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小説
最終話 「選んだ未来」
魔法少女リリカルなのはWars
最終話 「選んだ未来」






ガキィン



ズバァッ



ブォン



何度もヴィレイサーとエクシーガの刃が噛み合い、火花を散らす。

互いに一歩も譲り合わず、その力は拮抗している。

バリアジャケットに掠るものの、切り傷はなかった。

どちらも紙一重でかわしているのだ。

「ハアアアァァァァーーーー!!!」

「デヤアアアアァァァァーーーーー!!!」

雄叫びをあげ、ぶつかり合う。

そして離れ、魔術を放ち、爆風が辺りを駆ける。

「クラスターレイド!」

「ハヴォックゲイル!」

先程からこの繰り返しで、相手に決定打を与えられずにいた。

『他人のような気がしない』

2人が初めて出会った時に思った事だ。

その答えが、相手に自分の遺伝子がある事だとは思わなかった。

だが、いつまでも遠慮していては決着はつかない。

先に動いたのはエクシーガだった。

「行け! フラグメント!」

エクシーガが長剣を突き出し、その先が分裂する。

それがヴィレイサーに迫りくる。

「カートリッジ、ロード!」

[Load Cartridge.]

後ろにエターナルを振りかぶり、薬莢が射出されるのを確認してから、
迫りくるフラグメントに光の奔流を放つ。

「ベルセルクソード!」

それは簡単に当たり、フラグメントは砕けた。

だが、砕けたフラグメントはそのまま攻撃してきた。

「なっ!?」

「フラグメントは欠片と言う意味よ。 砕けるのが仕事。」

エクシーガは容易く数多くのフラグメントを操る。

「サイコミュの発展型か!」

ヴィレイサーは毒づきながらも回避行動を続け、勝機を、隙を見出そうとする。

「フラグメント、モード・ダガー。」

その言葉に、いくつかのフラグメントが隠した刃を展開する。

「クゥッ!」

ヴィレイサーは身体を急旋回して操作をしているエクシーガに肉薄する。

「モード・ファイヤ。」

残りのフラグメントが魔力弾を放つ形態となる。

「チッ!
 今度は射撃型か!」

「どう?
 いつまでも逃げ切る自信はある?」

エクシーガは不敵な笑みを浮かべる。

「逃げ切る自信は無い。
 だが、迎え撃つ気はある!」

幾重もの攻撃をかわし、再度エクシーガに迫る。

「コネクト。」

そう言った瞬間、フラグメントは光の線で繋がれ、ヴィレイサーを捕らえた。

「プリズム。」

捕まったヴィレイサーは、シャボン玉のような色の防御シールドに覆われた。

「俺を防御シールドに捕らえるのか?」

「あなたを守るためじゃないという事は、わかっているわよね?」

「逃げ場が無いって事だよな。」

「そう。
 悪いけど、これで一気に終わらせるわ。
 グランデス・ビッグバン!」

ヴィレイサーを捕獲した光波防御シールドに、幾つかのフラグメントが入ってきた。

そして、それがヴィレイサーの目の前で爆発を起こす。



ピシッ



音をたてて亀裂が走る。

そして、轟音と共にシールドが砕け散った。

「・・・。
 終わったわね。」

エクシーガはポツリと呟き、背を向けた。





「勝手に殺すなよ。」

「っ!?」

驚き、振り向いた先にいたのは頭や左手から血が出ていたヴィレイサーだった。

「悪いな、死ななくて。」

「どうやって・・・。」

「ケイオスフィールドだよ。
 あれを自分の身体を覆うように展開したんだ。
 頭は間に合わないと思ってたから、両腕を交差させたんだ。」

「なるほど。
 フラグメント解除。」

納得した彼女は、フラグメントを長剣に戻した。

「もう使わないのか?」

「あなたは同じ手を何度も食らうとは思えないわ。」

潔いその言葉に、ヴィレイサーは安堵する。

「んじゃ、もう少し斬り合うか?」

「いいわよ。」

2人は再び駆け出し、互いの力をぶつけ合う。

「テンペスト・ラッシュ!」

エクシーガは素早い剣の突きを繰り出す。

