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小説
第14話 「仲間と共に・・・」
魔法少女リリカルなのはWars
第14話 「仲間と共に・・・」

エクシーガに敗れた次の日。

ヴィレイサーは全員に自分の出自を明かした。


「プロジェクトCは、エクシーガの言っていた通り、
 元となる人間に強者の遺伝子を組み込み、最強の人間兵器を造る計画だ。」

「『成功作』と『失敗作』の違いは?」

「恐らく、既定値に力、もしくは組み込む遺伝子の数が達さなかった奴の事だろう。」

「それだけで!?」

「「それだけ」か。
 だが、まず区切りをつける事がおかしいんだ。
 俺達は皆、被害者なんだ。」


「ヴィレイサーはどうやって研究所から脱したのだ?」

「7年前まで所属していた部隊にだ。
 その部隊は、『戦闘機人』を造っている施設を中心に調査と破壊をしていたから。
 偶然助けられたんだ。」

それ以降もいろいろと話したが、今は休息の為、全員が休んでいた。


数時間後、フェイトはヴィレイサーの事を探していた。

何かあったらどうしよう・・・。 そんな胸騒ぎがしたからだ。

フェイト自身も、自分の出自を話すのはとても怖かった。

もしヴィレイサーが悩んでいたら、自分が彼を助けるべきだ。

そう考え、艦内をしばらく探すと、大きな窓のある所にいた。

ヴィレイサーはただ静かに空を見ていたが、
その瞳からはどんな感情を持っているかはわからなかった。

それとも、自分と彼の距離が遠すぎるからだろうか?

答えは出て来なかったが、とりあえず話し掛けてみる事にした。


「ヴィレイサー。」

「フェイト・・・。」

「休んで無くていいの?」

それを聞いたヴィレイサーは溜息をついた。

「どいつもこいつも同じ事を言うんだな。」

「そりゃあ怪我人だもの。
 そういえば、ここに来るまでに誰かと話した?」

「いや。 休んでからはお前が最初だ。
 しかし何故そんな事を聞く?」

「えっ!? な、何でかな?」

「知るか。」

理由はわからないが、ヴィレイサーがまだ誰とも会話していない事を知り、
フェイトは心のどこかで安堵していた。


「ねぇ、どうして今まで私達と必要以上に関わらなかったの?」

「俺の出生について知り、遠ざかるのが怖かったからだ。
 人は自分と違うモノに恐怖し、蔑み、侮蔑する。
 俺は他の『まともな人間』をそういう風にしか見れないんだ。
 だが、俺を助けてくれた母達は違う。
 俺の出生について知った上で、俺を引き取ってくれた。
 俺は元々1人でいる事が多かったし、
 それ以前から人間不信だったから、最初は大して信じてはいなかったがな。」

「皆に自分の事を教えるのはやっぱり怖いよね。
 私もそうだった。」

フェイトは自分という存在が生み出された経緯、
それから後の事を順々に話していった。

母親への強い想い。 なのはとの出会いと戦い。

真実をつきつけられた時の自分と、その気持ち。

そして、最愛の母との離別。


「でも、絶対にわかってくれない人ばかりじゃないんだよね。」

「アイツにも、そんな仲間がいたのかもな。」

「誰?」

「エクシーガだよ。
 アイツは俺達に堂々と自分の事を言った。
 なら、今までで受け入れてくれた奴がいるはずだ。」

「ヴァンガードかな?」

「いや。 だとしたら裏切りなど認めないだろう。」

そう。 今ヴァンガードはシグナムからの志願により、一緒に行動している。

(やはり、ヴェルファイアか。
 あの人が亡くなったから、アイツは1人で・・・。)

「ヴィレイサー、心当たりでもあるの?」

物思いに耽っていた時、フェイトがいきなり目の前に顔を出した。

「っ!
 い、いや、別に。」

「少し顔が赤いよ? 熱でもあるの?」

「なんでもない、気にするな。」

「そう?」

(何故フェイトを見て慌てる?
 まさかとは思うが、俺はフェイトの事を想っているというのか?
 さすがにそれは無いか。
 それに、今は無関係な感情だ。)


