小説 第4話 「混迷の世界へ」 魔法少女リリカルなのはWars 第4話 「混迷の世界へ」 ガジョウを倒した後、ヴィレイサーは悩んでいた。 (さて、どうやってこの状況を打破するか・・・。) ヴィレイサーは今、なのは達と対峙していた。 (まぁ、三提督からは名前を言ってもいいとは言われたが、 それだけでは解放されはしないだろうな。) と逡巡している内に、眼前にいる茶髪をツインテールにしている、 純白のバリアジャケットを着ている女の子が聞いてきた。 「あなたの名前と、所属名を答えてください。」 その質問に、ヴィレイサーは淡々と答えた。 「名はヴィレイサー・セウリオン。 所属は・・・とりあえず今は無所属だな。」 Side:フェイト (そんなに簡単に名乗るなんて。) ヴィレイサーとあっさり名乗った彼に、フェイトは警戒を強めた。 (何か裏があるのかな?) しかし、フェイトは逡巡を止め、質問を再開した。 「先ほどまで戦っていた、彼らの素性について教えて。」 その質問に、しかしヴィレイサーは首を振った。 「それはできない。 君たちをこの件に巻き込むわけには・・・ っ!」 そこまで言って、ヴィレイサーは突然自身の背後を振り返った。 そこには、左手に分厚い魔導書らしきものを持った男がいた。 (アレはいったい?) Side:フェイト 了 (チッ、まさか『創世の書』を持ってくるとはな。) 「私の部下を消したのは貴様らか?」 開口一番、男はそう聞いてきた。 「いや、俺の後ろにいるやつらはただの管理局だ。 あんたの部下3人は俺1人で倒したよ。」 言いつつ、ヴィレイサーは男の左手にある『創世の書』から、視線をはずさなかった。 「『聖なる堕天使』、貴様が。 ふむ、それでは先ほどから貴様が気にしているコレでも使うか。」 男はヴィレイサーの視線に気づき、『創世の書』を開いた。 「安心しろ。 コレは単なるレプリカだ。 本体ほどの力は出せないが、それでも巨大なモノだ。 さて、召喚術を見るのは初めてかね?」 男の前に、魔法陣が展開する。 「厄介な事になってきたな。 せめて、あの管理局のやつらは巻き込みたくはないんだが・・・。 どうするか。」 [リーダー、以前デュアリスに教わったアレを使ってみては?] 「あぁ、やっぱりそれしかないか。」 ヴィレイサーはそう言いながら魔力を高めにはいった。 男の方も、召喚のための詠唱にはいっていた。 「青ざめし永久凍土より、其の牙をもって、我に仇なす者を滅せよ! 使用者、ダルスが命ずる。 出でよ、フェンリル!」 ダルスが言い終えた瞬間、彼の前にある魔法陣から、 蒼色の毛で覆われた巨大な狼が姿を現した。 「フェンリルか。 北欧神話じゃあラグナレク(世界の終末の日)に、 魔軍とともに神々の世界を襲って、主神オーディンをひとのみにしたって話だ。」 [さして問題ありません。] 「いや、微妙に怖いんだが・・・。」 [くだらない冗談も大概にして、さっさと閉じ込めますよ。] 「(相変わらず、冗談の通じない奴だ。) 了解。 エターナル、カートリッジロード!」 [Load Cartridge.] 太刀の鍔付近から、薬莢が2つ出され、刀身が黒く染まった。 ヴィレイサーは振りかぶり、こちらに向かってくるフェンリルを見据えた。 「ケイオス・・・・・・フィールド!」 太刀を振るった瞬間、黒く染まった刀身から、 フェンリルをやすやすと飲み込む程の巨大な球体が出現した。 それは離れた所にいたダルスをも飲み込んだが、なのは達を飲み込む事はなかった。 Side:なのは 「な、何これ?」 私たちの目の前にあるのは漆黒の球体。 その中は、まったくうかがう事ができなかった。 隣にいるはやてちゃんが言う。 「どうやら、ヴィレイサーって名乗った彼の「巻き込みたくない」 っちゅうんは、ホンマの言葉やったみたいやな。」 