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小説
魔法少女リリカルなのはINNOCENT ARRAY








「ヴィレイサーは、ブレイブデュエルに興味はないか?」


 友人、クロノ・ハラオウンの唐突な言葉にヴィレイサー・セウリオンは読んでいた本から顔を上げて彼の方に向き直った。


「なんだ、藪から棒に?」

「いや、興味があるなら是非にと思ってね」

「……あぁ、そういえばT&Hって」

「まぁ、それもある」


 ブレイブデュエル──グランツ・フローリアンが開発したシステムでプレイするゲームだったか。流行に疎いヴィレイサーでも話題にそれくらいは自然と耳に入ってくるほど話題になっているらしい。

 そしてクロノの母、リンディ・ハラオウンはそのブレイブデュエルを行うための大型シミュレーターを設置するおもちゃ屋、T&Hの店長をつとめているのだ。


「新人勧誘でもしてこいって?」

「いや、それは言われていない。ただ、最近そっちに割ける時間がなくてね」

「それで?」

「友人に対戦相手を探してくれとせっつかれたんだ。
 君は趣味があまりないと聞いているから、よかったらどうだ?」

「他人を生け贄にするなよ」

「ごもっとも」

「……まぁ、暇潰し程度にやるぐらいなら」


 どうせ帰宅しても勉強ぐらいしかやる気がおきないのだから、構わないだろう。ヴィレイサーはクロノの予想に反してあっさりと了承した。


「それなら、帰りに来るかい?」

「はいよ」


 安堵するクロノに「これは貸しでいいか?」とたずねるとすぐに渋い顔をされてしまった。もちろんヴィレイサーにはそんな気は毛頭ないため、苦笑いしつつ本意ではないと付け足した。





◆◇◆◇◆





 ホビーショップT&Hは最近できたばかりのおもちゃ屋だが、前述したようにブレイブデュエルをプレイできると言う利点を活かし人気の店舗となっている。

 クロノの案内で学生服のままシミュレーターのある階層へ向かう。その途中───


「あーっ!」


 ───愛らしい声が響き渡った。それを耳にした瞬間クロノの身体が強張ったように見えたのは恐らく気のせいではないだろう。背後からぱたぱたと駆け寄ってくる足音に促される形で振り返ると、背丈の小さな少女が見えた。


(金髪……ってことは、彼女が)