「気になるの? エクシーガの事。」

「少しだけだ。 俺もアイツも被害者だからな。」

「そっか。
 でも、ヴィレイサー。 相手だけじゃなくて、自分の事もしっかり支えなきゃ。」

「俺は常に1人だ。
 デュアリスにもリュウビにも、いつまでも支えてもらう訳にはいかない。
 だから俺は1人を選ぶ。 いつも、いつでもその選択をし続ける。」

「そんな事言っちゃダメだよ。」

フェイトが悲しい目をしているヴィレイサーを静かに抱きしめた。

「フェイト!? 何を・・・。」

ヴィレイサーは慌てて離れようとするが、思いの外フェイトの力は強かった。

「常に1人だなんて、悲しい事言わないで。
 あなたには、『私』が、ううん。
 『私たち』がついてるから。」

「それは、互いに造られた事による『同情』か?
 それとも、ただの『憐れみ』か?」

ヴィレイサーは冷たく言い放つ。

「どっちも違うよ。
 『同情』や『憐れみ』なんて下らない感情じゃない。
 『仲間』だからだよ。」

「そんな理由だけで・・・。」

「理由だけじゃない。
 『仲間』だからっていう理由と、その後の『結果』も信じてる。」

「『結果』?」

「うん。
 少なくとも私はヴィレイサーを『仲間』という理由で信じてる。
 その『結果』は、互いに強く信頼できるようになるんだよ。」

「そんなものは所詮綺麗事だ。」

「だったら、賭けてみる?」

フェイトが意地の悪い笑みを見せる。

「私はとことんヴィレイサーを『仲間』として信じ抜く。
 いつも、いつまでも。
 あなたは優しいから、必ずそれに答えてくれる。」

「その『結果』が、信頼を生む。
 そういう事か・・・。」

「うん。 どう?
 私とヴィレイサー、たった2人でも、一緒に頑張れそう?」

「さぁな。
 だが、あまり信じすぎるな。
 裏切られた時、一番辛いのはお前だぞ。」

「それは心配してくれてるの?」

「違う。 警告だ。」

ヴィレイサーの冷淡な言葉を聞いて、フェイトは笑った。

「フフッ。
 それは、嘘だね。 ヴィレイサー、照れ隠ししなくていいんだよ。」

「なっ!? 違・・・。」

「ね?」

抱きついていた体を少し離し、人差し指をヴィレイサーの口の前に立てる。


その時、なのはとはやてが現れた。

「フェイトちゃん?
 何、やってるの?」

「なんや、フェイトちゃん。 抱きつくなんて大胆やな。」

「な、なのは!? はやて!?」

「また鬱陶しいのが増えた・・・。」

「そ、そっか・・・。
 フェイトちゃん、ヴィレくんの事が好きだったんだ・・・。」

「ち、違うの、なのは!
 これは、ただヴィレイサーを慰めてただけで、別に他意は無いの!」

「せやけど、好きでもない異性を慰めんのに、普通抱きつくか?」

「は、はやてまで・・・。」

「どうでもいいからいい加減離れろ。」

「あ、う、うん。」

(なんか疲れただけな気がするな・・・。)

フェイトから少し距離を取り、そんな事を思う。

「あぁ、ヴィレイサー。
 ここにいたの。 って、なんか変な空気ね。」

「リュウビ。
 空気の事は知らん。 俺が来た時、既にこうだった。」

((ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?))

なのはとフェイトが心の中で叫ぶ。


「で? 何か用か?」

「特訓に付き合ってほしいのよ。」

「はて?
 ヴィータとザフィーラの2人を相手にしていたんじゃなかったのか?」

「A・P・Wよ。
 あれは未だにヴィレイサーしか相手にならないから。」

「まさかとは思うが、2人に使ってないだろうな?」

「も、もちろん・・・。」

「だったら何故目を逸らす?」

「ごめんなさい。 使いました。」

「まったく。
 わかった。 やってやる。
 俺もモード3の各種と、時空技を使いこなしたいからな。」

「ダ・メ・で・す!」

そこへシャマルまで現れた。

「ちゃんと休息は取る。
 何か問題があればちゃんとお前に言うさ。」

「うぅ〜・・・。」


「じゃあ、早速A・P・Wを使え。」

「了解。 イーブン・クレイドル。」

[Avalanche Phantom Weapon System Ignition.]

リュウビのIS、A・P・Wが発動され、訓練スペースに数多の刀剣類が出現する。


「多っ!?」

「また増やしたのか・・・。」

クロノが驚く中、デュアリスが呆れる。

「う、嘘・・・。」

「なにこの数・・・。」

「くっ、我々だけでは足りんというのか、リュウビ・・・。」

「なんか自信を無くすよな、あたしら・・・。」

ヴィータとザフィーラが隅っこでいじけていた。


「お前、かなり本気でやっただろ?」

「いつでも手は抜かないわ。」

ヴィレイサーが呆れる中、リュウビは傍にある剣を持つ。

「それは、仲間だろうと怪我人だろうとね!」

「エターナル、モード3−ギア1。」

[Scissors Mode.]

右手に巨大な鋏型の武器が装備される。

「行くぞ!」

「ハァーッ!」

刃が何度も噛み合い、離れ、再びぶつかり合う。

「閉じろ!」

[Close.]