その言葉に、シグナムさんも頷く。 「えぇ、どうやら外部からは彼が認めた者しか入れないようですね。」 「でもどーすんだよ。 これじゃあ、話がきけねぇじゃんか。」 ヴィータちゃんは怒っている。 「クロノ君なら、なにか知ってるかな?」 私の言葉に、フェイトちゃんが答えた。 「もしかしたらね。 だけど、私たちで捕らえるチャンスもあるかもしれない。 好機を待とう。」 「うん、そうだね。」 言いながら、私は黒い球体を見つめた。 Side:なのは 了 「くっ、ここはいったい・・・。」 そんなダルスの言葉に、ヴィレイサーは答えた。 「逃げられちゃあ困るからな。 一部に結界を張ったんだよ。 破るのは難しいと思うぜ。 悪いけど、ここで終わってもらうわ。」 「だ、誰が。 行けっ、フェンリル。」 ダルスの言葉に従い、フェンリルが襲い掛かる。 「やれやれ、一撃で終わらせるか。 あんまりもたないだろうし、次の任務もあるからな。」 [ですね。 では試験的に襲爪雷斬を2段階上昇させて倒しましょう。 まだ未完成ではありますが、まとめて倒すのならその方がいいでしょうし。] 「そうだな。 よし、雷電よ、俺に降りろ!」 [Raiden Charge.(ライデンチャージ)] その瞬間、ヴィレイサーの体に、稲妻が降りる。 「な、何を・・・。」 ダルスは意味がわからなかった。 [これで1段階上昇しました。 2段階目への布石も完了です。] 「了解。 うおっと。」 その会話中にフェンリルが襲い掛かってきた。 「詠唱中は無防備。 ってのは辛いよな。」 [それが魔術というものです。 では、2段階目に行きますよ。] 「あぁ。 雷雲よ、我が刃となりて此処に集え。」 ヴィレイサーは太刀を頭上に掲げた。 そして、 「サンダーブレード。」 その声と共に、再び稲妻が落ちてきた。 しかし先ほどとは違い、それはヴィレイサーの太刀に集まり、更に巨大になっていた。 「カートリッジセレクト。」 [Select Cartridge.] 「デストラクションカートリッジ、読み込み開始。」 [Destruction Cartridge Get Set.] エターナルの言葉に、ヴィレイサーは頷き、そして、 「神の雷により滅せよ!」 [Load Cartridge.] フェンリルとダルスが固まっている今こそ、まさに好機。 「雷煌・・・滅閃斬(らいこう・・・めつせんざん)!」 巨大な雷をまとった剣が、ダルスとフェンリルに迫る。 「う、うわぁぁぁーーー。」 ダルスは何の抵抗もなく、消えていった。 「ふう、さて、脱出するのはいいんだが、問題は管理局がまだ外にいることなんだよな。」 結界内部からは、外の様子が窺えるようになっているのだ。 「結界の破壊と同時に、閃光をはなつか」 [それしかないようですね。] 「よし、破壊開始!」 ヴィレイサーの声に、結界にヒビがはいっていく。 そして全体にヒビが周り、破壊とともに閃光が周辺をつつみこんだ。 「な、何!?」 いきなり結界内から閃光が溢れ出してきたために、なのはたちは対応が遅れてしまった。 「悪いが君達に捕まるわけにはいかないんでな。 それと、もう俺たちに関わるのは止めてもらおうか。 2度とあわない事を祈るよ。」 そう言って、ヴィレイサーはその場をあとにした。 Side:シグナム 「逃げられたようですね。」 わたしは、苦々しく言った。 「関わるな、とは言われたがこれからどうしますか? 主」 その隣でザフィーラが聞いた。 「とりあえず、いままでの事をクロノ君に報告しよか。 なんかわかるかもしれへんしな。」 はやてが言った。 (しかし、あのヴィレイサー、相当できるな。) 戦ってみたい、そんな想いを胸に、我々は移動した。 Side:シグナム 了 [*前へ][次へ#] |