乙女ガイ
「はぁー……」
見事な溜め息と同時に吸った酸素は吐き出される。
溜め息をすると幸せが逃げていく…だなんて、どこぞの誰かが言っていた。
どうせ迷信だろう、とか本当なわけなるか…と普段ならツッコミを入れるところだが、今はそんな堂々とした否定をしている気分じゃない。
「ん、ぅ〜〜」
すっかり固まった身体を解すために、縮こまった筋肉を伸ばす。
それが妙に気持ち良い。
革張りで出来た高級感溢れる執務椅子は身体を沿ったためにキィ、とわずかな音を立てた。
向き合って書類と葛藤する疲れは日に日に増していく。
そもそも、アウトドア派な自分にとって元々デスクワークなど似合わない。
こんな紙切れとの長時間のにらめっこなど、ブウサギ達の世話をしていた方が何倍も増しである。
「あっちも大変なんだろうなぁ…きっと」
頬杖をついて恋人である軍人のことを気にかける。
きちんと小まめに休憩をとっといるんだろうか、だとか食事は、風呂も仮眠も。
ジェイドのことだろうから仕事を片付けたら泥のように数日間眠り続けるんじゃないのか、だとか。
不思議と恋人の行動を予測し、脳内でそれを想い描くと顔が綻んでいることに気付いた。
「うわ、情けないねぇ…」
少し考えただけでこれだ。
こんな自分、苦笑いでしか対応出来ない。
閉まっておいたはずの感情が次から次へと溢れ出し、すぐに容量を超える程までに達する。
考え出したら、キリがない。
だから、なるべく想わないようにしていた。
歯止めが効かなくなって、しまうから。
栓をしておいたはずなのに。
身体と、精神と、理性とがコントロールを失いかけてしまうから。
ジェイドに、ジェイドから、ジェイドが、ジェイドと、ジェイドのところへ…。
「逢いたい、な」
女々しいのは性分じゃあない。
正直、己を疑いたいぐらい驚きだ。
決して弱音を吐きに行く訳でもない。
迷惑になるぐらいなら消えてしまいたい。
机に上肢をうつ伏せに、静かな空間に更に消えそうな声で呟く。
瞼を閉じてゆっくりとした呼吸を繰り返した。
「逢いたいよ、ジェイド」
恋人の名を呼び寂しさを紛らわす。
そうして、最後の締めへと書類に向かってペンを走らせた。
end.
2010/10/03
乙女ガイイイイイイ!!
突っ込みどころはいっぱいあります、ガイ、執務やってんの?
何で別々の部屋、ジェイド出てこないのかよ(笑
ほら、突発なので基本無計画です^^←
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