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小説
Episode 10 守護の誓い








 夕刻のザンクト・ヒルデ魔法学院───。

 今は使われていない旧校舎の一室。以前は音楽室だったそこで、1人の女子生徒が倒れていた。彼女はどうして倒れていたのか記憶にないらしく、怪現象として噂が広まった。

 それから数ヶ月後。噂がすっかり忘れられた頃、またも例の音楽室で事件が起こった。しかも今度は1人ではなく、旧校舎の清掃に訪れた複数の生徒が同じように気を失ったらしい。


「で、その見回りですか」

「えぇ。生徒に任せるのもどうかと思うのですが、生憎と先生方も手一杯で……」


 クラス担任に呼ばれてユミナは何かと思ったが、やるのはあくまで見回りだけで良いとのことだ。寧ろ音楽室に近づくことも禁ずると言われた。


(でも困ったなぁ)


 見回りだけで構わないと言われたものの、行うのは放課後だ。しかも旧校舎は噂のせいもあって人が寄り付くことはない。


(うぅ……夕方の旧校舎なんて、いかにも“出そう”な雰囲気で嫌なのにぃ)


 そう。ユミナはお化けと言ったホラーが大の苦手なのだ。だから噂が彼女のクラスにまで到達した時、絶対に旧校舎には近づきたくないと思っていた。しかしクラス委員の仕事とあってはやるしかあるまい。ユミナは重い足取りで旧校舎に向かった。扉は見回る人のためにいつでも出入りできるよう施錠されていない。他のクラスの委員もいるのだから大丈夫だと自分に言い聞かせて、いざ校舎の中へ。窓から差し込む西陽が旧校舎の不気味さを引き立てており、今すぐにでも帰りたくなった。


「ユミナさん」

「ひゃあぁっ!?」


 その時、いきなり声をかけられたせいで思わず驚いてしまう。


「だ、大丈夫ですか?」


 冷静になっていく内に、声の主が誰なのか気が付き、安堵して振り返る。


「よかった、レイスくんか。びっくりしたぁ」


 ほっと胸を撫で下ろすユミナに、レイスは「驚かせてすみません」と苦笑いする。


「どうしてここに?」

「忘れ物をしたので教室に戻ったんです。それで、改めて帰ろうとした時にユミナさんがここに入っていくのが見えたので」

「あはは、先生に頼まれちゃったんだ」

「ですが、よくない噂を聞きますし、僕も同行しますよ」

「えっ!? だけどばれたら先生に怒られるよ」

「ユミナさんが何かに巻き込まれるよりはずっとましですから」


 さらっと言ってしまうレイスに、ユミナは赤くなった顔を見られまいと伏せる。アインハルトと恋仲になったのにこれでは、やきもきさせられてばかりだろう。


(アインハルトさんも大変だなぁ)


