[携帯モード] [URL送信]

小説
魔法少女リリカルなのはViVid 〜あなたと共に〜








 レイス・レジサイド───。

 彼は1度たりとも自分のことを好きだと思ったことない。

 王殺しの末裔として生を受け、いつか古代ベルカの時代に名を馳せた、覇王や聖王。その末裔を殺すために生まれたのだとずっと聞かされて育ってきた。気が狂いそうになる程に、ただひたすら、ひたすら。

 それでも、誰かを殺したいと憎しみに駆られることはなく、自分と自分の家族が間違っていると言うことだけは分かった。

 だから決めた。誰とも深くは関わらないと。

 誰にも本当の自分を見せないと。


「ブレイブ・ウォーリアで優勝してみせろ。
 そうすれば、お前を自由にしてやろう」


 自分で抗う術を必死に模索した挙句、家長に対し無様に懇願して手にした千載一遇のチャンス。これを物にできなければ、自分はきっと今以上に辛く生きていくことになるに違いない。

 ブレイブ・ウォーリア──男性版インターミドル・チャンピオンシップと称する者もいるが、正確にはミッドチルダだけで行われるその試合は、裏で巨額の金が動いている。レジサイド家もその恩恵を受けているだけに、優勝させる気は毛頭ないのだろう。

 ならば抗おう。

 どれだけ惨めでも、どれだけ無様でも構わない。

 ただひたすらに抗い、自分自身のために勝ち進むしか道はないのだから。







「レイスくん、ブレイブに出ていたんだね」


 1回戦突破の様子はテレビでも放送されていた。その映像を見て、クラスメートのユミナ・アンクレイヴはレイスにゆっくりと、しかし着実に近づき始めた。最初こそ自分を嫌っていたレイスは戸惑いを覚えていたものの、次第に彼女の優しさに心地良さを覚えていった。


「1つだけ、我儘を言ってもいいですか?」

「なぁに?」

「その……セコンドを、お願いできないでしょうか?」


 人に何かを頼むこと自体、初めてだった。しかもそれが異性と言うこともあり、レイスは失礼と思いつつも恥ずかしさから目を合わせられなかった。

 それでも、ユミナは───


「我儘だなんて思わないよ。
 だって私も、レイスくんのセコンドをやってみたいと思っていたから」


 ───笑顔で応えてくれた。

 それからは日を重ねるごとに、強くなっていく自分を実感していった。そして喜んでくれるユミナが傍にいてくれることに幸せを感じる日々に、レイスは確かに充足感を感じていた。


「順調に勝ち進んでいるようだな」


 だが、決して忘れてはならない。


「それに、“彼女”とも仲良くできているらしいじゃないか」


 自分が、どんな人間であるのか。どんな人間の元に生まれたのか。


「ユミナさんに、何をするつもりですか?」


 これ以上ない程に、怒りを孕んだ声で問うレイス。それまで他人に関わられることを恐れ、誰に対しても拒絶の色を滲ませていた自分らしくない。


「別に何もしていない。“まだ”、だがな」


 その言葉にすぐにでも飛びかかりそうになる。しかしそんなことをすれば自分にではなくユミナに報復される可能性がある。何も出来ず、レイスはただ拳を震わせる。


「簡単なことだ。お前が優勝さえしなければ、それでいい。
 だが、優勝すればその時は……分かっているな?」


 頷くことも、返事をすることもできなかった。こんなことにユミナを巻き込む結果を招いた自分が、ただただ赦せなかった。


「レイスくん、顔色悪いよ? 何かあったの?」


 ユミナとは顔を合わせたくないと思っていたのに、まるで神様の悪戯みたいに会ってしまった。

 だが、思えばそれで良かったのかもしれない。これ以上巻き込んでしまうなら、危険にさらしてしまうなら、いっそのこと自分が苦しむ方がいいに決まっている。


「ユミ───」


 優勝は無理だと言おうとした矢先、ユミナに抱き寄せられていた。ただ優しく抱き締め、撫でてくれる。離したくないとさえ思ったこの温もりに、レイスは自然と涙していた。


「大丈夫……私は、大丈夫だよ」

「え? ど、どうして……」

「だってレイスくん、自分のことより他の人を大事にしているから。
 だから、自惚れかもしれないけど、私のことを心配しているんじゃないかなぁって」


 やはり、ユミナにはどこまでも敵いそうになかった。だが、悔しくない。彼女の理解があったからこそ、今の今まで自分は自分でいられたのだから。

 今更、迷う必要などない。ユミナと共に優勝したい。そしてその上で、絶対に彼女を守り抜こう。


「必ず優勝します。だから……これからも、僕を見ていてくれますか?」










◆──────────◆

:あとがき
ユミナ編の嘘予告、短いですが書きたいことをちまちま連ねただけになりますので。悪しからず。

まずブレイブ・ウォーリアは、端的に言えばインターミドルチャンピオンシップの男性版になります。
ただしインターミドルと違って全次元世界が対象ではなく、ミッドチルダ限定です。

レイスとしては優勝すれば本当に家を出ていけると思っていますが、これは単なる口約束であり、家族ぐるみでの娯楽です。
ここで気付かないのは変かと思いますが、なんだかんだでまだまだ子供な面がありますので。

そんなレイスを支えるのは、ユミナになります。
試合の回数などは決めていませんが、ずっと寄り添ってもらおうかなと思っています。

ユミナ
「ず、ずっと!?」

そう、ずっと。
アインハルトがヒロインとして霞むぐらいに、正妻としてのポジションを確立してもらおうから。

ユミナ
「流石にそれは無茶が……」

大丈夫。最初は通い妻として、決勝戦に近づく頃には同棲してもらうから。

ユミナ
「ど、どどど同棲!?」

ViVid 17巻でユミナとアインハルトがしていたようなイチャイチャを付き合う前からさせられたらと思っています。

ユミナ
「い、いいのかな……?」

完全に別次元だからいいの!
そもそもvividの原作の1年前のお話しの予定だから、君1人が独占している感じだし。

ユミナ
「あれ、アズライトは?」

どうしようね……。

ユミナ
「私に言われても!?」

あとはコロナをメインヒロインにした話も書きたいけど、こちらはネタがないので見送り中。
まぁユミナとの話もいつから書くか分からないんですけどね。







[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!