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小説
第5話 「七星 雹と蜃気楼」





ヴィレイサーがなのは達と合流した時には、事件は収束していた。

レリックの回収を行っていたフォワード陣とギンガ側では、
エリオが負傷したぐらいで、他に大きな傷をつくった者はいなかった。

しかし、その事件で保護した少女が気がかりになった。

すぐに聖王教会の病院に預け、検査を行った。

結果がでるまでは時間がかかるとの事だった。

そして、ヴィレイサーもヴァンとレーゲンの事をはやて達隊長陣に報告する。










魔法少女リリカルなのはStrikerS─JIHAD

第5話 「七星 雹と蜃気楼」










「それじゃあ、ヴィレくんの遺伝子の大元になった人達なの?」

「あぁ。
 少なくとも例の7人はそうだろうな。
 他にも何人かいるとスカリエッティから聞かされてはいるが、
 それが明確に記されている書類の類は残っていないんだ。」

「そっか。」

「それで、あっちの子供の方はまだ目を覚まさないのか?」

「うん。
 今はぐっすり眠ってる。」

「でも、本当にただの女の子としか思えないよ。
 寝言でママって言ってたし。」

「一時の感情に流されるな。」

「そんな………。」

「ま、優しいのはお前達のいいところではあるがな。
 それが甘さにならなければいいだけだ。」

報告を終えたと判断したヴィレイサーは部屋を出て行った。

自室に戻る途中で、スバルと出くわした。

「ヴィレ兄、少し話があるんだけど………。」

「あぁ、なんだ?」

人気の少ない所に到着してからスバルは口を開く。

「実は、こないだの事件で戦闘機人が出てきたの。」

「なに?」

ヴィレイサーは眉を顰めた。

(母さん達が破壊した施設で、ほぼ壊滅に追いやったと思っていたが………。
 やはりまだ造っていやがったか………。)

「どうしよう……私と、ギン姉………。」

「どうもこうも、お前はお前だ。
 それ以外の何者でもないだろ。」

「ヴィレ兄………。」

「今のお前には、必ず傍に仲間がいる。
 それを忘れずに、そいつらと向き合うんだろ?」

「えへへ………。
 やっぱりヴィレ兄はなんでもわかるんだね。」

「兄妹だからな、俺達は。」

「うん。
 ありがとう、元気出たよ。」

「そうか。」

「じゃあね。」

「あぁ。」

走り去るスバルの後姿を見ながら、ヴィレイサーは溜息をついた。

「……まったく。
 ちゃんと元気を取り戻してもいないのに、俺に気を遣うなよ、スバル………。
 ここは、ティアナに頼むとするか。」

ヴィレイサーはパネルを操作して、ティアナに連絡した。



◆◇◆◇◆



「例の子供が目を覚ました?」

数日後、ヴィレイサーははやてからそんな話を聞かされた。

「うん。
 ほんで、今シグナムとなのはちゃんがその様子を見に行って、帰ってきてる頃や。」

「それで、騎士カリムとお話しがあるから、なのはも一緒にと思って。」

パネルを操作してなのはに繋げると、突如女の子の泣いている声が聞こえた。

「ん?」

「なんだ?」

3人でモニターを見てみると、例の女の子がなのはにくっついて泣いていた。

「とりあえず、行ってみようか。」

「せやな。」

「やれやれ。」



◆◇◆◇◆



「お前ら、どうした?」

ヴィレイサーがはやてとフェイトより先行してフォワード陣に問いかける。

「それが………。」

「この後なのはさんが仕事だから、ヴィヴィオの相手を頼まれたんですけど………。」

「ヴィヴィオ当人がなのはさんにすっかり懐いちゃったみたいで………。」

「なにやってんだか………。
 フェイト、お前がこれを処理しておけ。」

「え? わ、私!?」

「子供の扱いには手慣れているはずだ。
 違うか?」

「わ、わかった………。」

いまいち納得していないようだったが、フェイトはなのはとヴィヴィオの所に行く。

「はやて、俺は先にカリムの所に行っている。
 シャッハと模擬戦の約束もしてるからな。」

「うん。
 せやけど、シャッハをこてんぱんにせんといてな?」

「できる訳ないだろ。」

苦笑いを浮かべて先に六課を出て行った。

「ちょっと、ヴィレくん!」

背後でなのはが呼んでいたが、ヴィレイサーは無視して行った。



◆◇◆◇◆



「それでは、なのはさん達を置いてきてしまったのですか?」

シャッハがヴィンデルシャフトを振るいながらヴィレイサーに問う。

「あぁ。
 時間の無駄としか思えなかったからな。」

それをかわして懐に迫るが、それをもう一方のトンファーで受け止められる。

「それはまた………。
 何を言われるかわかりませんよ!」

ヴィレイサーを押し返し、宙返りで更に距離を取ったのを見て、カートリッジを使う。

「ッ!」

一瞬シャッハの姿を見失うが、すぐに着地地点だと判断し、太刀を鞘に戻す。

[Defender Cartridge Get Set.
 Load Cartridge.]