 前にクロノから聞かされた家族での付き合いがある姉妹、テスタロッサの姉だろう。


「クロノ、久しぶり〜」

「あ、あぁ。久しぶりだな、アリシア」

「うんうん。最近全然来ないし、もうやらないのかと思ったよ」

「そういうわけじゃないんだが、中々時間がなくて……」

「もーっ、そればっかりなんだからぁ……って、こっちの人は?」

「僕の友達だ」


 クロノの言葉を聞いた瞬間、アリシアの円らな瞳がさらに丸くなった。


「クロノって、友達いたんだ」

「失敬だな、君は……」

「だってだって、クロノってば真面目過ぎるんだもん。融通は利かないし、約束守らないとすぐ怒るし……」

「ぐっ……」


 心当たりがあるのか、クロノは反論もせず黙ってしまう。どうやらこのアリシアと言う少女には敵わないらしい。


「えっと、初めまして。アリシア・テスタロッサです♪
 このT&Hの看板娘の1人でもあるんだ。よろしくね」

「あぁ。ヴィレイサーだ。よろしく」

「ねぇねぇ、クロノは私について何か言っていた?」

「明るく元気な頑張り屋で……妹に身長で負けているって聞いた」

「ほほう……クロノ、どうして身長のことまで話したのかなー?」

「いや、それは……」


 どうやら身長の話題は禁止だったらしい。ヴィレイサーは助け船を出すことに。


「クロノ、悪いがブレイブデュエルについて教えてくれ」

「あ、あぁ、そうだな」


 アリシアを適当に宥めて再び案内をしてくれるクロノ。助かったと小声で伝えてきたので、悪かったと返した。


「まさかあそこまで怒るとはな」

「かなり気にしているみたいなんだ。まぁ、僕も人のことは言えないが」

「俺も同じだ」


 クロノもヴィレイサーも、身長は平均よりもわずかに低いためアリシアのように気にする気持ちはよく分かる。それでもアリシアみたく怒りを覚えたりはしないが。


「それじゃあ、まずは……エイミィ」

「あれ、クロノくん。久しぶりだね〜」


 バックヤードに引っ込むところだった女性店員、エイミィ・リミエッタを呼び止めるとクロノの隣にヴィレイサーがいることに気付いて何故呼び止められたのか気付いた。


「新しいプレイ希望者かな?」

「あぁ。彼に一式を渡してやってほしい」

「はいはい〜。今取りに行くから、ローダーの前で待っていてね」

「一式?」

「ブレイブデュエルのプレイヤー証でもあるデータを記録するカートリッジと、カードのデッキを保存するブレイブホルダーの2つだ。
 まだキャンペーン期間内だから、無料で提供してもらえるはずだ」

「まぁ、そうじゃなきゃ人を確保できないよな」

「仰る通り」

「お待たせ〜。はい、どうぞ」

「ありがとうございます」

「あとは僕の方で説明するから、すまないが体験版用のシミュレーターを準備しておいてくれ」

「OK〜。お姉さんに任せなさい♪」


 えへんと胸を張り、エイミィはそそくさと準備をすべくどこかへ駆けて行った。クロノは彼女には続かず、近くにあった円錐形のマシーンにヴィレイサーを案内する。


「これがローダーだ。ここにカートリッジを入れて、自分のプロフィールを入力してくれ」

「あぁ」


 言われたとおりに進め、最後にカメラで自分の写真を撮影すると作業が完了したのかぱぁっと明るくなる。そして1枚のカードが出来上がった。


「これが……」

「それが最も基礎となるパーソナルカードだな。自分の操るキャラクター、つまりはアバターの性能に関わってくるんだ」

「ふーん。クロノもあるのか?」

「もちろん。これさ」


 見せてくれたカードには、ゲーム内で使われるアバタージャケットに身を包んだクロノが描かれていた。


「僕のはエクスキューショナータイプと言って、防御重視のスタイルだな」

「ジャケットだけで分かるものなのか」

「あぁ。君のは……アサルトスタイルだな。軽装でスピード重視だが、防御を完全に度外視したわけじゃない。
 まぁそれでも、ノーマルのものよりも防御の面では劣るが」

「なるほどな」


 実に自分らしいスタイルだと感じた。決して防御が下手なわけではないが、やはり防御に徹するよりも攻めていきたいと思う節があるのだ。


「それじゃあ、最後にシミュレーターを使って遊ぶ……だけだな」

「早いな」

「まぁ、あまり手順が多いと大人はともかく、子供の方が飽きてしまうからな」

「それもそうか」


 言いながら、クロノの案内でブレイブデュエル専用のブレイブシミュレーターに入り込む。中央に立ち、程なくしてシミュレーターが起動する。


《お待たせ〜。ヴィレイサーくんだったよね。身体に不調はないかな?》

「えぇ」

《無重力だから、少しでも気分が悪くなったら言ってね。
 さてと、設定はクロノくんにお任せしちゃっていいかな?》

「あぁ」


 てきぱきと進めるクロノを横目に、決まっていく項目をなんとなく眺める。【多人数でプレイ】、【上空ステージ】、【フリートレーニング】と次々と選択していき、最後にエイミィに向き直る。


