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小ネタ
想い人/骸久




「もう僕は‥‥君の事など」

「好きではありません」






あの日、そう骸から言われた日に俺の時間は止まった。




















「あ゛ーまたあの夢かよ‥」






もう10年以上も前の話なのに、何でこんなにも俺は引きずってんだろう。好きだったんだ。
骸が大好きで、初めて兄貴より信用できる奴でもあり俺に愛を教えてくれた人。
でも、俺達は別れてしまった。
今更になって骸を問い詰めることはしない。だけど、やはり同じ仕事に就職してしまったせいかよく目が合うのも事実。
昔の俺はマフィアなんかになるだなんて、思ってもいなかったのに兄貴が心配だから入ったんだ‥それは本当に骸を追いかけたのではなくて兄貴が危険な目にあうのが嫌だったからだ。


珈琲の香ばしい匂いがキッチンを包む。一応、高いらしい‥でも俺的には安物のインスタントで充分なんだけど…。
でも、珈琲だけでも骸との思い出が出てきてしう、俺は何をしてても骸の事しか最近は考えられないんだ。


「‥‥何で別れたんだろ」


椅子に座って新聞をパラ読みするけど別に、面白いことが書いている訳でもない。
あー駄目だなぁ、しっかりしなきゃ兄貴を心配させるし綱吉…いや、ボスにも迷惑かをかけちまう事になる。でも、昔の事を思い出すのも悪くないよな?
































「む、骸‥‥?」

「ですから君などとは、話すのも嫌なんです」

「………分か‥った」


俺は悪足掻きだけはしなかった
骸が別れたいのなら別れるしかないんだ。心が俺に向いていないのに付き合っていても、俺が辛いだけだと思ったから。しかも俺は意外にも涙さえ流さなかった、それはビックリしたよ。だってあれだけ好きなんだから別れる時だって泣くと思ってたのに。


その日の夕日は俺の気持ちとは正反対、だって言うように清々しくて綺麗な夕日だった。


































「あれから10年‥今じゃ呼び方が"六道"と"川上君"だもんな」










兄貴はあの時、すぐさま俺の家に来てくれて優しく抱きしめてくれたんだ。それで俺は何かの糸が切れたように兄貴を強く抱き返して大泣きした。そう……実を言うと辛くて寂しくて悲しくて仕方なかったのが本心。
でもさ‥どう足掻いてもしょうがない。もう骸は俺のことを思ってなどくれないから。
でも、もしまだ想い続けてもいいのなら俺はおまえ以外を思いはしないだろう。













「あぁ‥‥朝日が綺麗だ」



























そして俺はいつものようにボスが待っているアジトへ向かう。


























































想い人
(まだ好きだなんて)
(俺も女々しくなった)

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