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シリアス・VG前提



ぽつ、と頬に雫が伝う。
ふと見上げる空は濁った灰色ばかりが広がる。
湿った空気、微かに聴こえる風の音色。
脱力した肢体は肩が滑らかに滑り落ち、真っ白な思考が脳裏に貼られた。
また一つ頬に落ちた雫は、まるで青年の感情を読み取るように重力のままに流れていく。





「一人行動とは、感心しませんねぇ」

作り笑いを浮かべた青服の軍人が声を掛けた。
草原に立ち尽くす青年に向かって。

「…アンタも同じだろ」
「おや、これは失礼」

わざとなのか、肩と手を上げては何時ものお決まりのポーズをとった。
さわ…と風は靡き草は揺れる。
暑くもなく、温くもない心地よい風が肌に当たる。

「用件は?」

背中越しの会話が続く。
目線さえも、合わせない。
相手に関心を持たされていない証拠だ。

「なに…」

一拍置かれ、ついにジェイドの唇が開く。
その内容がガイの葛藤を買うことになるとは露知らず。

「未だに決意を固められていない様子でしたので」
「…何のだ」
「嫌ですね〜しらぶっくれないで下さいよぉ」

足音がした。
一定の距離を保っていた間合いは縮まる。
少し振り向いた耳元にまでジェイドは顔を近寄らせると楽しむようにこちらの反応を伺う。

「で・す・か・ら〜」

吐息が掛かる程の距離にガイは一歩たじろぐ。
勿論、刺激された耳を押さえ付けながら。

「貴方と…そう、主席総長との親密な関係…と言えば理解出来るのでは?」
「――…!」

感情よりも、身体が先に動いた。
腰に添えていた鞘を引き抜き、微かに反応したジェイドの喉仏へ矛先を一発で定める。
リーチは剣の方が断然有利だ。
ジェイドは抵抗をする様子も無く、されるがままに動きを止めた。

「分かりやすい反応を、ありがとうございます」

余裕の表情はガイをより挑発し、頭に登った血を更に増やしていく。
予想外の大きなリアクションにジェイドは満足感を得る。

「何時から知っていた」
「最近ですよ、最近。貴方の行動を着けさせて頂いた時にちょっと…ね」
「随分悪趣味なんだな、アンタ」

犯罪紛いの行動でさえ、さらりと言ってのける。

「今更…でしょう?」
「…なっ…、」

消えた。
視界に居た標的の男の姿が。
瞬きをしたほんの一瞬の出来事。
左右に首を振り、周りを確認するほんのわずかな間で態勢は逆転したことにガイは気付く間もなく。

「そう…良い子ですね」

ただ、従った訳ではない。
従わせられたのだ。
お得意のコンタミネーション現象とか言う反則紛いの槍が、今度はガイの喉仏を後ろから狙う。
それだけではなく腕までもが背中で拘束された。
キリキリと力強く、軍用護身術であろう業を手首にかけられ、呆気なく握っていた剣を離す。

「つっ…!」
「私もお相手させてくれませんかねぇ。貴方のその身体で」

腰を密着され、背後から尻の割れ目に堅い何かが当たる。
背骨に悪寒が走っては、すりすりと一物が擦り寄ってきた。

「つ、ぁっ…」

男を知るガイの身体はそれだけで反応してしまう。
拘束されたままの手首などに力は入らず、ただ快楽が先に身体を蝕む。
ご無沙汰だった性欲が順応に働いてしまった。

「ああ、前がこんなにパンパンで…どうやらその気になってくれたようで」

服を盛り上げる、勃ち上がった一物はジェイドに裏筋を撫でられ歓喜に震える。
その都度、下唇を噛み締めるガイの口からは甘い嬌声が漏れた。

「…いい、加減…にっ…」
「そんなこと言っても、説得力の欠片もありませんよ」

正に、されるがまま。
ついには草原に押し倒され、まるで魔物の交尾の如く行為は始まる。
手離され、放置された手首すら軍服を握る。
快楽に埋もれ、抵抗という抵抗を失った。

「くぅ…ぁ、ああ!」

汗と、ジェイドにかけられた液体とで、ガイは理性が崩落する。
男に抱かれているというのに、心が通い合っている訳ではないのに。

「…は、いい締め付けですよっ…私に吸いついてきて、」
「じぇっ…〜〜ん、んんっ」

覆い被さるジェイドはギリギリまで引き抜けき、また根元奥へと一物を進めた。
貫かれ、先走りは草の葉にしきりなく流れる。
それを眺めると、ガイは酷く興奮した。

「想像以上ですよ。貴方のっ…淫乱さには」

とんだ男に抱かれる変態が近くにいたものです、と罵られようが関係ない。
絶頂が、間近なのだ。

「イく…!もう、限かっ…」
「一人でイく気、ですかぁ?薄情です、ねっ!」
「ひ、ぁ、でる…!あ、あぁああッ!」

ボタボタと、止まらない。
アナルに収まるジェイドも限界を超えたガイの一物も。

「ふ…ぅ、…」
「はぁー…、あっ…」

引き抜かれたジェイドを追うように放出された液体は溢れ出す。
身体を何とか支えていた足は力無く、そのまま草原に崩れた。
肩で息をするガイを、ジェイドは満足気に口角を上げながら衣服を整える。