「ヴィレイサー、準備が完了したが……」

「ん、いつでも構わない」

《それじゃあ早速───》

《Let’s go♪》

《って、アリシアちゃん!? また私の仕事を奪ったー!》

《えへへ〜》


 悪びれる様子もないアリシアの声に、ヴィレイサーとクロノは苦笑いしながら光に包まれた。

 やがてまばゆい光がおさまり、アリシアの「目を開いていいよ」と言う言葉に従い、息を呑む。


「空の、上……?」

《驚いてもらえたかな? これがブレイブデュエルの醍醐味だよ!》


 胸を張るアリシアとエイミィを横目に、ヴィレイサーは音もなく吹く風にほっと息をつく。まさかここまで精巧な造りになるとは思わず、驚きを隠せない。


「ヴィレイサー」

「あ、すまない、クロノ。ぼーっとし過ぎたみたいだ」

「気にすることはないさ。大人たちだって、最初はそんな感じだったらしいし」

「まぁ、それもそうか」

「とりあえず、身体をならそうか。と言っても、簡単だからすぐになれるだろうけど」

「そうなのか?」

「あぁ」


 言いながら、クロノは飛行や攻撃、防御と言った初歩的なことを丁寧に教授し、さらにカードのレアリティやスキルについても教えてくれた。


「やっぱり呑み込みが早いな、君は」

「お前の教えが良かったからだ」


 高速で移動する時の体感スピードや景色が流れていく速度に慣れたところで、少しばかりクロノに攻撃や防御の実践を頼もうかと思った時だった。


《Emergency!》


 けたたましい警告音と共に、目の前にモニターが表示される。モニターの下部には【乱入者あり】の文字があった。


「乱入?」

「……エイミィ、乱入制度を導入したのか?」

《ごめ〜ん! 言うの忘れていたよー!》

「乱入を一々設定で決めなくちゃならないのは手間だからと言っただろうに……」


 ブレイブデュエルを始めたばかりの初心者が設定を忘れて乱入などされては困るだろう。だから乱入制度を導入するのは止めた方がいいと言ったのだが、どうやらその願いは叶わなかったらしい。

 ヴィレイサーと合流し、乱入者に事情を説明して帰ってもらおうと周囲を見回すが、どこにもその気配はない───


「散開!」


 ───クロノの言葉に従ってその場を離れると、2人が立っていた場所を砲撃が駆け抜ける。


「この砲撃は──くっ!」


 今の攻撃で相手が誰なのか察したクロノだったが、慌てて振り返り、いつの間にか肉薄していた蒼いツインテールの少女の一撃を受け止める。


「クロノ!」


 加勢をした方がいいと直感的に感じたヴィレイサーは、側方から来ていた黒い剣の攻撃をぎりぎりね所で回避する。


「我の刃を避けるとは……少しはやるようだな」

「やはり君達か」


 ツインテールの少女を追い払ったクロノは溜め息まじりに見る。相手は自分たちと同年と思える少女が3人。その内の1人が前に歩み出て頷く。


「久しいな。テストプレイ以来か」

「……知り合いみたいだな」

「彼女、ディアーチェ・K・クローディアの言うように、このブレイブデュエルのテストプレイの時に会ってね」

「クロノ・ハラオウン、あの時の決着を今こそ」

「いや、だからあれは君の勝ちだと……」

「問答無用です」


 ディアーチェの傍らに控えていた少女が杖を構え、クロノは苦笑いする。


「その前に、彼を安全な場所まで移動させていいかい? 今日が初めてなんだ」

「そのようなはずがあるまい。本気でなかったとは言え、側面からの我が攻撃をかわしたのだぞ?」

「いや、さっきのは偶然で……」

「問答無用!」

「こっちも!?」


 ディアーチェは再び黒い剣を展開し、すかさずヴィレイサーに放つ。それらをなんとか回避しながら建物の陰に入って残りをやり過ごす。


「シュテル、彼奴は好きにせい。我はレヴィと共に今の男を追う」

「承知しました」


 シュテルと呼ばれた少女はクロノに向き直り、すかさず球状の弾丸を放つ。合流を許すまいとするそれらの軌道に頭を抱えつつ、クロノは反撃していった。

 一方、ディアーチェと共に行動することになったツインテールの少女、レヴィは持ち前のスピードを活かして容易くヴィレイサーを追い込もうとしていた。


「ふふん♪ そう簡単には僕に追い付けないよ」


 自慢気なレヴィを振り切るのは確かに無理だろう。とは言え、ここで反撃のために動きを止めてしまっては、後方で広域攻撃の準備を整えているディアーチェにやられるに違いない。


(何で意地張っているんだか)


 別に負けたところで何があるわけでもない。なのに、そう簡単にやられたくはなかった。


(たかだかゲームで……けど、ゲームだからこそでもある)


 レヴィの追従に警戒しながら、さらに加速してビル群に向かう。レーダーで味方と敵の位置が分かると言っても、細かい位置取りまでは分からないはずだ。そこでレヴィだけでも潰そうと考えたのだが───


「そうはさせん!」


 ───ヴィレイサーの狙いに気付いたディアーチェが、ビル群へまっすぐ駆けるヴィレイサーの動きを阻害しようと、彼の眼前にあるビルを粉々に吹き飛ばした。


「くっ!」


 大小様々な大きさの瓦礫が降り注ぐ中を突っ込めるほどの勇気はなく、ヴィレイサーは思わず動きを止めてしまう。その一瞬があれば仕留めるには充分だった。レヴィが背後から近づき、斧から鎌へと武器の形状が変わる。