ヴィレイサーはそれを飛び退いてかわし、技が終わった刹那に懐へ飛び込む。

「翔破裂光閃(しょうはれっこうせん)!」

光を纏った剣が削岩機のようにエクシーガに迫る。

もちろんエクシーガはそれを長剣でいなし、かわす。

「穿破斬月襲(せんぱざんげつしゅう)!」

「狼破千烈襲(ろうはせんれつしゅう)!」

エクシーガが躍りかかるが、ヴィレイサーは狼を模した衝撃波で吹き飛ばす。

「アルティメット・ストリーム!」

「絞牙鳴衝斬(こうがめいしょうざん)!」

以前ヴィレイサーを負かした水色の閃光と、白銀の衝撃波が拮抗する。

「まだまだぁ!」

「俺だって!」

互いに譲らないため、拮抗している力は相殺された。

そしてその爆風により、アメノキザハシの窓ガラスが割れる。

2人はそこから飛び出し、大空へと戦場を変える。





「ヴィレくん!」

「ヴィレイサー!」

「エクシーガ!」

遠くでは、それに驚いたなのは達がいた。





一閃。

刃がぶつかり、火花が散る。

ヴィレイサーは先行し、エクシーガがそれを追う。

再び一閃起こり、離れ、戦場を一陣の風のように駆ける。

それを何度も何度も繰り返し、やがて止まったかと思うと、
2人は刃を押し合いながら対峙していた。

「せやぁーっ!」

それをエクシーガが思い切り押し返す。

「ならば!」

押し返されたヴィレイサーはその力を利用して更に距離を取ろうとするが、
それを許さないエクシーガが、思いの外素早い速さで肉薄する。

「ハアアアアアァァァァァーーーーー!!!」

真一文字に一閃された長剣をかわすが、当て身をくらわされる。

「こなくそ!」

負けじと振り下ろしたエターナルの刃が、エクシーガの肩を斬るが、
既の所で長剣を支えにして止める。

「エクシーガ!
 お前が戦えば戦うほど、ヴェルファイアが残した自然が否応なしに消えていく!
 その事にお前はもう、気付いているはずだ!
 なのに何故戦い続ける!?」

ISのSEEDを発現させ、一気に畳みかける。

今度はヴィレイサーが躍りかかり、上から躊躇いなく振り下ろす。

エクシーガは紙一重でかわしながら距離を取り、魔術を放つ。

「フリーズランサー!」

「クロスファイヤー、シュート!」

氷の槍の穂先を魔力弾で叩き落とす。
だが、それでも全てを相殺出来ず、幾つかがヴィレイサーの左肩を貫いた。

「グゥッ!」

戦場に鮮血が飛び散るが、ヴィレイサーは1度顔を歪めただけですぐに反撃に転じる。

「今度は弾数増やしていくぞ!
 クロスファイヤー・ドライブ!」

20の弾丸がエクシーガに襲いかかる。

「くっ、トライシールド!」

爆発が起こるが、エクシーガは大した傷を負ってはいなかった。

そして、またも接近戦に突入する。

「お前が今すべき事は、こんな事じゃないだろ!」

「だからって、技術の発展に目を瞑りながら、
 失われていく自然を直視しろと言うの!?
 ヴェルファイアが残した思想や仲間は切り捨てるの!?」

「ヴェルファイアや彼の仲間は、自然を守る為に戦ってきた!
 そして今もその自然の為に戦っている!
 だがそれは決して、お前のように力で無理強いしている訳じゃない!
 だからお前は、今あるこの世界を信じろ!」

「私だって・・・。」

いつの間にか、涙を流しながらエクシーガは訴えてきた。

「私だって、この世界を信じたかった!」

素早くヴィレイサーの背後に回り込み、横に剣を振るう。

「クッ!」

ヴィレイサーは宙返りしてかわす。

その時、ヴィレイサーの長い髪がバッサリと切られ、空に舞う。

「だけど・・・。
 だけど!
 この世界はヴェルファイアの理想を!
 私を、『私達』を認めてはくれない!
 あなただって、認められなかった1人ではないの!?」

「確かに、今の俺が造られた時、誰も俺を認めてはくれなかった。
 研究者は実験素体として、他の奴らは俺を『成功作』として見ていた。
 誰も彼も俺を『人間』としては見てはくれなかった・・・。
 けど、必ず認めてくれる人達がいる!
 俺の家族がそうだったように!
 今の仲間達がそうだったように!」