「良い光景ですね」

瞳孔が、散大した。
感情を身体が即座に読み取り、対応してくれた証拠だ。
現に胸の鼓動が異常なまでの拍動を繰り返す。
ガイの心臓は胸を突き破って出て来てしまうと思うぐらいの勢いだった。

「男でも後ろだけでイけるものなんですね」
「―――ッ、」

羞恥と、怒りと、理性が身体の中でのたうちまわる。
一呼吸をおいた後に固い握り拳を作っていた。
土が爪の間に埋まる。

「…おや、何ですかその反抗的な目は」

相変わらず変わりない表情でジェイドは跪くガイを見下ろす。
言葉で罵られ、言い返すことは出来ない。
力ずくで黙らせようにも情事の余韻と何より武器が無い、丸腰の状態なのだ。
視界の隅に見慣れた剣の鞘がちらりと見えるだけだった。

「どうやら主席総長の飼い犬は基本的な躾すらなってないようだ」
「ふ、ぐっ…」

ガイの脇腹にヒールの踵が直撃した。
その衝動で仰向けに誘導される。

「貴方は男に抱かれて悦っているマゾヒストなんですよ?」

理解、出来ますか。
望んでそうなった訳ではない。
過去が、望まなかった惨劇がこうなってしまったのだ。
回避出来なかったことが、止められなかった現実が、遅すぎた対処が、将来というガイの希望の種を踏み躙った。
――全てが、手遅れだった。

「俺、は…っ」
「この私に口答えをするというのですか」

まるで最初から言葉を用意していたかのように遮られ、ジェイドは曇った表情を見せた。
凍りつくような鋭い瞳が碧眼を捕らえる。
次の瞬間、誰もが予想していなかった言葉がガイに吹きかけられた。

「面白い」

ただ一言だけ面白い、と。
あまりの想定外さにガイは馬鹿にされた気分になる。

「貴方のその人を怨むような態度…情事中には見せなかった、プライドを必死に守ろうとする姿勢…」
「…何が、言いたい」

ここまでの流れであるガイの行動が淡々と並べられる。
人間だから、否定をし、拒み、大切なものを守ろうとする。
濁った空をちら、と確認するとジェイドは得意の言葉攻めを発した。

「滑稽だ、と言っているのです。貴方のことを」










「もう貴方への用は済みました」

ガイはジェイドの発言から一言も喋ることが出来なかった。
口が独りでに言葉を失ったように、声を出すことが許されないように。
仰向けのまま、声のした方へ見向きもせずに口は塞がれていた。

「この湿気った空気、雨が降りそうですね。私は先に戻ります」
「……」

足音がだんだん遠くに感じられ、見上げる曇天は雨を降らす。
ポタポタと、頬に触れる回数は増え、全身を水が覆った。
それらが冷たく感じられるのは果たして雨だけのせいなのか。

「うっ…」

身体の底から何かが込み上げる。
得体の知れない、くつくつと湧き上がる感情を抑えきずに。

「あ、あぁ…!ふっ…ぁ、――!」

泣いた。
見っとも無いぐらいに声を上げて。
周りの音を雨音がかき消し、協力してくれる。

ジェイドに身体と、精神と、感情と、プライドを弄ばれ、限界だった。
これまでの苦痛に耐えきれる経験を何年か前に強要された記憶が、ガイの脳裏に走馬灯の如く現れる。
辛かった過去が、心の奥底に鍵をかけて厳重に閉まっておきたい現実が精神を食い破ろうと、もがき苦しむ。
縋るようにある人物を想い描き、懇願するようにその名を口にした。

「…ひっく、ヴァン…」





end.
2010/09/12

(あとがき)
な、何この修羅場ー!!(笑
複雑すぎます…!いや、書いたのは私ですが。
気付いたら裏要素が薄めでした。
シリアスに突っ走りましたが…何となく連載ちっくに話を続けました。
ガイの過去だったり、ヴァンとの関係であったり、今後書く要素がてんこ盛りになるように。
これは妄想が広がります…しかし、劣化脳みそなので展開的にはあまりストーリー性のあるものが完成出来るかどうか心配です^^;
一応、『欲得シリーズ』として、ペース的にほのぼの更新予定です。
本当に自分の中の予定としては今後VGや公爵Gを取り込んでいくかもしれない、という…。
悪魔でも予定の未定です!←
次の更新を気長にお待ち下さると有難いです。


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