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小説
第6話 「七星とのぶつかり合い、再び」





「なのは、ヴィヴィオの様子はどうだ?」

早朝訓練を終えたフォワード陣に目を向けたまま、ヴィレイサーはなのはに訊ねる。

「とってもいい子にしてるよ。」

なのはは即座に笑顔でそう答える。

「ならいい。」

それを聞いたヴィレイサーは、眉一つ動かさずに短く答えた。

「まだ懸念してるの?」

「すまないな。
 だが、好感は持てるようだな。
 エリオからよくヴィヴィオの話を聞かされる。」

「そっか。
 あの2人、兄妹みたいだしね。」

普段から仲が良く、2人は傍から見ても兄妹にしか見えなかった。

「そうだな。
 さて、俺は任務があるからこれで。」

「ふぇ?
 誰も連れてかないの?」

「ザフィーラと俺だけでいいだろ。」

「でも、フェイトちゃんもついていくみたいだよ?」

「聞いて無いんだが………。
 第一、これから行くのは、報告した七星の任務だ。
 さすがに彼女を連れて行くのは危険だろ。」

「そうだけど、ヴィレくんなら平気でしょ?」

「過信する訳にはいかない。」

「だけど、フェイトちゃんならではの事にも気付くかもしれないよ?
 彼女の洞察力を褒めたのは、ヴィレくんだよ。」

「わかったよ。
 必ず守ってみせる。」

「うん、気を付けてね。」

「もちろんだ。」



◆◇◆◇◆



「ミラージュ、次の仕事だよ。」

スカリエッティのラボ内で、ニクスに言われて彼の方を振り返る。

「またかよ………。」

「違法施設の破壊だけど、今回は恐らくヴィレイサーが来るよ。
 楽しんでおいで。」

冷徹な笑みを浮かべるニクスと同様に、ミラージュも狂喜の笑みを浮かべる。

「了解だ。」

従う以外に自分に道は無いので、さっさと出撃する。

ヴィレイサーと戦うという楽しみに、ミラージュは心躍っていた。










魔法少女リリカルなのはStrikerS─JIHAD

第6話 「七星とのぶつかり合い、再び」










「それじゃあフェイト、準備をして来い。」

「うん。」

フェイトは急いで準備をする為に、自室に戻っていった。

「ヴィレイサー、本当に彼女を連れていくのか?」

そこへザフィーラが狼形態のまま、ヴィレイサーの背中に問いかける。

「致し方なかろう。
 彼女のたっての願いだ。

 それに、洞察力が極めて高いのは確かだからな。」

「ならばいいのだが………。」

未だに不安を拭いきれてないのか、ザフィーラは歯切れが悪かった。

「もちろん、俺も不安だ。
 だからこそ、アイツを死に物狂いで守ってみせるさ。」

「お待たせ。」

準備を終えたフェイトが2人に駆け寄る。

「よし。
 気を引き締めて行くぞ。」

「うん!」

「うむ。」



◆◇◆◇◆



「来たか。」

ミラージュは荒野地帯で違法施設を潰した所だったのか、
右手にある太刀には血痕が付着していた。

「七星の………。」

「ヴィレイサー・セウリオン。
 俺とサシで戦え。」

太刀をヴィレイサー1人に向け、戦いを申し込む。

「ザフィーラはフェイトと一緒に後方にいろ。
 決して前に出るなよ?」

「わかった。」

「気を付けてね。」

そう言って、人間形態のザフィーラとフェイトは離れる。

「ふん、意外と聞きわけがいいな。
 我が名はミラージュ! 蜃気楼の名を冠する!」

「ヴィレイサー・セウリオン!
 聖なる堕天使、本気で行くぞ!」

互いに走り出し、刃をぶつけ合う。

「エターナル!」

[Elemental Cartridge Get Set.]

「ほう。」

ミラージュはニヤリと笑い、鍔迫り合いの状態から後ろへ飛び退く。

「逃がさん!」

[Ver:Warer Cartridge.]

