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#006 KIO
久しぶりに作ったメールを何度も読み返して送信する。
女々しい事は百も承知で嫌われない様に少しでも長くこの関係がもつようにと願いをこめながら送信ボタンを押した。

「キオー」
送信してすぐにタイミングよくナズナが現れてキオの携帯を覗き込む。
「仁王にメール?」
「うん」
パチンと携帯を閉じると音が教室に響く。
「次移動教室だよ」
ナズナが化学の教科書を見せながら告げると慌てたようにキオは準備をして、チャイムが鳴るギリギリに二人して化学室に滑り込む。
「良かった間に合った」
弾む息を整えながらキオが微笑むと、同じようにしていたナズナが頭を縦に振る。
高校になると、実験もしない授業はチンプンカンプンな記号と睨み合う50分間で、ボーと窓の外を眺めていたキオのズボンが珍しく振動を知らせ、驚いたように携帯を開く。
「・・・うそ」
件名はそのままにRe:が左側に付いたメールに心が躍る。
返信なんて来ないと思っていた。
初めて付き合った時から一度だって返事が来なかったというのに、用件はいつも一方通行で終わっていたが為に幸せそうな表情のまま残りの授業時間はたまたHRが終わってからも舞い上がっていたキオをつらそうな表情で見守るナズナが居た事にキオは気付けずに居た。




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