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After the Rain After/一周年企画/神リナ




リナリーに言われるまま、一緒に来たのは近くのショッピングモール。


「…何するんだよ?」


「いいからいいから」



そう言って手を引かれる。


人混みは苦手だがリナリーの頼みならしょうがない。



リナリーと付き合いだしたのはついこの間、梅雨の明けるころ。

しかし付き合うと言ってもすることは付き合う以前ととくに変わらない。


そうもすれば何かしらしてあげたい訳で。



「ここ!」



着いたのはどこにでもあるバラエティーショップ。



「…なんか欲しいもんでもあるのか?」


「傘買おうと思って。ほら神田も来て」



傘なんか買うために自分を呼んだのだろうか。

ずらりと並ぶ色とりどりの傘をぼんやりと見ていると、


「神田もだよ」


なんてことを突然言われた。



「俺の傘まだ使えるんだけど…」


「いいから買うの」


「…お揃いとか嫌だぞ?」



あえて『お揃い』の文字を強調して言う。

あんなもん恥ずかしいだけだ。

だけどリナリーは頬を膨らませて、


「も〜、だから違うの」


なんて言った。


ますます訳がわからない。


じゃあなんで俺も傘を買うんだ?なんて言おうとしたがとりあえずここはおとなしく傘を選ぶことにする。

経験上あの顔をしたリナリーは何を言ってもきかない。


目に留まるのはやはり黒ばかりで、手に取ろうとするとすかさずリナリーが割って入ってくる。



「また黒?神田だったら他にも似合う色いっぱいあるのに〜」


「別にいいだろ…」


「たまには違う色も買おうよ。ね?」



その後も大分説得されて、結局俺は紺色(リナリー曰く、かろうじて許せる色らしい)の傘を買うことになった。


リナリーは薄い紫の、ドットかなんか柄が入っている傘を持っていた。


まぁともかく、決まったんだから買えばいいのだろう。

そうえばあいつの傘も俺が買うべきなのか?
なんて思いつつとりあえず二人分の傘を持ってレジに行こうとしたら、



「あ、違うの。神田はこっち」



とかなんとか言ってリナリーの方の傘を俺に押しつけてリナリーは俺の傘をさっさとレジに持っていった。



「…なんなんだよ?」



わからないことはたくさんあったがリナリーを待たせるのも悪いのでとりあえず俺も清算した。



店を出てすぐそばに置かれている椅子に腰掛ける。



「なんでわざわざお前は俺の傘買って俺はお前の傘買うようなめんどくさいことしたんだ?つかそもそもなんで傘なんか…」


そう俺が尋ねるとリナリーはきょとんとした顔になった。



「…わかんないかぁ、じゃあはい、交換」


そう言ってリナリーは俺が持ってる傘と自分が持ってる傘を交換した。



「……それがどうした?」


「え〜、まだわからないの?こうしたらほら、神田は私がプレゼントした傘使って私は神田がくれた傘使うでしょ?お揃いじゃなくてもお互いがプレゼントした物持ってるのうれしいじゃない。わかった?」



…なんて今更。


自分の鈍さがつくづく嫌になる。


本当に俺は馬鹿なのか?いや、頭はよくないけれども…



そんなんだからうれしいなんて思ってるのはあいつには内緒。



「…初めてのプレゼントが傘なんかでよかったのかよ?」



そっぽを向きながら、赤くなった顔が見られないように。
いつもよりももっとぶっきらぼうに言った。


「いいのよ。私ね、いつも神田が傘置いていってくれてたのすごいうれしかったんだから。あの傘もそのまま使いたいくらい。あ、傘もう買ったんだからあの傘私にくれない?」



「あげねーよ。つかもう梅雨明けたし傘の出番なくね?」



「そうなんだよなぁ…。あ〜、雨が待ち遠しい。てるてる坊主逆さに吊そうかな…って、あれ?神田顔赤くない?」


「ばっ、ちげーよ!」


「赤くなってる〜。可愛い」


「うるせ」


「えへへ。ねぇ、大好き」


「…知ってる」



一緒にいられるのなら、雨が降っていようと降っていまいとどこへでも。

せっかくだから買ったばかり傘をもって出掛けましょうか?



恋は始まったばかり。


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