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小説
第11話 「果てなき空へ」
魔法少女リリカルなのはWars
第11話 「果てなき空へ」

レーベの上空ではフェイトを庇ったヴィレイサーが、
レイダーとフォビドゥン、2人と対峙していた。

「堕天使・・・。 いっつも、いっつも!」

「フーン・・・。 今度はもう少し楽しめる?」

レイダーは怒りに身を任せ、フォビドゥンは楽しみに笑っていた。

「フェイトだっけか? お前はここから離脱してガジェットと無人兵器を頼む。」

「でも、そしたらヴィレイサーが不利に・・・。」

「俺はこの戦いでは負けない。 それを約束しよう。」

「・・・。 わかった。 気を付けて。」

「フン。 言われなくても。」

フェイトは即座に離脱する。

「逃げる? ムカツク・・・。 フレスベルグ!」

フォビドゥンが砲撃しようとするが、なのはがそれを阻止するために、
ディバインバスターを撃った。

「チッ。 ゲシュマイディッヒ・パンツァー!」

両サイドのシールドを前面に展開し、なのはの砲撃の軌道を逸らした。

「それが噂のゲシュマイディッヒ・パンツァーか。
 中々のもんだな。」

「堕天使、ウザイ・・・。」

フォビドゥンが静かに、怒りのこもった瞳で睨み付ける。

そして、大鎌のニーズヘグを構えて、一気に肉薄する。

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!」

「はんっ! そんなもんに!」

「ミョルニル!」

ヴィレイサーはそれを容易くよけ、レイダーの鉄球をいなす。

「エターナル、モード1―ギア2!」

[Ambidextrous Halberd Mode.]

ヴィレイサーは太刀と鞘を連結させ、両刃の双頭刃を象る。

「せやぁーっ!」

レイダーに振り下ろし、さらにそこから突きだすようにしてレイダーを狙う。

「このっ!」

それを右手の攻防一対のマシンガンで防ぐ。

「アルムフォイヤー!」

背後からフォビドゥンが両手の甲にあるガトリングをヴィレイサーに浴びせるが、
彼は見えない障壁によって守られた。

「何っ!?」

[Are You OK?]

「助かる。 エターナル。」

愛機の咄嗟の判断に感謝の言葉を述べつつ、振り返りざまに大きく剣を振るう。

「惜しい・・・。 もう少し長ければ殺せていたんだがな。」

ヴィレイサーは静かに言った。

そのあまりの冷徹さに、レイダーとフォビドゥンはゾッとした。

堕天使の名は、本当だと思い知ったからだ。


Side:エクシーガ

「どう? レーベの方は。」

エクシーガが第1師団の師団長、ラントナーに聞いた。

「あなたが訓練した『災厄』の3人はちゃんとやってるの?」

「どうやら、管理局の魔導師と、堕天使のせいでどうにも中々・・・。」

「堕天使・・・。 まだ顔を見た事は無いけど、見れる?」

「えぇ。 コイツです。」

モニターに写し出されたのは、レイダーとフォビドゥンの2人を相手に、
善戦をしているヴィレイサーの姿だった。

それを見たエクシーガは驚愕した。

(襲牙!? あなたが堕天使だったなんて・・・。)

最初は顔が翳っていたが、次に顔をあげた時には笑っていた。

(こんな運命になるとはね。
 でも、私は絶対に負けない。
 ヴェルファイアを殺したこの世界を、私は必ず壊してみせる。)

「あとは任せるわ。 先に、空の「アメノキザハシ」に行ってるわ。」

「わかりました。」

エクシーガは艦を下りて、戦線を離脱した。


やがて、大きな森林に入り、創世の書を開いた。

「ヴァンガード、訓練を中断して出てきなさい。」

その言葉に、創世の書が輝き、ヴァンガードが姿を現した。

「何か用? エクシーガ。」

ヴァンガードは創世の書で生成した訓練スペースにいたのだ。

元々は分離して使用していたのだが、
創世の書の内部に『収容』する事ができる為、この形となった。

「レーベはもう諦めて、「アメノキザハシ」に上がるわ。
 その前に、ヴィレイサー・セウリオンについての情報をできる限り集めてほしいの。
 いいかしら?」

「了解。」

ヴァンガードはすぐに大空へと羽ばたき、任務に向かった。


「私のような『失敗作』が、英雄みたいな彼を倒せるのかしら。」

珍しく弱気な面を見せるも、それはすぐに消えた。

「倒してみせる。 必ず!」

Side:エクシーガ 了


そしてレーベでは、レイダーとフォビドゥンがヴィレイサー相手に苦戦をしていた。

「コイツ・・・。 どうして!」

「いい加減、ウザイ!」

2人は時間差やトリッキーな戦い方をするも、それは通用しなかった。

ヴィレイサーは今まで、1対1で戦闘した事が無かった。

必ず2対1、もしくは3対1だったため、さして苦労していないのだ。

かといって、確実に相手を沈めている訳でもなかった。

「チッ。
 2機ともやるなぁ!」

[まったく隙を見せませんね。]

「しゃあねぇー、レイダーを優先するか。
 炎熱加速、ヒエン・チャージ!」

[Hien Charge.]

