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小説
第17話 「同じ未来 違えた道」
魔法少女リリカルなのはWars
第17話 「同じ未来 違えた道」

─アメノキザハシ 内部─

「最初はお前らか。」

内部に入り、ダガーやガジェットを駆逐し、
次の階層へと向かうヴィレイサーの前に現れたのは、残った創世主軍の師団達だった。

「最初ではない。
 最後だ。 堕天使よ。」

第1師団の師団長、ラントナーが前に出る。

「お前達は最後だろうがな。」

[Load Cartridge. Mode2-Gear2.]

ジャベリン型に切り替え、低く構える。

「この人数だ。
 なめるなよ?」

「それは俺の台詞だ。 1人相手に過信するなよ?」

敵は第1師団の師団長、ラントナーを筆頭に、
第2、第4師団の6人とその長2人の、合計9人だ。

「行くぞ!」

「来い! 堕天使!」

槍の穂先とラントナーの刃とがぶつかり、火花が散る。


「ガトリング・ミサイル!」

「ブリット・ハンマー!」

「ネイルボーン!」

周りの軍勢もラントナーの加勢をする。

ヴィレイサーはそれらをかわさずに、カートリッジを1つ使う。

そして、瞬時に太刀型に切り替えたエターナルで、周囲を一閃する。

「風牙爆砕旋(ふうがばくさいせん)!」

強い風圧で技を逸らす。

そして怯んでいる敵の1人を、再びジャベリンに替え、武器を構える。

「幻龍槍穿(げんりゅうそうせん)!」

幻影の龍がジャベリンから一直線に出現し、敵を喰らった。

「1人目。
 雷神旋風槍(らいじんせんぷうそう)!」

そこから振り向き様に、雷の竜巻を起こし、こちらに突っ込んできていた2人を屠る。

殺した事を確認せず、そのまま跳躍する。

そして、次の標的を見据え、ジャベリンを投げつける。

「月光(げっこう)!」

ヴィレイサーの背後に照明があったため、
敵は目を細めただけで、よけきる事は出来なかった。

それを見たラントナーはすぐに着地地点に急ぐが、
ヴィレイサーは空間翔転移を使い、別の場所へ移る。

その上、エターナルも勝手に主の所へ戻った。

その後、ようやっと着地する。

「ついてこれたか?」

「・・・。 貴様・・・。」

ヴィレイサーはラントナーと残りの敵を見る。

(残りは5人か・・・。
 ナイトメアを使うには彼奴等はバラバラだな。)


「ラントナー師団長、どうしますか?」

「ご指示を、ラントナー師団長。」

一番強いであろうラントナーに、次々と残りの師団が集まる。

「この程度でうろたえるか。
 愚か者どもめ・・・。」

だが、ラントナーは彼らを見下すような眼をしていた。

「ならば我が贄となれ。」

言うが早いか、刀を一閃させ、全員を斬る。

「っ!?
 貴様、何を!」

ヴィレイサーはジャベリンを投げつけるが、それは見えない障壁にはじかれた。

そして、ラントナーの周囲に魔法陣が展開される。

[どうやら、力を吸収しているようですよ。]