「僕のかっこいい一撃を、くらえええぇぇっ!」


 ただ刃を一閃するだけにしか思えなかったが、そこは気にしない方がよさそうだ。


(って、考えている場合でもないのに)


 これはかわせない──ヴィレイサーにもそれが分かったが、そうなればもう何もできない。ただ彼女の一撃を受けるしかない。


「させない!」


 だが、鎌の刃先が当たると思われた瞬間、1人の少女が2人の間に割って入った。彼女はレヴィの攻撃を受け止めると、そのまま強く押し返す。


「レヴィ、初心者相手にやり過ぎだよ」

「初心者には見えないけど……それじゃあ、“へいと”が遊んでくれる?」

「だから、“フェイト”だってば!」


 ヴィレイサーを助けてくれたのは、レヴィとそっくりな見た目をしたフェイトだった。アリシアの妹であることはクロノから聞いているので、ほっと安堵する。


「助けてくれて、ありがとうな」

「えっ!? い、いえ……」


 いきなり声をかけられて驚いたのか、フェイトはしどろもどろする。人見知りしがちな反応でもあるため、ヴィレイサーは特に気にすることもなかった。


「あっ」

「え?」


 ヴィレイサーは周囲を見回した瞬間、フェイトを自分の方に引き寄せてそのまま抱き締めた。訳が分からず硬直するフェイトの背後を、黒い槍がまっすぐに駆け抜けていく。


「悪い。怪我はないか?」

「は、はい」


 何故かフェイトは声を上擦らせ、そそくさと離れる。


「おのれ、“黒ひよこ”め……レヴィ、“黒ひよこ”は任せた」

「OK、王様!」

「ま、待って、ディアーチェ! 彼は初心者で……」

「初心者であろうと我が一撃をかわしたことに変わりはない! 故に全力を以て其奴を討つ!」

「暴論だよ!?」


 一向に話を聞く気がないのか、ディアーチェはレヴィに命じてフェイトをヴィレイサーから遠ざけさせると、杖を構えて周囲に黒い剣を出現させる。


「今度は逃がさん!」


 いくつかを同時に、そして残りを時間差で放ち、的確に追い込もうとするディアーチェ。ヴィレイサーはそれらをかわしながらも、ディアーチェが本気で攻撃を当てに来ていないことに気付く。これだけの数があれば、間違いなく早くに狙い撃ちされているはずだ。それをしてこないとなれば、考えられるのは大技で決めると言うことだ。


(なら……!)


 この間に少しでも数を減らそうと、ヴィレイサーは太刀を一閃して黒い剣を壊していく。あまり立て続けに壊してはディアーチェにその狙いを見破られそうなので、ある程度破壊したところで、新しいビルの中へ身を潜める。


「ふん。また隠れたか……貴様、それでも男か!」


 一喝されてしまったが、今は勝つことを優先したいヴィレイサーは、黙って身を潜め続ける。


「今度は逃げられないよう、広範囲にくれてやる!」


 ディアーチェが杖を蒼天に掲げると、尖端に光が集中していく。闇を彷彿とさせるその光は人を惹き付けるには充分すぎるほどだった。


「闇に呑まれよ!」

(今だっ!)


 ディアーチェが攻撃を放った瞬間、ヴィレイサーはビルから身を踊らせる。彼女の攻撃は確かにビルを吹き飛ばすものの、それは直線的な動きしかしなかったため、ヴィレイサーには当たらなかった。


「我が何も対策していないとでも?」


 パチンと指を鳴らし、控えていた黒い剣を一纏めにして槍を作り出す。


「デモンズランス!」


 剣を纏めて槍を象って打ち出すまで、あっという間に行われた。距離も詰められ、かわすだけの余裕もない。


「だったら……叩き斬る!」


 刃を思いきり振るい、飛来する槍を真っ二つにする。その光景には流石のディアーチェも驚かされたようで、瞠目している。この隙を逃す手はない。


「はあぁっ!」


 肉薄して太刀を一閃。だが、ディアーチェはそれをぎりぎりのところでかわした。


(やっぱり、それだけの実力者ってことか)