『水』のカートリッジを使って、太刀を振りかぶる。

「水龍崩瀑破(すいりゅうほうばくは)!」

龍のような水が、ミラージュに迫る。

「甘いな。」

笑みを浮かべたまま、ミラージュはその場からまったく動こうとはしなかった。

攻撃が当たる瞬間、少しだけミラージュの姿が揺れた。

そして、水の龍はミラージュを突き破った。

「何?
 まさか!?」

ヴィレイサーが背後を振り返った時、ミラージュが太刀を振り下ろしていた。

「グアアアァァァ!?」

振り下ろされた太刀により、左肩を深く切り裂かれた。

「まだまだ!」

痛みに顔を歪めて怯んでるヴィレイサーに、ミラージュは更に剣を振るう。

体勢を低くして、そのまま太刀を抜刀するように真一文字に一閃する。

「ガハッ!」

腹部を切り裂かれたヴィレイサーはたたらを踏むが、
ミラージュに蹴られて仰向けに倒れる。

「クゥ………。」

息が荒く、意識も朦朧としているようだった。

(マズイ………。)

エターナルもそれをすぐに察知し、オートメディスン(自動治癒)を行う。
応急処置程度なら、デバイスに機能を組み込む事で、それを可能にする。

「我が蜃気楼で作られた姿を見抜けんとはな。
 その程度か、ヴィレイサー。
 我らが七星の遺伝子を受け継ぐくせに。」

失望の眼差しを、鮮血に染まったヴィレイサーに向ける。

太刀をヴィレイサーの喉元に当てる。

それが今にも喉を貫こうとした時、金の閃光がミラージュの目の前を走った。

「あん?」

「ウオオオアアアア!!!」

更に、ザフィーラがミラージュを遠ざける為に拳を突き出す。

「チッ!」

それをかわすが、ザフィーラはすぐさま回し蹴りを入れる。

「グオッ!?」

太刀で防いだものの、弾き飛ばされる。

「ヴィレイサーを連れて撤退するぞ!」

「そうは行かんな。」

ミラージュは跳躍し、フェイトの背後に回り込んだ。

その場から逃げだそうとしたフェイトだったが、腕を掴まれ、それは叶わなかった。

「動くな。
 この娘の命が惜しく無ければ別だがな。」

「フェイト!」

ザフィーラが叫ぶが、状況は一切変わらない。

「うっく………。」

エターナルのオートメディスンで、かろうじてヴィレイサーは意識を取り戻す。

「フェイト………。」

自分の所為だと、自責の念に押し潰されそうになったが、
今は彼女を助け出すことだけに専念する。

「今の貴様では此奴を助け出せるとは思えんが………。
 七星の遺伝子を受け継いでいるのなら来い、堕天使!」

「遺伝子が無くとも助け出してみせる!」

「ヴィレイサー、無茶は危険だよ!」

フェイトは叫ぶが、ヴィレイサーは首を振る。

「それでも、約束したからな。」

ザフィーラの支えから離れ、太刀を構える。

「フン、面白い。」

フェイトを左肩に背負い、ミラージュは不敵に笑う。

「やってみせろ!」

フェイトを背負ったまま、ヴィレイサーに斬りかかる。

真正面から振り下ろされた太刀を受け止める。

しかし、先程の切り傷により弾き返すまでには至らなかった。

「ハァ……ハァ………。」

ヴィレイサーはすぐに息があがった。

「何故ニクスは貴様を脅威とみなすか、皆目見当もつかん。」

「ニクスが………?」

「まぁ、貴様を殺せばどうでもいいか。
 一気に沈めてくれる! IS、グラディエーター・モード!」

フェイトを背後に放り投げ、言い放つ。

ミラージュは太刀をしまい、刃の長い両刃剣を両手に持ち、
足先には巨大なクローが装備された。

それが終わるや否や、ヴィレイサーに肉薄する。

驚愕していたヴィレイサーは反応が遅れてしまった。

「喰らえ。
 デス・クラッシュ!」

それでもギリギリの所で身体を動かしたヴィレイサーは、
なんとか身体の一部を斬り落とされる事は無かった。

「貴様はもう助からん。
 あの小娘も殺してやろう。」

放ったフェイトを見据え、グラディエーター・モードのまま駆け出す。

「させん!」

シールドを展開し、ザフィーラが行く手を阻む。

ミラージュはそのまま1度激突したがシールドは壊れなかった。

「こざかしい!」

振り上げた右手の剣でいとも容易く壊す。

ザフィーラも怯まず、剣を両方とも掴む。
両刃の為、血が流れ出るが気にしない。

「その心意気や面白い。
 だが、グラディエーターは剣を止めても無駄だ!」

クローの着いた足で蹴りを腹に突き刺す。

「ガアァ!?」

突き刺した足を抜き、倒れ込んだザフィーラの頭を踏み台にして、
フェイトの所へと跳躍する。

「終わりだ………。」

「ッ!」

フェイトは恐怖から目を閉じる。

「させるか!」