「厄介な流れになってきたなぁ。」

次に煙が晴れ、そこから現れたラントナーの姿は先程とまったく変わっていなかった。

だが変わってないのは『姿』だけだ。

『魔力』はケタ違いである事は推し量れる。

「それにしても、創世主軍が共食いするとは思わなかったな。」

「我々は元々同じ創世の書から創られたデータ人間だ。
 互いを微粒子化し、それを喰らう事ぐらい他愛もない。」

「だからって、仲間を喰うのか?」

ヴィレイサーの声のトーンが下がる。

それに気付いたラントナーはせせら笑った。

「貴様も所詮は1人だ。
 管理局の奴らと仲間になったらしいが、どうせ信頼してはいないのだろ?
 俺達と同じで、相手を利用しているだけだろうが!」

「それは・・・。」

ラントナーの嘲笑と言葉に、ヴィレイサーは反論が出来なかった。

今まで自分が関わってきた奴らは本当に仲間と呼べるかわからなくなった。

そんな敵の恐ろしい闇に飲み込まれそうになった時、ふと、誰かの言葉がよぎった。


常に1人だなんて、悲しい事言わないで───


あなたには、『私たち』がついてるから───


私はとことんヴィレイサーを『仲間』として信じ抜く───


一緒に無事に帰ってこようね?───


(あぁ、そうか。
 俺は今、あの2人の言葉を信じているんだ。
 なのにここで俺が敗れれば、それこそ皆の信頼を裏切り形となる。
 俺は皆を利用しているんじゃない。 『信頼』しているんだ!)

キッと目を見開き、ラントナーを見据える。

「どうした?」

「今ようやくわかったんだよ。
 俺が管理局の奴らと行動している理由がな。」

「ほぉ、何だその理由は?」

「なに、ただの『信頼』さ。
 俺は初めてあいつらを見た時から、どこかで一緒にいたいと思ったんだ。
 だが、それに気付かないふりをして、接する事を拒んだ。
 かつての、『自分が自分で無くなっていた時』のように。」

以前、今の自分になった時、プロジェクトCの成功作になった時、
自分が自分であり、自分ではなかったと感じていた。

それを変えてくれた母は、隊長は、姉はもういない。

だが今は、父が、妹達が、デュアリス達が、なのは達がいる。

1度母達が直してくれた道を、今度はなのは達と共に歩く。

それを新たな決意として胸に秘め、ラントナーと対峙する。


「お前も共に歩いてくれるか?
 エターナル?」

ヴィレイサーの不安の残る声に、エターナルはすぐさま答えた。

[リーダー、それは愚問です。
 私達が出会った時から、それは決まっているのですから。]

「ありがとう。 戦友(とも)よ。」

「フンッ!
 そんな甘い考えでは俺には勝てんぞ!」

「本当に俺が甘く、勝てないかどうか、試してみるか?」

「ぬかせぇっ!
 カタストロフィー・カノン!」

「ヘブンズゲート!」

ラントナーの収束砲は、あっさりと吸い込まれた。

「バ、バカな!?
 チッ、背後か!」

すぐに飛翔し、死角からの反撃をかわす。

「お前は仲間の大切さを知らない。
 それを悔いろ!」

ヴィレイサーは訴えるが、ラントナーは不敵な笑みを浮かべる。

「下らん! 仲間は利用するものだ!」

「違う! 仲間は信頼すべき大切な人だ!
 そこまで人を、仲間を侮辱するか・・・。
 なら俺が、お前の明日を奪う。」

「何を言っている?
 堕天使ぃぃぃ、貴様も仲間を利用しているにすぎん!」

「いいや、俺はお前とは違う!
 必ず仲間を信頼し続ける!
 お前に明日は来ない!」

[Load Cartridge.]

「ナイトメアゲート!」

ヘブンズゲートとは違うゲートが描かれ、開門した。


「す、吸い込まれる!?」

必死に耐えるが、ナイトメアゲートの力は想像以上だった。

「悪しき者を、ゲートの向こう側の亜空間に葬り去るんだよ。
 だが、そこに待つものは平和じゃない。
 ただの闇に染まった、お前の精神を喰らい尽くす地獄だ。
 悪夢の果てに待つ地獄に消えろ・・・。」

