小説 第3話 「模擬戦 動き出す者」 「デヤアアアァァァァ!!!!」 「ハアアアァァァァ!!!」 ヴィレイサーとシグナムが雄叫びをあげて、刃をぶつけあう。 その度に火花が散る。 「レヴァンティン!」 [Explosion.] 一旦距離を取り、薬莢が射出される。 「紫電………。」 レヴァンティンの刀身が炎に包まれ、シグナムがヴィレイサーに肉薄する。 「……一閃!」 「クッ!」 それを紙一重でかわし、シグナムの腹に蹴りをいれる。 「グッ!? だが………!」 負けじとシグナムもレヴァンティンを横に振るう。 [Prism Shield.] だが、エターナルが発生させた見えない障壁により、それは阻まれた。 それを音だけで確認してから、ヴィレイサーは一気に距離を取った。 魔法少女リリカルなのはStrikerS─JIHAD 第3話 「模擬戦 動き出す者」 「はぁー、どっちも素早い戦闘ね。」 ティアナが感嘆の息をもらす。 エリオ達も、ヴィレイサーとシグナムの戦闘に、目を見張っていた。 しかし、途中から見ていたヴィータは大して動揺をしていなかった。 最早見慣れているようなものだ。 今更、ちょっとやそっとでは驚かなくなっていた。 ◆◇◆◇◆ 「エターナル、カートリッジセレクト!」 [Select Cartridge.] シグナムから距離を取ったヴィレイサーは、太刀を鞘に戻し、命ずる。 [Impact Cartridge Get Set.] 「衝撃」の名を冠した薬莢が射出され、迫りくるシグナムに向けて、 鞘に戻したエターナルを一気に抜き放つ。 「風迅衝破(ふうじんしょうは)!」 「クッ!?」 風の衝撃波で、シグナムは吹き飛ばされた。 体勢を崩したのを逃さず、ヴィレイサーはすかさず肉薄した。 「ハアアァァァァ!!!」 振り上げた太刀から、再びカートリッジが射出された。 「チッ!」 鞘を空間から出し、それを受け止める。 「ハアァ!」 シグナムもすぐに反撃に転じたが、ヴィレイサーも同様に鞘で刃を止める。 そして、どちらともなく飛び退く。 しかし、飛び退いた瞬間に、レヴァンティンがシュランゲフォルムになった。 「行け!」 放たれた連結刃はヴィレイサーの足を捕まえた。 「しまっ………!」 シグナムはそのままヴィレイサーをビルに叩きつけようとする。 「うおっ!?」 ビルに叩きつけられる直前で、レヴァンティンはヴィレイサーの足を放した。 そして、ヴィレイサーはビルに突っ込まれた。 「この程度か、ヴィレイサー?」 土煙の中に、シグナムは問いかける。 「シグナムの奴、本気でやりやがって………。」 [それが彼女ですよ。] 「わかってはいるが、な!」 大きな音を立て、埋まった身体を瓦礫から脱する。 「モード3─ギア1!」 [Scissor Mode.] 右手に開いた状態の鋏状のを装備し、シグナムの所へ一直線に突っ込んでいく。 「レヴァンティン!」 刃を煌かせ、シグナムも太刀打ちする。 ヴィレイサーはそれを魔法陣風のシールドで受け流す。 そして、右手の鋏をシグナムに突き立てる。 「閉じろ!」 「Close.」 しかし、鋏が閉じるよりも一歩早く、シグナムは離脱する。 [Schlage Form.] 連結刃が閉じた鋏を縛るように捕らえる。 「それでは開けまい!」 「お前とてまともに戦えんだろうが。」 拮抗する2人のデバイスは、互いの主を勝たせる為に、次の手を模索する。 「本当にそう思うのなら、貴様の負けだぞ、ヴィレイサー。」 カートリッジを射出し、炎熱加速を行う。 「そのまま劫火にのまれろ! 緋炎焦火(ひえんしょうか)!」 連結刃を伝って、シグナムの炎がヴィレイサーに迫る。 「チィッ! エレメンタル・カートリッジ、フリジッド!」 [Elemental Cartridge Get Set. Ver:Frigid Cartridge.] 『寒冷』の名を冠したカートリッジを使い、シグナムの炎と戦わせる。 「甘いな。 ヴァンガードほどの氷でなければ止められんぞ、ヴィレイサー!」 「わかってるさ。 少しぐらい止められればそれでいいんだよ。 IS、シャドーファントム!」 [Shadow Phantom.] ヴィレイサーの影が揺らぎ、もう1人のヴィレイサーを模った。 