 だが、立て続けに太刀を振るっても当たるどころか掠りもしない。フェイントを仕掛けても同じだ。


「どうやら、まだスキルの心得はないと見えるぞ」

「スキル?」

「黒ひよこみたく、回避からの反撃とまではいかぬが……その太刀筋ならば回避も容易い」


 ここで距離を取られたらヴィレイサーの敗北は必至だ。ディアーチェもそれを理解しているようで、少しでも離れようとする。


「なら、これはどうだ?」


 上段から振り下ろされる、なんの変哲のない一閃。ディアーチェは奇妙に思いながらも身を捻ってかわした──が、別方向からの攻撃に気付き、慌ててシールドを展開する。


「惜しかった」

「気にすることはないさ。今ので回避スキルの対処も少しは分かったし」


 ディアーチェに攻撃を仕掛けたのは、シュテルと相対していたはずのクロノだった。一瞬の隙をついてシュテルにバインドを施したために駆けつけられたようだ。


「回避スキルの対処だと?」

「お前の圧倒的優位で決着をつけようとする性格のお陰だよ」


 クロノが別方向から攻撃した際、ディアーチェは“回避せずに防御した”。一緒に回避すれば良かったものを、彼女はそうしなかった。恐らく、回避スキルを選択した後から生じた攻撃には、スキルの効果が発揮されないのだろう。


《ディアーチェ!》

「む、ちびひよこ?」


 いきなり愛らしい声が響いたかと思うと、ディアーチェの前にモニターが映し出される。そこには膨れっ面をしたアリシアの姿があり、ディアーチェは何事かと首を傾げている。


《その人は今日始めたばかりの初心者だよ? イジメはよくないよ!》


「いじめてなどおらぬわ! ……今日、始めた?」

《うん? そうだよ。数十分前に始めたんだよ》


 そう言って、アリシアはヴィレイサーの登録情報を見せる。それをまじまじと見たディアーチェの顔には、冷や汗が浮かんでいた。





◆◇◆◇◆





「申し訳ない」

「いや、別に。気にしていないから、もう顔を上げてくれ」


 アリシアから事情を聞いたディアーチェらはすぐにブレイブデュエルを中止。彼女らが所属するグランツ研究所から、ホビーショップT&Hまで全速力でやって来て頭を下げた。


「ぷぷっ、王様が早とちりするなんてね〜」

「アリシア、蒸し返しちゃ可哀想だよ」


 弄り甲斐がある内容だからなのか、アリシアはにんまり笑っている。フェイトがいさめると、少しは落ち着いてくれたが。


「それにしてもディアーチェは強いな。動きに迷いもないし、攻撃も的確だったし」

「ふふん、当然だ」


 クロノに褒めるよう耳打ちされたので、先程の戦闘で感じたことを述べると、気をよくしたのかディアーチェは自慢気な表情に早変わりした。


「相変わらず単純だね」

「それは言わない」

「俺も嘘は言ってないからな」


 その反応に苦笑いするアリシアとクロノ。ヴィレイサーも褒められれば嬉しく思うのは当然だと感じ、彼女の反応も自然なものだと結論付けた。


「ヴィレイサーと言ったな。グランツ研究所にもデュエルシステムは整っている。いつでも来るが良い」

「御厚意、痛み入ります、王」


 ディアーチェはそう言うと、アリシアに伴われて帰路についた。


「そういえば……さっきは助けてくれてありがとうな」

「い、いえ」


 改めてフェイトに礼を言うが、彼女は中々顔を合わせようとしない。


「私、母さんに頼まれたことがあるので」


 そう言って頭を下げると、ぱたぱたと走っていった。


「嫌われたみたいだな」

「いやいや、フェイトはあまり男友達がいないから、緊張しているだけだよ」


 クロノはそう言ってくれたが、これからはあまり話しかけない方がフェイトのために思えてならなかった。










◆──────────◆

:あとがき
なのはINNOCENTの小説も書いてみました〜。

ただ、これは色々と問題があるので、書くのはいつになるやら。

1.ヴィレイサーだけでやっていくのは花がない

2.ヒロインを誰にするか

3.もしコラボするにしても、キャラが多すぎると書いていけるか不安

などなど、ざっと挙げるとこんな感じでしょうか。








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