 そう思いはするものの、自分とて未だに彼を好いているのだから難儀しているのは同じだ。


「それじゃあ、お願いしようかな」

「分かりました」


 聞けば忘れ物を取りに戻ると決めた時、アインハルトには待たずに帰宅を促したらしい。彼女も特訓があるため、素直に従ったそうだ。


「良かった。アインハルトさんが待っていたらどうしようかと思ったよ」

「その時はメールで先に帰ってもらいますよ」

「それじゃあダメだよ! アインハルトさんは一緒に帰りたいって思って待っていてくれるんだから、それを蔑ろにするのは絶対にダメ!」

「そ、そうですね」

「ましてや、私のお手伝いを優先するなんて言ったら妬いちゃうよ」

「それは……どうでしょう?」


 アインハルトが妬かないとは言わないが、ユミナに対して嫉妬するとは思えなかった。


「じゃあ、レイスくんがアインハルトさんの立場だったら妬かないの?」

「それは……」


 想像するまでもなく、妬いてしまうだろう。レイスが結論に至ったことに気が付き、ユミナは苦笑い気味に「ほらね?」と言った。


「女の子の心は複雑かもしれないけど、それ以上に繊細なんだよ」

「気を付けます」


 果たして女心に鈍いレイスがそれを留意できるのか疑問だが、今はそう答えるしかなかった。


《マスター、そのアインハルト様から通信です》

「え……」


 一瞬だけユミナと共にいることは口にしない方がいいのではないかと思ったが、後で露呈する方が面倒だ。それになにより、彼女に隠し事はしたくなかった。


「すみません。先に行っていてもらえますか?」

「うん。でも、合流に時間かかると大変だから、なるべく早くね」

「分かりました。アズライト、繋いでください」


 ユミナを見送り、レイスは通信に応じる。休憩に入ったのか、はたまたスパーリングの順番待ちか何かだろう。


《レイスさん、忘れ物は見つかりましたか》

「えぇ、無事に。ただ、今はユミナさんが旧校舎の見回りをしていたので、それを手伝っています」

《……そうですか》


 明らかに返答するまでに間があった。妬いているのは分かるが、なんと言えばよいか考えていなかったレイスは、つい問いを投げてしまう。


「あの……やっぱり、妬いていますか?」

《え? えぇ、まぁ》


 彼女も友達であるユミナに焼き餅を焼いてしまったのが嫌なのか、戸惑っている様子だ。


「その……すみません」

《いえ。レイスさんは、優しいですから》

「……それでも、僕の気持ちはあの時から変わっていません」

《え?》

「アインハルトさんに想いを告げたあの時から、ずっと。
 僕はアインハルトさんのことが、好きです」


 言葉など、いくらでも着飾ることができる。そう思っていたのに、今はこの言葉で気持ちを伝える以外の術がない。レイスのまっすぐな言葉に、アインハルトは微笑してくれた。


《はい。私も、あの時と変わらずレイスさんのことが好きです》


 大好きな人の声が、言の葉に音をくれる。その音が耳に響くだけで、とても心地好い気持ちになれるのはとても不思議だ。それでも、今はこれで充分だった。


「では、見回りが終わったらこちらから連絡します」

《はい、気を付けて》


 アインハルトも旧校舎の噂は耳にしているようで、用心するよう言ってくれた。それに感謝しながら通信を終わらせると、途端に寂しさがやって来た。


(僕も人のことは言えませんね)


 内心苦笑いしつつ、ユミナと合流して早速見回りを開始した。





◆◇◆◇◆





「異常なし、と」


 メモ帳にせっせと記入していくユミナ。レイスも念入りに見るが、特に怪しさは感じられない。


「じゃあ、次に行こうか」

「……そうですね」


 だが、何か違和感がある。1階から順々に回り、今は2階にいるのだが、奇妙に思えてならない。それがなんなのか未だに分からずにいるため、いくらか注意した方がいいのかもしれない。そして次の教室へ向かおうとした矢先、レイスは窓から見えるもう1棟の校舎に人影を見つける。服装からして、用務員のようだ。


「ユミナさん!」

「え? ちょ、ちょっと!?」


 急に引っ張られたかと思えば、そのまま抱き寄せられた。突然のことに目を白黒させるユミナは、アインハルトへの申し訳ない気持ちを感じて離れようとする。


「レ、レイスくん、流石にこれはまずいよ」

「じっとしていてください」


 しかしレイスはユミナが離れるのを良しとせず、抱き締めたまま。


(レイスくん、筋肉ついてきたなぁ。それになんだか、いい匂い……じゃなくて!)