エターナルが炎を纏う。

「紅雅曝炎舞(こうがばくえんぶ)!」

ヴィレイサーが双頭刃を華麗に回転させる。


[フォビドゥン、隙が出来たら撃ちな。]

[もちろん。]

レイダーはヴィレイサーの技をかわしつつ、適度に距離を取る。

そして、ヴィレイサーはそれが追える距離であるため、再びレイダーへと迫る。

そのため、フォビドゥンから必然的に距離が離れて行く。


(やはりフォビドゥンは俺を追ってこないか。)

ヴィレイサーはフォビドゥンが追撃してこない事をなんとはなしに予測していた。

万が一いきなり接近戦を仕掛けようとも、それの対策はしてある。


「これぐらい離れればいいわね・・・。
 堕天使、殺してやる・・・。」

フォビドゥンは冷酷な笑みを浮かべ、砲撃のチャージを開始する。

「消えろっ!
 フレスベルグ!」

ゲシュマイディッヒ・パンツァーを利用して放った砲撃は、
大きく左に弧を描きながらヴィレイサーを捉えた。

だが、それはあっさりとかわされた。

そして、反撃に転じたヴィレイサーの技が迫ってきた。

「クゥッ!?」

「残念だったな。 俺を殺せなくて。」

「くそっ! どうしてっ!」

「剣、鏡の如く磨かば、これすなわち、敵を心に映す。」

ヴィレイサーはエターナルの双頭刃を見せる。

その刀身には、レイダーの姿が映っていた。

「これはゼスト隊長から教わった口伝ではあるが、結構役に立ってるんだぜ。」

つまり、ヴィレイサーはレイダーと戦闘中だったにも関わらず、
鏡のように磨かれた刀身で、常にフォビドゥンの動きを見ていたのだ。

「お前、お前、お前ぇぇぇっ!!!」

フォビドゥンはフレスベルグとエクツォーンを怒り任せに撃ちまくる。

手玉に取られたと思ったのだろうが、ヴィレイサーはそんな気はなかった。

「ウォワッ!?」

しかし、怒り任せとは言っても、狙いがかなり良い。

的確にヴィレイサーの頭や心臓目掛けて撃ってくる。

「ミョルニル!」

そこへ、レイダーも加わる。

それでも、先程フェイトと交わした『約束』を守るために、ヴィレイサーは戦う。


Side:カラミティ

「やるなぁ、テメェ!」

互いの砲撃のぶつかり合いで起こった爆発で吹き飛んだ俺は体を起こす。

相手を見ると、向こうも丁度起き上がる所だった。

「この野郎。」

デュアリスは毒づく。

「こんなに楽しく戦ったのは久しぶりだぜ。」

その時、ふとレイダーとフォビドゥンの方を見ると、
2人は誰かに苦戦を強いられていたのが目に入った。

「なんだ、ありゃ?」

「あれは・・・ヴィレイサー!?」

デュアリスの言葉を聞き逃さなかった。

「アイツが・・・。
 おもしろそうだ! 先にアイツをぶっ殺す!」

俺はすぐに駆け出し、肩部の砲、シュラークを放った。

だが、それは当たらず、味方の為にもならなかった。

「ウェヘヘヘヘ!
 テメェ! もっと俺を楽しませろぉぉぉぉぉーーー!!!」

俺は戦争への楽しみを思って笑いながら、堕天使へと飛翔した。

Side:カラミティ 了


「なんなんだよ! あの砲撃型は!」

ヴィレイサーは毒づきながらも反撃の糸口を探す。

だが、さすがに3人の猛者を相手にするには、荷が勝ち過ぎていた。

そこで、SEEDを即座に発現させる。

「チッ、距離を取って反撃するか。
 空間翔転移(くうかんしょうてんい)!」

ヴィレイサーの姿がぼやけ、終いにはその場から消えていた。

「っ!? どこだっ!」

その時、フォビドゥンの頭上の空間が歪み、ヴィレイサーが姿を現した。

「覚悟っ!」

「っ!?」

反応が遅れたフォビドゥンだったが、既の所でそれをかわす。

「シュラーク!」

「ツォーン!」

カラミティとレイダーが離す為に砲撃してくる。

だが、おもむろに攻撃を止める。

「何だ?」

「グゥッ! 時間切れかよ!」

「チクショーッ!」

3人は苦しみに耐えながら、戦闘空域を離脱した。

「『時間切れ』だと?
 どういう事だ・・・。」

その後、主力を欠いた創世主軍は一時的に部隊を撤退させた。


今は各々自由行動をしていた。

ヴィレイサーはクロノと共に、ヒズミ代表の所へと向かっていた。

部屋に到着すると、中には代表以外にデュアリスとリュウビがいた。