「あなたにはいるけど、私には誰もいないわ・・・。
 ヴェルファイアも、もういない・・・。
 所詮、私達は戦う事しかできない・・・。
 その為だけに、造られたのだから。」

「それでも、力だけが俺達の全てじゃないはずだ!」

「それは、あなたが『成功作』として過ごしてきたからよ!
 私のような『失敗作』とは決してわかり合えない!」

「いつまでもそんな柵(しがらみ)に捕らわれているから!」

「あなたにはわからない!
 『失敗作』の私が、どれだけ苦しんできたか!
 研究所から追い出され、ずっと1人で苦しんできた!
 ヴェルファイアと出会って、ようやく平穏を手に入れたと思った。
 だけど、だけど彼はもう!」

薬莢が3つ射出され、エクシーガの長剣に魔力刃が付与され、それは徐々に巨大になる。

しかし翡翠色の巨大な剣を、ヴィレイサーはただ見据えているだけだった。

「一応、死なないよな?」

ヴィレイサーはエターナルに笑いながら問いかける。

[リーダーは本当に不器用ですね。]

今から主が何をしようとしているのかわかった。

[死にはしないと思いますが、身体はボロボロになると思いますよ。]

「スマン。
 いつも迷惑かけちまうな。」

[今に始まった事ではありませんから。]





(ヴィレイサー?
 何をしているの?
 どうして何もしないの?)

エクシーガは彼の意図が読めず、戸惑いを覚える。

だがそれでも、攻撃の手を緩めない。





[リーダー、何故あなたはそうも不器用なのですか?
 エクシーガと話し合いをせずに戦い、
 相手の悲しみを知る為に己を傷つけるなど、不器用にも程があります。
 なのは達に対してもそうです。
 素直に話せばいいものを、明らかに彼女達を遠ざける発言をしています。
 優しいのか逃げているのかわかりません。]

「それが俺だ。
 他の誰でもない。
 本当の俺の姿がそれなんだよ。
 不器用で、他者と関わるのを極力さけてるただの臆病者だ。
 けど、大切な仲間を助けるのに、自分の身は気にしない。」

[エクシーガをもう仲間として見ているとは、あなたらしいですね。
 ですが、そんな事を続けてはあなたの命がいくつあっても足りませんよ。]

その指摘に、ヴィレイサーは不敵に笑った。

「何言ってんだよ。
 俺の未来、そんなに永いと思うか?
 『いつ果てるとも知れぬこの身体』だ。
 どうせ死ぬなら、『誰かを救う為』か、『誰かの身代わりになりたい』。
 それなら『この命も捨てる価値がある』なんて思ったらさ、
 ついついやっちまうんだよな。
 こういう事。」

笑いながら、目の前にそびえ立つ翡翠色の剣を見る。

[そうですね。
 では、死なないように頑張りますか。]

「あぁ。 相棒。」





「何もしないのは戦意を喪失したからかしら?」

「そう慌てるな。
 その剣を俺に振り下ろせば、その答えはわかるぞ。」

「なら、行くわ!
 エクス・キャリバー!」

エクシーガが渾身の力を込めて、エクス・キャリバーを振り下ろす。

だが、ヴィレイサーは逃げようとはしなかった。





「つくづく思うよ。
 こんなバカな事、止められたらって。」

[生まれ持った性格は変わりにくいものです。]

「そうだな。
 さぁエクシーガ、お前の想い、見せてみろ!」

そして、彼は目を閉じ、エクス・キャリバーを一身に受けた。





「なっ!?
 ど、どうして・・・。」

エクシーガは訳がわからなくなった。

今自分の目の前には、攻撃を防御する事無く、
一身に受けているヴィレイサーの姿があった。

いくら非殺傷設定とはいえ、まともに食らえば一溜まりも無いはずなのに。

ヴィレイサーは苦痛に顔を歪ませるが、それでも決して逃げはしなかった。





やがてエクシーガの攻撃が終わった時、ヴィレイサーは───





「・・・。
 ハァー、死ぬかと思った。」

[無事でなによりです。 リーダー。]