 もう諦めて自分の気持ちに素直になろうかと思ったが、頭を振って忘れようとする。そこでようやく、レイスの瞳が自分に向いていないことに気が付く。その視線を辿ると、先程の用務員を注視していた。どうやら彼から隠れるために抱き締められたようだ。


「用務員さんがどうかした?」

「あの人は、本当に用務員なんでしょうか?」

「え、どうして? 制服着ているよ」

「確かに制服は用務員のもののようですが、腕章がありません」

「腕章?」

「えぇ。用務員でも、校内に入る場合は腕章が必要なんです」


 つまりその腕章をしていないのは怪しいと言いたいらしい。


「旧校舎だから、とか?」

「それはあり得ません。他にも手伝いに来ていた用務員の方がいましたが、腕章をしていました。
 それになにより……僕は復学してから今まで、“あの用務員の顔を見たことがありません”」

「そういえば……最初に旧校舎巡回の説明の時、あんな人はいなかったかも」

「……ユミナさん、1度旧校舎を出ましょう。何か変です」

「何かって?」

「もう1つ気付いたのですが、他の人達はどこに行ったんでしょうか?」

「……へ?」


 言われて初めてそのことに気付くユミナ。順繰りに周っているのは何も自分達だけではない。なにより確かに、もう2人程近くで見回りを行っていたはずだ。


「ど、どういうこと!?」

「分かりません。ですから、急いでここを出ましょう」


 ユミナが頷くより早く、彼女の手を取って走り出す。幸いにしてあの用務員がいる位置は渡り廊下を通らなければこちらまで来られない。階も違うため、出入口に行くまで鉢合わせすることもない。程なくして唯一の出入口まで来た2人は扉を開けようと懸命に引く。


「な、何で?」


 しかし扉はまったくびくともしない。そもそも人目に着くように扉は開けっ放しにしていたはずだ。それが閉まっており、しかも開かないと言うことは、魔法の影響と考えた方がよさそうだ。


「他の場所を探りましょう」


 不安で仕方がないと言った顔のユミナの手を取り、今度は歩いていく。恐らくどこも結界が施された後だろう。走るだけ体力を無駄にしてしまう。


「…ま、待って!」


 手近な部屋に入ろうとした時、ユミナがレイスの手を制止させた。


「今、あっちから声が聞こえた気がするの」


 彼女が指差したのは、廊下の端にある小部屋だった。レイスも耳をそばだててみるが、特に何も聞こえてこない。急いでいる状況だが、だからこそ彼女の言葉は無視できない。本当に誰かがいれば、ユミナも少しは安堵できるはずだ。


「僕が先に行きます」


 危険な目に遭わせる訳にはいかない。逸る気持ちを抑えて、ゆっくりと窓際にある部屋の扉を開いていく。


「あれは……」

「み、みんな!」


 室内には苦しそうな表情で倒れている生徒と用務員の姿があった。彼らを取り囲むように描かれている魔法陣は恐らく強制的に魔力を搾取するものだろう。このまま際限なく搾取され続けるのは危険だ。


「魔法陣を壊しましょう」

「あれ? ここ……外に出られるかも」


 そう言って注意しながら窓へ近づく。古びた鍵を解錠すると、ぱっと表情が明るくなる。


「ここから助けを呼べるかも」

「それなら先に、誰かを呼んだ方が───」


 最後まで言う前に、レイスはすかさずユミナの前に立ってシールドを張った。何かが弾かれると、すぐさまアズライトを強弓の形態に切り替えて反撃する。


「こんな時に……!」


 攻撃してきたのは、例の用務員だった。しかしその目はどこか虚ろで、レイスのこともユミナのことも眼中にないように見える。


「ユミナさん、小型の結界を張りますから、決してそこから出ないでください」

「でも、みんなを放っておく訳には……」

「見たところ、まだ時間はあります。ユミナさんが巻き込まれたら、それこそ気が気でないので」


 強弓を握り直し、用務員へと対峙する。彼は未だにおかしな方向に目を向けており、様子がおかしい。

 レイスは最初から容赦せず、魔力矢を放つ。しかし用務員が右手に握っていた杖がシールドを展開し、攻撃を無力化するとすかさず反撃をしようと周囲に魔力弾を展開する。それを見越して、レイスは用務員の眼前まで一足先に迫っていた。少しは狙いを狂わせたはず──そう思っていたレイスに向かって放たれた魔力弾は、その考えが浅はかだと言うように的確に迫った。


