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ほのぼの

空は今日も変わりない晴天だ。
そよ風が揺らす質の良いカーテンの向こうからは小鳥の囀る声が聴こえる。
一方、室内はとても静かで…退屈だ。

「おっせー…。早く来いっつーの…」

一人用にして大きすぎるサイズのベッドに寝転がる。
喉を反らせ、なかなか来ない恋人を待つ。
首を長くして、反転した視界から緑が広がる窓を眺めていた。
恋人の秘密の出入り口であるこの窓を。

「いい加減そろそろ、ぐれっぞ…」
「これ以上お前さんに踏み外された道に走って貰ったら困るな」
「おわっ…と、ガイ!お前おっせぇーぞ!」

いつも通りに窓からいきなり現れた恋人を見ては早々、怒鳴り叱る。
寝転がっていた身を起こして傍に近寄った。

「いやぁ、すまない。ここに来る手前、メイド達に仕事を任されて」
「んなもん断ればいいだろ。俺のことの方が最優先だっ」
「そうはいかないさ。ここに顔を出してることは皆に内緒なんだからな」

出入り口の扉からではなく、窓からの来客。
…正しくは外部からの侵入になるのかもしれないが、この侵入は合意の上だ。
そして、窓と言ってもこの部屋の窓は小窓程の大きさではなく、大人一人が難なく出入り出来てしまう大きさだ。

「…だったら、正面から入ってくればいいじゃんかよ」
「あのなぁ。俺はお前付きの使用人なんだぜ。ただの使用人が、他の者にあたかも見せつけるよう正面からそう堂々と用も無くご主人様の私室に入れるかよ」

…うわ、今のは世に聞くデレってやつか。
たまにガイはたらし的なことを言ってくれる。
しかもそれは時に天然であり、前触れも無くやってくる。
あまりにも些細な一言すぎて思わず聞き逃してしまうところだった。
本人は言っておいて恥ずかしくなったのか、こちらが気付いたから恥ずかしくなったのかは定かではない。
しかし、伺うように目線さえも合わさずに頬を赤らめていることから、羞恥にまみれていることには変わらない。

「ガイって本当に天然っつーか…」
「な、なんだよ」
「いや。可愛いなーと思ってさ」

褒め言葉を落とせば、染まった頬に勢いが増したように色づく。
なかなかその反応が面白くて見入ってしまっていた。
面白いというか、何だか嬉しさも一緒に込み上げてくるようで、堪らない。

「じゃあキスしろよ」

唐突の命令に、身じろぐ姿を目で捕らえた。
こんなこと毎日している筈なのに、いざ面と向かって言ってみると案外本人は、未だ慣れていない様子だった。
初心を忘れないというか、いつまでも初々しくいてくれる恋人の反応は嫌いではない。

「そしたら遅れてきたこと、許してやる」

言ってしまえば命令というより、これは一種のわがままだ。
変わらない、ご主人様の気まぐれのわがまま。
それを恋人である使用人はどのように受け止めてくれるのか。

「…分かった。降参だ」
「もちろん、ガイから俺にするんだぜ?」
「そ、そんなことっ、さっき言ってなかっただろ!」

からかった途端に入ってきた出入り口である窓へ逃走を試みた為、必死に引きとめる。
何だかんだ言いながら、時間はかかったもののキスはクリアした。
それだけ済ませるとガイは用事を思い出した、とあからさまな嘘を吐きながら部屋を後にした。
そうして、今日も窓から鮮やかな景色が広がる中、恋人は何度も俺の元に会いに来てくれる。



end,
2011/04/01

(あとがき)
久し振りにLGを書いた訳ですが、書いていた私の方がガイより恥ずかしくなってきました。
ルークは相変わらず、わがままお坊ちゃまです。
今回のガイはルークに対して復讐心ではなく、恋愛感情を持っているパターンは数少ないか、初めてかもしれません。
今までラブラブなLGがどうしても頭に浮かばなかったので。
こういうほのぼの系ならなんとか書けるということを学習しました。
そして気付けば今日は4/1でエープリルフールでしたが、小説の内容は全く関係ありません。
何だか逆にすみませんでした^^;



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あきゅろす。
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