[携帯モード] [URL送信]

小説
第12話 「交わらぬ者」
魔法少女リリカルなのはWars
第12話 「交わらぬ者」

レーベを出て、既に5日が経過していた。


フェイトはすぐにヴィレイサーに資料を渡した。

もちろん表紙以外は読んでいない。

ヴィレイサーの方も詮索せず、「ありがとう」とだけ言った。


リュウビが一番大変だったが、今は普段の明るさを取り戻していた。

現在はシグナムやヴィータとしょっちゅう訓練をしている。

デュアリスはなのはと一緒に砲撃の練習を懸命にしていた。


創世主軍の本拠地を早く見つけなければならないのだが、

その手掛かりは一切ないので、かなり大変だ。


そんな中、ヴィレイサーはなのは達と交流せず、いつも1人でいた。

元々1人でいる事を好むので、誰も無理に彼とは話そうとはしなかった。

たった1人を除いては。


「ヴィレくん、一緒に訓練しようよ。」

「またか。 2時間前にやっただろうが。」

なのはの言葉に、ヴィレイサーは溜息をついた。

「なのは、ヴィレイサーも疲れてるだろうし、私がやるよ。」

フェイトが間に入り、2人に言う。

このように、なのはがヴィレイサーに話しかけては、
それをフェイトが仲介するというパターンがかなり増えていた。

「だとよ。
 よかったな、なのは。」

「むぅ・・・。」

ヴィレイサーはなのはに向けて手を振り、なのはは残念そうに頬を膨らませた。

(一々鬱陶しい奴だ。)

なのはを一瞥して、ヴィレイサーは食堂を出た。


部屋に戻り、電気を点けずにベッドへと倒れ込む。

「母さん・・・。」

呟いたその言葉に、もちろん返事など無い。

闇へと引きずり込まれながら、ヴィレイサーは夢を見た。


『ヴィレイサー。
 あなたの名前はヴィレイサー・セウリオンよ。』

『はい、クイントさん。』

『堅いねぇ。
 敬語は止めて、私の事は『母さん』で構わないよ。
 私達は、『家族』なんだから。』


『ヴィレ兄、遊ぼうー。』

『スバル、兄さんの邪魔しちゃダメよ。』

『今は空いてるからいいよ。
 スバル、ギンガも何して遊ぶ?』

『えぇっとねぇ。』


『ヴィレイサー、今日からお前は我々の部隊に入れ。
 ナカジマとアルピーノに甘やかされるなよ?』

『はい、ゼスト隊長。』


『クイントが母親ねぇ。』

『私が助けだしたんだからいいでしょ。』

『以前にも女の子を2人引き取ったのに。』

『スバルが「お兄ちゃん」が欲しいって言うから。』

『よし。
 クイントが母親なら、私はお姉さんと慕いなさい。』

『いきなりですね。』

『いいじゃない。
 そうだ、その内私の娘に会わせてあげる。』


『次の戦闘機人の基地を叩く任務には、お前は連れて行けない。』

『しかし!』

『強くなれ、ヴィレイサー。』


『お母さん・・・。
 お母さん!』

『どうして? どうして母さんが・・・。』

『クイント・・・。』

『誰も、戻っては来ないのか・・・。
 俺はもう、1人なのか・・・。』


『ヴィレイサー、本当に地球に帰るのか?』

『向こうにも家族がいるから。』

『ヴィレ兄、また会える?』

『もちろんだよ、スバル、ギンガ。』


どれくらい眠っていただろうか。

ぼんやりと目を開け、体を起こす。

(久しぶりに皆の夢を見たな。)

頭を掻き、かつての部隊の記憶を思い起こす。

訓練に厳しくも充実した日々。

仲の良い部隊。

強く、仲間思いの隊長。

優しく家族思いの母親。

常に明るい姉。

毎日が楽しかった。

だが、そんな日々はもう2度とないだろう。

(なのは達と関わってもな。)

部屋を出た時、艦内にアラートが響き渡った。


「敵は例の3人だ。
 出撃は、ヴィレイサーと・・・。」

「私も出る!」

なのはが勢いよく挙手をする。

「ヴィレイサー、異論は?」

「無い。」

「わかった。
 それじゃあ、なのはとヴィレイサーは迎撃を。
 デュアリスとヴィータはアースラの護衛を頼む。」

「「「「了解。」」」」


「なのは、無理はするなよ。」

「心配してくれてありがとう、ヴィレくん。」

「心配じゃない。 警告だ。」

冷淡に返し、先に出撃する。

「本心?」

「さぁ?」

後ろに控えているデュアリスに聞くが、彼も肩をすくめただけだった。

「じゃあ、素直じゃないだけって考えておこう。」

そう言って、なのはもヴィレイサーの後ろへと続く。

「ポジティブだね。
 残念だけど、ヴィレイサーのあの言葉は本心だよ。」

「言ってやれよ。」

ヴィータが嘆息する。

「言ったらこの後がつまらないだろ?
 んじゃ、俺も出るか。」

デュアリスも飛翔し、艦を守るような位置につく。

「若干だけど、デュアリスの考えには同感だな。」

ヴィータが出撃し、再び大空で戦いが開始させる。


「墜ちろぉぉぉぉぉぉ!!!」

「っ!」

「チッ!」

カラミティのいきなりの砲撃を、2人はなんとかかわす。

その隙に後ろの回り込んだフォビドゥンとレイダーが、立て続けに攻撃してきた。

(なのはの奴、足手纏いにはならないだろうが、
 こいつらとの戦闘は明らかに不利だな。)