「くっ」


 慌てて後退し、追尾するものだけでも叩き落とす。


(やっぱり……あの用務員、意識が飛んでいるみたいですね)


 デバイスがどれだけ有能でも、主が人間であれば多少なりとも意思の疎通にタイムラグが生じてしまう。今の流れは、それをまったく感じさせないものだった。


(もしかしたら、イザヤと共同で造った薬がまだ残っている可能性がありますね)


 自分の祖父が薬を大量に摂取して意識が飛んだとティアナから聞かされたが、今回もそれが要因かもしれない。


(僕だけで気絶にもっていけるかどうか……)


 ちらりと腕時計で時間を確認する。用務員と相対してから、既に15分が経過していた。ユミナを守りつつ戦っていることもあり、考えていたより時間が経っている。


《Load cartridge.》

「百花!」


 今は自分でやるしかないと判断するや否や、大量の魔力矢を展開する。それを大挙させて動きを制限しつつ、一部の魔力矢は外へ向かわせようとする。


「あっ……!」


 ユミナもレイスが何をしようとしていたのか気が付いたようだが、外へ向かわせた矢は悉くが弾かれていく。


(しまった! もう結界を施されてしまうなんて……)


 矢を外部に出すことで異変を察知してもらえないか考えたのだが、そう簡単に事は運ばなかった。


「レイスくん!」


 ユミナの声に我に返り、既の所で応戦する。このまま時間が経っていけば、他の生徒と用務員が危険だ。しかし短期で決着をつけるにはこの場は狭すぎる。威力の高い攻撃で相手を沈黙、或いはデバイスを破壊しなくてはずっと戦わざるを得なくなる。かと言って大技を出せばユミナ達を巻き込んでしまう。


(武術で倒す以外にないようで……)


 膂力はないが、連撃に持ち込めればチャンスはある。アズライトを強弓からナイフの形態に変えて肉薄する。


「四式・瞬光」


 まずは強く突いて相手を少しでもユミナ達から遠ざける。


「龍閃!」


 立て続けに攻撃を放つことでバランスを崩させると、そこから一気に畳み掛ける。


「フリューゲル・ハウンド!」


 とんぼ返りしながら顎を蹴り上げ、着地と同時に前へ踏み込んで腹部を蹴り込む。そこからさらに回し蹴りを見舞うと、用務員の身体は壁に迫っていた。もう少しだ。


「シュペーア・ファウスト!」


 正拳を叩き込んで壁に叩きつける。そのまま倒れ込もうとする相手の懐に飛び込み、強く踏み込む。


「覇王……断空拳!」


 流れるような動作に一切の容赦も躊躇もない。強いて言えば、こんな野蛮なことに教えてもらった技を使いたくはなかったと言う後悔だけだった。 2度も壁に叩きつけられた用務員の身体は流石に限界のようで、倒れ込んでしまう。あとはデバイスを破壊すれば、結界が解除されるはずだ。だが───


「え?」


 ───レイスの予想に反して、用務員が立ち上がった。ついさっきまで倒れ込んでいたはずなのに、こんなにも早く立ち上がるのはおかしな話だ。


(ネフィリムフィストで外部から操作されている……?)


 杖で魔力弾を作りつつ、用務員自身も攻撃を仕掛けてくる。荒々しく杖を振り回し、魔力弾を使ってレイスを翻弄する。


(くっ……外部からの操作となると、また沈黙させたとしてもすぐ立ち上がられてしまう)


 操作が外部から行われているとなれば、その魔導師が近くにいるはずだ。しかし聖王教会附属の学院敷地内でそんなことができるはずはない。


(そうなると……あのデバイス自体が、インプットされた命令に従って魔法を行使しているのかも)


 アズライトに調べてもらうと、すぐに結果が出た。果たしてレイスの想像した通り、デバイス自体がネフィリムフィストを発動させているようだ。


(デバイスを破壊するしか方法はなさそうですね)


 今一度、用務員へと接近する。ナイフを一閃するが、紙一重のところでかわされてしまう。


(ならば!)