エターナルで何も無い空間を斬る。

すると、そこには切れ目が入り、ぽっかりと丸い穴が開いたように口を開いた。

その空間は真っ白で、他には何も無かった。

「次元斬!」

その空間に飛び込み、空間の中から再びエターナルを振るう。

「何!?」

いきなりヴィレイサーが目の前に現れ、ミラージュは驚く。

「ハアアアアアァァァァァ!!!!」

エターナルで、ミラージュの左肩を貫く。

「グオア!?
 こ、この………。」

ミラージュはエターナルを引き抜き、一旦距離を取る。

「無事か、フェイト?」

「う、うん………。」

息を整えながら聞くと、フェイトは戸惑いながらも明瞭な声でそう答えた。

「ならいい………。
 ザフィーラを頼む。」

「でも、ヴィレイサーは………。」

「今はアイツの方が重症だ。
 急げ………。」

自分がここにいても足手纏いだと直感したフェイトは、
急いでザフィーラの傍へと駆け寄る。

傷の具合を確認し、シャマルに緊急連絡をする。

「まさかあそこから来るとはな………。
 だが、いつまでも通用せんぞ!」

ミラージュから再び仕掛け、ヴィレイサーはそれを一心に見据える。

刃が振り下ろされる瞬間、ヴィレイサーは身体を少し捻り、紙一重でそれをかわす。

次の攻撃が来る前に、ミラージュのガラ空きとなった腹に、思い切り蹴りを叩きこむ。

「グハッ!」

息がつまり、次の一手に踏み出す前にヴィレイサーがエターナルで片方の刃をはじく。

剣がはじかれたミラージュは急いで離れようとするが、その前にわき腹を斬られた。

「グオォ!?
 チィッ!」

痛みに顔を歪ませながらも、懸命にヴィレイサーから距離を取った。

「逃がすか!
 空間翔転移!」

エターナルを目の前に構え、空間技でミラージュの背後へと回り込む。

「馬鹿な!?
 速い!?」

自身の反応速度を上まわられ、慌てているミラージュに、ヴィレイサーは右肩を貫く。

「ガアァ!?
 このぉ………。」

ミラージュは両方の肩を貫かれ、腕が上がり辛い状態に追い込まれた。

「醜態を晒したままでは死ぬに死にきれん!
 ここで貴様らを葬る!」

意地でもヴィレイサーを殺そうとするミラージュだったが、
突如目の前に白い閃光が走った。

「そこまでだよ、ミラージュ。」

閃光が放たれた方角を見ると、そこにはニクスがいた。

背後にある太陽からの光により、彼は神々しいという言葉が似合うほどだった。

「ニクス………。」

ヴィレイサーも彼の名を呟く。

「これ以上はやり過ぎだ。
 君を失う訳にもいかないし、退くよ。」

「だが、ここでヴィレイサーを殺さなければ………。」

反論するミラージュに、ニクスは冷たい視線を向ける。

「ッ………。」

恐怖からか、ミラージュはそれ以上何も言わなかった。

「ヴィレイサー、僕らの元へ来ないかい?」

右手を差し出され、ヴィレイサーは一瞬戸惑う。

「何故俺を誘う?
 ミラージュによれば、俺は脅威なんだろ?」

「管理局の違法施設の破壊に、思ったより手間取ってしまってね。
 君の協力があれば、もっと早く終わると思うんだ。」

「お前達と手を組むのはお断りだ。
 だが、施設の破壊だけなら引き受けてもいい。」

「そうか。
 けど、君がそんな事をできるとは思えないね。

 君は人を殺せるかい?」

「無理だな。」

「そうだろうね。
 僕らはずっと戦争の中を生きてきた。
 人を殺す事に今更抵抗は覚えないけど………。
 時々君が羨ましいよ。 殺す事に抵抗を覚える君が、ね。」

微笑み、ミラージュを含めて転移魔法を起動させる。

「ヴィレイサー、今回はミラージュの回収が目的だから見逃すけど、
 次は無いと思っておいた方がいいよ。

 気付いてるだろう。 僕らには勝てない事を。」

姿が消え去った後、そんな言葉だけが残った。

「わかってるさ。」

苦々しくそれだけ言い、その場に座り込む。

「ヴィレイサー!」

どこからかフェイトの声が聞こえた気がしたが、
それと同時に、ヴィレイサーは激しく咳き込んだ。

「ゴホッ、ゴホッ………。
 ウグ……ガッハッ!」

口元を手で覆ったが、それでは足りないほどの血液が吐き出された。

「時間も……無い…のか………。」

意識が朦朧とし、倒れてしまった。

薄れゆく意識の中、左手を支えにしようとしたが、力がまったく入らなかった。

それは、左手の遺伝子が機能せず、腕が麻痺しやすくなってきているという事だった。





第6話 「七星とのぶつかり合い、再び」 了


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