本来の敵には逃げられた。

「とんだ失策だな。」

ヴィレイサーは自嘲した。


「リュウビももう撤退したか。 俺も撤退するか。」

そう言って彼は転送魔法を使い、戦場から離脱した。


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あきゅろす。
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