ヴィレイサーはエターナルをモード2─ギア1の薙刀型に切り替え、応戦する。

[Raiden Charge.]

雷属性を付与し、薙刀を下から上へ掬い上げるようにして振るう。

「紫光雷牙閃(しこうらいがせん)!」

強い輝きを纏いながら、雷の奔流が直進し、レイダーを捉える。

「クッ! シールド!」

レイダーが鉄球を繋いだ鎖を振り回し、攻撃を受け止めた。


「スキュラ!」

「ディバインバスター!」

なのはとカラミティの砲撃がぶつかり合い、爆発が起きる。


「オルトロス・ブラスト!」

「ラケーテンハンマー!」

デュアリスとヴィータは、ダガーを次々に破壊していく。

だが彼らの背後では、既に次の相手が控えていた。


Side:ヴァンガード

「エクシーガ、予定ポイントに到達したよ。」

[そう。
 なら、あなたは例の騎士、シグナムとだけ戦いなさい。
 他は第4師団がやるでしょうから。]

「了解。
 そういえば、ヴィレイサーって奴の資料は読んだのか?」

[えぇ。
 特に気になる点は無かったわ。
 それじゃあヴァンガード、『さようなら』。]

エクシーガとの通信が終わる。

「『さようなら』か。
 確かにこれで最後だな、創世主軍にいるのは。
 あの人が、シグナムが俺の想像通りの人ならの話だけど。」

俺は別々の所に待機している第4師団を一瞥しながら言った。

「烈火の将、シグナム。
 俺がずっと憧れてきた騎士だ。
 ここで相見える事が出来れば、本望だが果たしてどうかな?」

背中にある大剣の刀身が、氷のように透き通っていた。

Side:ヴァンガード 了


「アクセル・・・」

「フレス・・・」

「シュート!」

「ベルグ!」

なのははカラミティとフォビドゥンの2人を相手にしており、

苦戦を強いられ、中々勝機を見いだせずにいた。

(このままじゃ・・・。)

なのはの焦りを見透かしかのように、カラミティがスキュラを放った。

「っ!」

「させるか! IS、SEED!」

ヴィレイサーがSEEDを発現させ、間一髪で砲撃をシールドで受け止める。


「うぅぉぉぉぉぉーーーー!!!」

そのままカラミティに押し返し、胸部のスキュラを破壊する。

「ヴィレくん!」

「大丈夫だ。」

「でやぁぁぁーーー!!」

「うらぁぁぁぁーーー!!!」

レイダーが鉄球を、フォビドゥンが鎌を駆使して接近戦へと突入する。

「黎明へと誘いし破邪の光。
 聖なる槍となりて、敵を貫け!
 ホーリーランス!」

ヴィレイサーは瞬時に離れ、上級術を放つ。

だが、前回の戦闘データを活用しているため、中々決定打を撃ちこめずにいた。


「ディバインバスター!」

「ゲシュマイディッヒ・パンツァー!」

その時、なのはが放ったディバインバスターが、
ゲシュマイディッヒ・パンツァーが加えられたにも関わらず、
大きく逸れずにただ弾いたように見えた。

「しまった。 また時間切れ・・・。」

「薬の副作用ってウザイ!」

「また苦しい思いをするよかマシだ。
 退くぞ!」


「薬の副作用だと?
 まさか、戦闘特化にさせる為に、違法薬物を使用しているのか!?
 ふざけやっがて・・・。 人間をなんだと思ってやがる!」

ヴィレイサーは敵の行為に、憤慨する。

しかし、アースラからの通信に、冷静に対応する。

「なんだ?」

相手はリュウビだった。

[アースラに接近中の敵部隊がいるの。
 今、シグナムとフェイトが出撃したわ。
 私もすぐに出るから。]

「了解。
 俺も加勢する。
 なのは、お前は艦に戻って休め。」

「でも・・・。」

「いいな?」

食い下がるなのはに、ヴィレイサーは強い口調で聞いた。

「う、うん。
 わかった。」

「そうだ。 それでいい。」

なのはに背を向け、急いで向かおうとしたが、ヴィレイサーはポツリと言った。

「いつも強く言って悪いな。」

「え?」

なのはが聞き返す暇も無く、ヴィレイサーは飛び去った。


[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!