地面に足を着いた刹那、シャッハが目の前に現れた。

「烈風一陣!」

「遮破!」

シャッハの技を既の所で受け止めるが、押しが弱かった為に吹き飛ばされる。

「ウオッ!?」

樹に背中を撃ちつけるとも思ったが、体勢を立て直してそれを免れた。

「危ね………。」

[シャッハ、ヴィレイサー、はやて達が来たから戻ってきて。]

「わかりました、騎士カリム。」

「俺は傭兵なんだが………。
 立ち会わなければならないのか?」

[お願いできないかしら?]

「わかったよ。」

嘆息して、シャッハと共に行く。



◆◇◆◇◆



「手酷くやられたね、ヴァン。」

「あれからうんと修行したんだから、今度は負けないわよ。」

ニクスに言い返すヴァンだったが、ゲイルがそれを否定する。

「奴は不殺だとは言え、戦場に次など無いのだぞ。」

「そうそう。」

「ゲイル、ネブラ、しょうがないでしょ。」

ゲイルの言葉に賛同したのは、小さい少女だった。

七星の中では最も幼い彼女も、かなりの実力者だ。

「喧嘩してもしょうがないだろ。」

修行を終えたレーゲンも奥から姿を現す。

「ねぇニクス。
 ミラージュとヘイルは?」

「あの2人なら、地上本部が作っている砲台を壊しているよ。」

「えぇ〜、あたしも行きたかった。」

「戦場は遊び場じゃない。」

ゲイルに注意され、ネブラは頬を膨らませる。

「わかってるもん!」

「そこで喧嘩しないの。」

「セイン。」

「なんか用?」

「つれないなぁ、レーゲンは。
 ただのおしゃべりだよ。」

「ネブラの遊び相手を買って出てくれた事、感謝するぞ。」

「いやいや、そうじゃないから!」

「違うの?」

「イエ、ソウデス。」

「ありがとうね、セイン。」

「片言になってるけどね。」

「ニクス、ちょっといいかね?」

「あぁドクター。
 何か?」

「ノーヴェとウェンディが近いうちに起動する。
 2人の相手を誰かに頼めるかね?」

「そうですね………。
 レーゲン、いいかい?」

「構わないぜ。」

「では彼が。」

「わかったよ。
 ゲイル、ヴァン、トーレが模擬戦をしたいと言っていたよ。」

「またか、アイツは………。」

「ま、楽しいからいいけどね。」



◆◇◆◇◆



「アインヘリアル、補足。」

黒と紫を基調としたバリアジャケットを着たヘイルが、
はるか遠くから一点を見詰めて言った。

それを隣で聞いた男は笑った。

「いつも通り白兵戦は俺がやる。
 お前はあの砲台を頼むぞ。」

「了解だ、ミラージュ。」

ミラージュは紫色を主とし、空いた部分に白を加えたバリアジャケットを翻し、
砲台をヘイルに任せて先行する。

「よし。 砲身準備。」

背中に背負っている2種類の砲身を脇の下から通して前面に展開する。

片方は散弾砲、もう片方は収束砲のようだ。

その2つを連結し、長距離用の収束砲にする。

「ターゲットに動きなし。
 連射準備。」

的確に自分のする事を口にしていく。

「3発連射準備完了。
 角度問題無し。 IS、ヘイル・シューティング(雹の銃撃)。」

カートリッジを1発だけ使い、魔力チャージを即座に終わらせる。

「ファーストシューティング、発射。」

引き金を躊躇無く引く。

砲身から発射された黒く巨大な収束砲が砲台を完璧に捉え、爆散する。

「セカンド・シューティング。」

大きな爆発音をあげている箇所から少し砲身をずらし、次の地点を撃ち抜く。

その箇所では、何事かと慌てふためいていた魔導師達がいたが、
ヘイルの砲撃により、跡形もなく消え去った。

「サード・シューティング。」

最後には空中から現れた魔導師を撃ち抜く。

彼らは悲鳴をあげる事すら叶わずに消された。

「アハハハハハ!!!」

狂喜に包まれ、ヘイルは笑っていた。



◆◇◆◇◆



一方、白兵戦をしかけたミラージュは退屈そうに欠伸をしていた。

「んだよ、もう終わりかよ………。」

彼の周囲には惨殺された者の姿があった。
全員鋭い剣で斬られたのだと一目でわかった。

「『グラディエーター』になるまでもねぇとはな。」

『グラディエーター』とは、白兵戦を有利に進める為の変身能力といった所だ。

「少しは楽しませてもらえると思ったのによぉ。」

愚痴るミラージュの所へ、ヘイルが舞い降りてきた。

「帰るぜ、ミラージュ。」

「つまんねぇなぁ………。」

「ニクスに相談でもしてみたらどうだ?」

「許可してくれるかねぇ?
 折角だからヴィレイサーの相手をしたいぜ。」

「じゃあニクスが魔力感知してくれるのを祈ろうや。」

「そうだな。」

死体には一切目もくれず、2人は転移魔法でその場を去った。





第5話 「七星 雹と蜃気楼」 了


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