身体こそボロボロなものの、生きてはいた。





「どうして・・・。
 どうしてあんな事を!?」

「そりゃお前。
 お前の想いが知りたかったからだよ。
 ここまで来たら、話し合いは無理だろうからな。」

「『成功作』はそんな事を考えるの?」

「1人の人間として考えた行動だ。
 それに、『成功作』には問題があるんだぜ。」

「問題?」

「そう。
 お前が望んでいる『成功作』の真の姿はな・・・。
 ガハッ。 ゴホッゴホッ。 ウクッ・・・。」

そこまで言った時、ヴィレイサーは突然咳き込んだ。

口元を押さえた右手は、鮮血により真っ赤に染まっていた。

だがそれは、エクス・キャリバーで出来た傷によるものではない。

激しく咳き込んだ事からの、吐血だった。

これは、ヴィレイサーの時間が、リミットが尽きる事への証だった。

「アッハハハハハハ。
 ハァー、どうしようかエターナル。
 終焉へのカウントダウンが始まりやがった。」

「終焉へのカウントダウンって、いったい・・・。」

「俺はな、加えられた遺伝子が多過ぎて、
 抑制遺伝子で全ての遺伝子を抑えきれないんだ。
 で、成人近くになると、細胞が徐々に死滅していくんだ。
 最初の症状は、激しく咳き込むことと、それによる吐血。
 そして、徐々に抑えきれない遺伝子が細胞を喰らい、
 その部分を死滅させて行く。」

「そんな・・・。
 そんな事って・・・。」

「事実だ。
 そしてこれは、遺伝子の量で決まる。
 つまり、『成功体』は遺伝子を抑えきれない確率がグンと高くなり、
 そして、死に易くなるんだよ。
 お陰で俺は、いつ果てるとも知れぬこの身体で生きてきた。
 そしてその終焉が始まった。」

「・・・。」

エクシーガはただ黙していた。

「なぁエクシーガ、もう止めないか?
 お前が望んだ『成功作』は、時限爆弾と一緒に生きているようなもんだし。
 残したい自然は、この戦いによって失われていく。
 お前が戦う理由は、もう無いんじゃないか?」

「そうね。
 どうして今までそんな大事な事に気付けなかったのかしら。
 でも、最後に互いの全力をぶつけない?
 それで、色々な事に決着がつきそうなの。」

「いいぜ。 負けねぇからな。」

「ありがとう。」





静寂が2人を、否、戦場のすべてを包み込んだ。

そして、互いに同時に駆け出し、魔力刃を付与して巨大な剣を模る。





「エクス・キャリバー!」

「光翼闇龍剣(こうよくあんりゅうけん)!」

翡翠色と白銀の剣がぶつかり合い、旋風が巻き起こる。





だが、それを打ち破ったのはヴィレイサーだった。

「っ!?」

「いっけえええええええええぇぇぇぇ!!!」










「あなたの勝ちね、ヴィレイサー。」

エクシーガは今、ヴィレイサーの腕の中にいた。

天翔光翼剣に気絶し、落下していく彼女をヴィレイサーが助けたのだ。

「違うな。
 俺が勝ったんじゃない。
 お前が負けただけだ。」

「そうね。
 創世の書。」

片手を虚空に出し、創世の書を出現させる。

「今までありがとう。
 あなたの終わらない連鎖、私が今ここで断ち切るわ。」

[Thank You.]

「さよなら、創世の書。 完全破壊。」

[All Delete. Good Bye. My Master.]