鋏が閉じ、大剣の剣先のようになる。

再び剣がぶつかり合った時、リュウビの剣が砕け散った。

だが瞬時に別の剣を掴み、相見える。

「くっ! さすがに数が多いな。」

「当然!」


「す、すごい・・・。」

「2人とも速いね。」


「百裂剣(ひゃくれつけん)!」

数多の剣で素早く斬りつけ、砕けたら別の剣を使い、彼女の最後の一撃が決まった。

「うあぁ!?」

「流星剣舞(りゅうせいけんぶ)!」

怯んだヴィレイサーに、数多の刀剣が降り注ぐ。

「チッ!
 転移蒼破斬(てんいそうはざん)!」

ヴィレイサーの姿が歪み、消える。


「消えた!?」

「ヴィレイサーの時空技の1つだ。」


「そこぉーっ!」

「ベルセルクソード!」

次の移動場所を読んでか、リュウビが動くが、
いつの間にかモード3−ギア2のブレイカーに切り替えたヴィレイサーの技に吹き飛ぶ。

「フゥー・・・。
 本気の技、いくよ? ヴィレイサー。」

「来い。 リュウビ。」


「イーブン・クレイドル!」

[Load Cartridge.]

カートリッジを数発読み込み、一気に肉薄する。

「閃け、鮮烈なる刃。
 無辺の闇を鋭く切り裂き、仇なす者を微塵に砕く。
 漸毅狼影陣(ざんこうろうえいじん)!」

目にも留まらぬ速さで幾つもの閃光が迸った。


「ちょっと、生きてるでしょうね?」

煙が巻き起こってる中に、リュウビが話しかける。

「当たり前、だ。」

大剣を振るい、煙を吹き飛ばす。

「今度はこっちからも行くぞ。
 エターナル!」

[Load Cartridge. Arrow Mode.]

最後のモード、アローモードに切り替え、リュウビ目掛けて引き金を引く。

「舞い散れ、星の輝き!」

[Astral Rain.]

ジャッジメントのように不規則に星芒が舞い落ちる。

「まだまだぁ!」

「そいつぁ、こっちの台詞だ!」

「ストーーーーーーーーップ!!!!」

いきなりシャマルのクラールヴィントが2人を捕らえた。

「ひゃん!?」

「おわっ!?」

「ヴィレイサー、もう規定の時間を過ぎてるわよ!」

「調子いいから別にいいだろ。」

「よくありません!」

「ケチ。」

「うるさいですよ。」

「あんまり怒るとシワが寄って大変だぞ〜。」

「だ〜れ〜の〜・・・。」

シャマルの額に青筋が浮かぶ。


「ヴィレイサー、何怒らせてんのよ。」

「相手はどうせシャマルだ。
 大した事は出来ん。」

言いながら、ヴィレイサーはアンチグラビティを使って抜け出す。


「誰のせいだと思ってるんですか!
 こうなったら、なのはちゃん!」

「は、はい!」

「ヴィレイサーを全力で撃っちゃいなさい!」

「ふぇー!? で、でも・・・。」


「ふん。
 なのはに頼るか。 なのはの方も臆病風に吹かれたか?」

ヴィレイサーの不敵な笑みに、なのはも怒りだす。


「いいよ!
 やったげるよ!」

レイジングハートを構え、チャージを開始する。

どうやらかなり本気のようだ。

「ちょっ!
 ヴィレイサー、なのはまで煽らないでよ!
 なのはも止めて。 ヴィレイサーは怪我してるんだし・・・。」

「ふ〜ん。
 そっか。 フェイトちゃんはヴィレくんの事が好きだから止めるんだ。」

なのはの目が意地悪そうに輝く。

「そうなのか? テスタロッサ。」

ヴァンガードと共に特訓をしていたシグナムまでもが聞いてきた。

「違います!
 決してそんな事ありません!」

「そんなに否定すると、ヴィレイサー、悲しむよ?」

デュアリスがヴィレイサーを見上げる。

だが、彼はまったく話を聞いていなかった。


「どうした? 来ないのか、臆病者。」

「ディバインバスター!!!!」

言うが早いか、桃色の光芒が駆ける。


「よし。
 これであの技の試しが出来る。
 ヘブンズ・ゲート!」

ヴィレイサーが太刀型に切り替えたエターナルで空間に円を描く。

そして、そこに黄金の円の形をしたゲートが現れ、その口を開いた。

すると、なのはが放った砲撃はそこに吸い込まれた。


「嘘ぉっ!?」

「死角に配置。 開門。」

[Open.]

その後、なのはの背後に同じゲートが現れ、
そこから放った砲撃が出てきた。

「ふぇ!?」

「上手くいったな。」

ドーン

と爆発が起きた。

「さて、なのはに怒られる前に、病室に戻るか。
 エターナル、明日はナイトメアの方をやるぞ。」

[Yes,Leader.]

ヴィレイサーはなのはの安否を確認せずに部屋を出て行った。


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