「ク、クオォォ!」

ラントナーが吸い込まれると、ゲートは閉じ、姿を消した。


次に彼が目を覚ました所は、何も無い空間だった。

上も下もなければ、右も左もない。

ただずっと白い世界が広がっていた。

闇というから、てっきり真っ暗な世界かと思っていたが、案外気楽になれた。

しばらく歩いていたラントナーの目の前に、人影が見えた。

「他に吸い込まれた者か?」

近づいて行くと、そこにいたのは自分だった。

「馬鹿な。 何故私がここにもう1人いる?」

その理由を探ろうとした刹那、目の前にいた自分の心臓部からいきなり手が出現した。

突如出現したその手には、真っ赤な鮮血に染まった心臓が握られていた。

それは握りつぶされ、周囲が赤く染まった。


「ウ、ウワアアァァァァァァァ!!!」

ラントナーは逃げ出し、途中で蹴躓く。

そこから身体を起こした時、再び自分が現れた。

「ま、また・・・。」

先程と違うのは、足元に亡者がいる事だった。

その亡者達はラントナーの四肢に、頭に齧り付いた。

頭は半分無くなり、生気の無い目がこちらをギョロリと見ていた。

四肢の方も肉が無くなり、血溜と骨だけになった。

その後、その亡者達は本当のラントナーに近づいてきた。

「や、止めろ、来るな、来ないでくれ!」

剣を振るって亡者を斬るが、首が無くなっただけで、動きは止まらなかった。

そして斬った頭のその顔は、自分の贄とした者の顔に変わった。

「ラントナー師団長・・・。」

「や、止めろ・・・。」

終には尻込みして動けなくなった。

そのラントナーに、亡者達が一斉に飛びついてきた。

「止めろおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

ラントナーの身体は亡者に食われ、骨さえ残らなかった。


だが、ヴィレイサーの『ナイトメアゲート』の地獄はこれからだった。

「お、俺は何故ここに!?
 先程亡者共に喰われたはず・・・。」

ラントナーの身体は再び構成され、真っ白な空間にいた。

背後に亡者が迫ってきている事など知らずに───

ヴィレイサーのナイトメアゲートとは、
敵を亜空間に葬り、何度も精神を食われる悪夢を見る技だ。

当人の精神が完全に破壊されるまで際限なく続く。

その後、精神破壊が終わると、その存在は抹消される。


「待たせたな、エクシーガ。」

中央で直立不動の姿勢をとっているエクシーガに、ヴィレイサーは声をかけた。

「まさか本当に来るとはね。
 正直驚いたわ。」

「今の俺は全力だからな。
 それでもお前に勝てるかどうか怪しいもんだ。」

「自信が無いの?
 『成功作』のくせして。」

「俺は『成功作』じゃない。 人間だ。」

「フッ。
 あの金髪の子、フェイトと同じ事を言うのね。」

エクシーガは背を向け、窓から大空を見詰めた。

「穢れた世界だな・・・。」

ヴィレイサーは静かに言う。

「えぇ。
 こうしている間にも、
 ヴェルファイアが好いた自然は、世界は、穢れ、そして消えていく。」

「その自然を残すためにこの世界を創り変える、か。」

「わかってくれるなら、何故協力してくれないの?
 ヴィレイサー・・・。
 私達は違いはあれど、同じ『被験者』なのだから。
 それに、『あなたには私の遺伝子』が、『私にはあなたの遺伝子』があるのよ。」

振り向いたエクシーガの瞳には涙が滲んでいた。

「俺達は目的は同じでも、それまでの過程が違うんだ。
 お前は、世界を創り変えるべきだと考えている。
 だが俺達はこの世界はまだやり直せると信じている。
 だから俺とお前は戦うんだ。」

「・・・。
 そうかもしれないわね。
 なら、私は私の信念を貫く。」

エクシーガが長剣を抜刀する。

「すまない。
 俺にはお前を救う方法がわからない。
 戦ってでしか、お前を止められないんだ・・・。」

言いながら、ヴィレイサーもエターナルを引き抜く。

互いにわかっていた。

自分達はわかり合えるのだと───

初めて会ったあの時から、心の奥底でそんな感じがしていた。

そして、自分の心に揺らぎが生じてきた事にも気付いていた。

エクシーガは、自身の行う事への迷い。

ヴィレイサーは、エクシーガと戦う事に対する迷い。

だがそれでも、互いに戦う以外の道は無かった。

「このままでは世界は穢れ、いずれ消えると私は確信している!」

1度決めた事だから。 自分を信じてくれた仲間がいるから。

「俺は世界は変えられると信じている!」

違えた道を歩くから。 相容れぬから。

「「勝負!!」」

今、2人だけの最後の戦いが───
相容れたはずであろう悲しき戦いが始まる───


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あきゅろす。
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