「このまま戦争行為を続ければ、レーベは間違いなく滅びるでしょう。
 そこで、次の戦いが始まる前に、創世主軍の本拠地へと向かってほしいのです。」

「しかし、それではレーベが。」

クロノの反論に、ヒズミ代表は笑って答えた。

「なに、ここに残るべきは老いぼれた者だけで構わんのです。」

「っ!」

それが何を意味するか、クロノはすぐに察し、リュウビを見た。

だが、彼女は平然としていた。
否、懸命に平然を装っているのだ。

「ヒズミ代表、移動手段はどうするんですか?」

「クロノ提督、現在こちらで修理中のアースラはどうでしょう?」

「アースラですか。
 そうですね。 あれなら適任かと思います。」

「では、メカニックに伝えてきます。」

「僕も行こう。」
デュアリスはクロノと共に部屋を後にした。

「ヴィレイサー。
 お前の出自について、なのは達には伝えてないのか?」

「えぇ、まだ。」

「そうか。
 それについての資料がもう少しで纏まる。
 彼女達経由で渡してもよいか?」

「もちろん。
 俺は敵が再度進行してきた時に、必ず出撃します。
 では、これで。」

ヴィレイサーは親子を一室に残し、部屋を出た。

これが、2人の最期になるかもしれないから。


翌日、これからの流れを聞いたなのは達は、快く了承した。

急いで進められる作業中、予想した面倒な事態が発生した。

昨日の3人の再度レーベへの進行だ。

幸いなことに、その3機以外はほぼ壊滅に追いやった為、出撃してはこなかった。


「ヴィレイサー・セウリオン。
 標的(ターゲット)の排除を開始する。」

青く澄んだ果てしなき大空へと羽ばたいたヴィレイサーを、なのはは静かに見送った。


「今日はテメェ1人か!」

「今度こそ!」

「墜とす!」

カラミティ、フォビドゥン、レイダーが一斉に攻撃を開始する。

「空間翔転移!」

回避と反撃の為に、空間技を使って敵の背後へと移動する。

「トーデス・ブロック。」

「アルムフォイヤー。」

「ミョルニル。」

3人は昨日以上の反応速度とスピード、そしてパワーを見せつける。


「昨日より強い・・・?」

[昨日の戦闘データを反映したのでしょう。]

エターナルが冷静に分析する。

「耐えられるか?
 急いでくれよ、皆。」

アースラの発信シークエンスは既に進んでいた。


「リュウビ、常に心に光を持つ事を忘れるなよ。」

「はい。 お父様。」

リュウビとヒズミ代表はアースラの入り口で話していた。

「フェイト執務官、この資料をヴィレイサーに。」

「これは?」

「彼の出自の資料です。」

「ヴィレイサーの!? 『プロジェクトカオス』?」

その表紙には、『Project CHAOS 遺伝子操作による人間兵器作製』と書かれていた。

「ヴィレイサーが、『人間兵器』?」

「さぁ、果てなき空へと上がり、平和を頼みましたぞ。」

それを最期に、入り口の扉は閉まった。

「お父様・・・。
 お父様!」

リュウビは涙を堪えきれず、何度も扉を叩きながら唯一の親を叫んだ。


「あ?」

「なに? あれは?」

戦闘中、カラミティとレイダーが1つの艦に目を向けた。

「来た。
 こっからが勝負だ!」

[Yes Leader.]

レールの上を走るアースラへと踵を返し、急いで飛行する。

「待ちやがれ!」

「墜ちろぉぉぉぉぉーーーーーっ!!!」

3人も砲撃を放ちながら、ヴィレイサーとアースラを追う。


「よし、とどいた!」

ヴィレイサーはアースラに伸ばした手がなんとかとどき、追ってくる3人の方を向く。

「喰らえ!
 フォース・バレット!」

左右に2つずつ展開した砲身で、海面目掛けて発射した。

爆発が起こり、敵は足を止めらざるを得なくなった。

そして、その隙にアースラは大空へと飛翔した。

その後、レーベは自国を焼き払い、焦土と化した。
国を守るために、自身の命と引き換えに・・・。


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あきゅろす。
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