 フェイントを仕掛けようと肘を曲げたまま真横から薙ごうとして、一瞬だけ制動させて切っ先で突こうと試みる。しかしそれすらもかわされ、逆に真上から用務員がデバイスを振り下ろそうとしてきた。


「くっ!」


 慌てて受け止めるが、少しずつ押され始める。


(ここからなら……!)


 ちらりと相手の足を一瞥し、払って体勢を崩すべく自分の足を踏み出す。それすらもデバイスは読んだのか、逆にレイスが足払いされてしまう。


「なっ!?」


 ネフィリムフィストによってこうも容易く、しかもタイミングよく行えるはずがない。恐らくデバイスのどこかにカメラがついており、外部からデバイスを介して操作している者がその映像を見ながら瞬時に動かしているのだろう。


(だとしたら、ユミナさんにも危険が……!)


 もしこの場で用務員を捕らえても、カメラで監視していた誰かがユミナを狙う場合もある。


(そんなこと、赦すものか!)


 後退すると見せかけて壁を蹴って素早く後ろに回り込む。ここで仕掛けるのもいいかもしれないが、デバイスのカメラがどこについているか分からない以上、無闇に手を出す訳にはいかない。


(幻術で翻弄します!)


 精巧な幻術を作るには時間と魔力を要するが、防御に徹すればいけるはずだ。


《Delude style.》


 ナイフと鎖付きの杭を使って周囲を走って狙いを定めさせないようつとめるが、それを続けていては攻撃範囲の広い魔法を使ってくる可能性が高い。ある程度経ったところで、杭やナイフを握って強襲する。


(あと少し……)


 幻術が仕上がるまでもう少しとなった時、その安堵から隙がうまれてしまった。接近してくる用務員に対して杭を射出するが、簡単にかわされてしまい、逆に射出したそれを掴まれてしまう。


(しまった!?)


 掴んだ杭を投げ返されて、咄嗟に杭を解除する。その合間にさらに近づかれてしまい、首を掴まれて叩きつけられる。


「がっ……!」


 息が苦しい。暴れてみるものの、馬乗りされてしまってまったく動けなくなる。これまでか──そう思った刹那、力強い声が響いた。


「烈風一陣!」


 下から掬い上げるように放たれた一閃によって用務員が吹っ飛ばされる。しかもデバイスまで粉々に砕けてしまった。


「無事ですか、レイス?」

「た、助かりました。ありがとうございます、シスター・シャッハ」


 介入してきたのは、聖王教会のシスターたるシャッハ・ヌエラだった。どうやら結界を突破して救援にきてくれたようだ。


「貴方が助けを出してくれたので、すぐに駆けつけられました」


 ユミナのことをレイスに任せて、倒れている他の生徒と用務員の様子を確認しながら、シャッハはそう言った。


「え? いつ助けを出したの?」

「最初に攻撃を受けた時です。反撃した際に、外部に魔力矢を放ったんですよ」

「ただ、結界が施されたことによってレイスと矢の繋がりが絶たれたようで、その矢を目撃してくれた人が少なかったために、駆けつけるのが遅くなってしまった……と言うことです」

「そうだったんですか」


 どうやら最初からちゃんと助けを呼んでいたようだ。以前は自分の問題だからと助けを拒んでいたらしい。それを考えると、いい変化なのかもしれない。


「ユミナさん」


 へたり込むユミナと同じ目線になるようにしゃがみ、レイスはそっと手を取る。


「一応、精密検査を受けましょう」

「そうだね」


 彼の温もりがくれる安心感を実感しながら、ユミナは笑顔を見せた。








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