全体にヒビがまわり、終いには砕け散った。

「創世の書は、何も創れなかったな。」

「いいえ。
 あの子は今の私を、これからの私を創ってくれたわ。」

「まぁ、お前がそう言うならそれでいいけど。」





「ヴィレイサー。」

「おぉ、クロノ。
 お疲れ様。」

「あぁ。
 そっちの女性は?」

「私は・・・。」

自分が創世主軍の主だと言おうとしたエクシーガの口を、ヴィレイサーが押さえた。

「ムグッ!?」

「彼女はこの事件の英雄だ。」

「英雄?」

クロノが訝しむように2人を見る。

「そうだよ。
 俺が破壊できなかった創世の書を、彼女が破壊してくれたんだ。」

「そういう事か。
 何が望みだ? ヴィレイサー。」

嘆息し、睨んできた。

「せっかく創世の書の破壊って大仕事をやってくれたんだ。
 これで今までエクシーガがやってきた事、チャラに・・・。」

「なるわけないだろ!」

一喝され、若干落ち込んだ。

「まぁ、考慮ぐらいはしてやる。」

「初めからそう言えばいいんだよ。」

「まったく。 君までこっちを酷使するのか。
 さぁ、2人ともすぐにアースラへ行って、治療を受けろ。」

「エクシーガ、信用してくれるか?」

「もちろん。」

「それじゃあ、とっとと行くか。」





「ヴィレイサー!」

「鬱陶しい・・・。」

駆け寄ってきたフェイトを、掌底を突き出して制する。

「先に治療を受けさせろ。
 でないとお前を殺す。」

言って、治療室へと入って行った。

「照れなくていいのに。」

「あの目、本気だったよ。」

フェイトはそう言うが、デュアリスの言葉に驚愕した。

「えっ!?」

「嘘だよ、嘘。」





「あぁ、身体が色々とマズイな・・・。」

ベッドに沈み込むようにしながら言う。

カーテンでしきられた隣には、エクシーガがいる。

「エクシーガ、どうだ?
 少しは落ち着いたか?」

「えぇ。
 それにしても、羨ましい仲間達ね。」

エクシーガはカーテンの隙間から入り口の方を見ていた。

「なのは、フェイト。
 扉から見るのは止めろ。 ウザイ。」

ヴィレイサーの冷ややかな言葉に、2人はガーンとショックを受けた。

「扉から見るのを止めろという事は、2人に入ってきてほしいの?」

「エクシーガ、誤解を招くような言い方をするな。
 俺達は今療養中なんだから、入ってきたら鬱陶・・・。」

「「お邪魔しまーす。」」

「鬱陶しいから来るなよ!
 イッツゥ・・・。」

いきなりの行動に起き上がるが、急激な痛みがヴィレイサーの身体を駆け抜けた。

「ダメだよ、ヴィレイサー。
 無理しないで、ゆっくりと休まないと。」

「誰の所為で痛がったと思っているんだよ・・・。」

呆れ、身体を休めようとした時、ある違和感を覚える。

(左足が・・・。)

「どうしたの? ヴィレくん。」

「いや、なんでもない。
 で? 何も話がないのか?
 だったらとっとと出てけ。」

右手でヒラヒラと振るが、なのははそれを叩いた。

「実は、ヴィレくんとエクシーガさんにお願いがあるの。」

「ヴィレイサーはともかく、私にも、ですか?」

「うん。
 実は、私達は新しい部隊を設立中なんだけど、
 その部隊に所属して欲しいんだ。」

「新しい部隊ねぇ。」

「その名も、機動六課。
 古代遺物管理部だよ。」

「主にロストロギアとかを扱うんだ。
 それで、ヴィレイサーとエクシーガがいれば、百人力だし。」

「水を差すようで悪いが、エクシーガの方は無理だ。」

クロノがノックをして入ってきた。

「そんな、なんで!?」

「彼女の今までの事をふまえるとこればかりはな。」

「そうでしょうね。
 私は六課に行くのは止めます。
 ですが、1つお願いがあるんです。」

「お願い?」

「えぇ。
 私を、レーベの復興支援に参加させていただけませんか?
 あそこは自然が多いですし、なにより、ヴァンガードの故郷ですから。」

「わかった。
 検討してみよう。」

クロノはそう言って出て行った。

「ねぇ、リュウビちゃんとデュアリスくんもレーベの復興にまわるの?」

「恐らくそうだろうな。
 そうだ。 六課の件だが、俺もお断りさせてもらう。」

「え、どうして?」

「俺個人で動きたいんだ。
 軍隊はどうも、俺の性に合わない。」

「そっかぁ・・・。
 残念だなぁ・・・。」

「まぁ、しばらくはレーベの復興を手伝う予定だったし、
 それが終わったら、こっちの家族と共に過ごす予定だったからな。」

「じゃあ、しばらくはミッドに残るって事?」

フェイトの問いに、ヴィレイサーは肯定した。

「あぁ。 そうなるな。」

「じゃあ、会おうと思えば会えるんだね。
 また会おうね、ヴィレイサー。」

差しだされたフェイトの手を、ヴィレイサーは逡巡するが、ちゃんと握り返す。

道は違えど、相手が選んだ未来を、ちゃんと歩んでいく事を願いながら───


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