「何!?」 そのシャドーは、エターナルを弓型にしており、既に魔力を収束し終えていた。 「やれ、シャドー。」 「Astral Rain.」 エターナルが制御を取っているのか、言葉は片言だった。 「しまっ!」 それはシグナムに直撃した。 連結刃はそれによって解かれた。 ヴィレイサーの勝ちだ。 ◆◇◆◇◆ 「新たな技での勝利だな。 シャドーファントムの制御、どうだ?」 [80%ですね。 ただ、反応速度がいまいちですね。] 「そうだな。」 「ヴィレ兄、勝ったね!」 「お疲れ様です、ヴィレイサーさん。」 「シグナム副隊長もお疲れ様です。」 「あぁ、ありがとう、エリオ。」 「ヴィレイサー、次は私とやろう、私と!」 模擬戦を終えた後、フェイトはヴィレイサーにそう言う。 「さすがに少しぐらい休ませてくれ。」 「でも、私はこの後仕事あるから今の内に………。」 「我儘言うな、フェイト。 それとも、俺が不十分なままで戦いたいのか?」 「ん、そう言われると………。」 「しかし、その方がお前はスリルが増すぞ。」 「そんなスリル味わいたくねぇよ。」 「あ、ヴィレイサーさん、ここ切ってますよ。」 ティアナに指摘され、ヴィレイサーは自分の腕を見る。 「大した傷じゃあ無い。」 「ダメです!」 ヴィレイサーの意見に、シャマルが断固反対する。 「ちゃんと治療しないと、黴菌が入って大変なんだから!」 「がなるなよ。 今から医務室に行くよ。」 「なら結構です。」 それを聞いたシャマルはすんなりと引き下がった。 「ヴィレイサー、私との模擬戦は?」 「また今度。 手の空いている時にやってやるよ。」 立ち上がり、医務室へと歩いていく。 「あの、ヴィレイサーさん、私が治療しますけど………。」 「いや。 これくらいなら別にいい。 その気持ちだけで充分だ。」 キャロの提案を断り、ティアナが付き添いとして一緒に医務室へと向かった。 「ティアナ、悪いけどヴィレイサーの治療をお願い。 これぐらいならあなたでもできるでしょ?」 「はい。」 「お前はどこに行くんだ、シャマル?」 「はやてちゃんの所。 今さっき呼ばれちゃってね。」 それだけ答えてから、シャマルはヴィレイサーをティアナに任せて出ていった。 「わざわざすまないな。」 「お気になさらずに。」 テキパキとヴィレイサーの怪我に合わせた対処をしていく。 「ヴィレイサーさんって、2年前は何をしていたんですか?」 「レーベ所属の扱いとして創世の書事件に関わっていたよ。」 「もしかして、最後の決戦を行ったのって………。」 「俺だ。」 「スゴイですね。 私は、凡人で………。」 「そんな事無いと思うがな。 ただの凡人を、なのはが拾うとは思えんがな。」 「そうですね。 私、以前自分の道に迷って、なのはさんに怒られちゃったんです。 でも、だからこそ今の自分を見つけられる事ができたんです。」 「そうなのか。 けどあいつの事だ。 どうせ不器用な事でしかお前を導けなかっただろ。」 「アハハ………。 確かにそういう感じでしたけど、別に良かったと思います。 その所為ですれ違いはありましたけど、より理解できたって言うか………。」 「まぁ、お前がそう言うのなら構わないがな。」 治療を終えたので、ヴィレイサーは立ち上がる。 「ありがとうな、ティアナ。」 「いえ。」 ◆◇◆◇◆ その頃、木が生い茂った森林で、フードを被った2人の前に、ニクスが現れた。 「騎士ゼスト……ですか?」 「そうだが、貴様は?」 「ニクスと言います。 少々お聞きしたい事がありまして。」 「断る、と言ったら?」 「スカリエッティに情報収集させます。」 「ドクターの事、知ってるの?」 ゼストの隣にいた、儚げな少女が問う。 「えぇ。 一応、仲間として行動しています。」 「いきなり現れた奴の事なんか、信用できるか!」 そう言ったのは、少女の肩にいた融合騎だ。 「もちろん信用する、しないはあなた方の自由ですから。 騎士ゼスト、ヴィレイサー・セウリオンについてお聞きしたいのです。」 「ヴィレイサー、だと?」 「彼の遺伝子情報、あなたは記憶してますか?」 ニクスは、冷徹な笑みを浮かべながら、ゼストに問いかけた。 第3話 「模擬戦 動き出す者」 了 [*前へ][次へ#] |