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勿忘草


















何時もは騒がしい万事屋が今日は静かだった。



ソファーに並んで座る上司と部下。

オレンジ色の髪色をした少女は大きな犬と遊びにいった。


銀色の髪色をした上司は何時ものごとく読書をして、黒色の髪色をした少年は静かに茶をすすっていた。














外から聞こえる子供の声はこの静かな空間に響く。



新八の様子は朝から少しおかしかった。


一見いつもと変わらないが、家族以上の絆で繋がった銀時や神楽にはなんとなく気付いていた。
ふとしたときに何処か遠い所を見るような目をするのだ。



言葉にすると、

不安定。

この言葉が今の新八には一番合うような気がする。





銀時も神楽も本能的に触れてはいけないような気がして何も触れなかった。



その結果がこれだ。


神楽はいつもと違う雰囲気に耐えられなくなり、酢昆布買ってくるアル〜、と、大きな犬を連れていったまま3時間程前に万事屋を出ていった。

大方、公園で時間をつぶしているのだろう。



正直、銀時もこの雰囲気から抜け出したかった。


が、新八を一人にしてはいけないような気がするのだ。
触れてはいけないが一人にしてもいけない。

この空気は鉛のように重々しく、バランスを安定さすのに全神経を張らないと何かが崩れそうになる。



新八が少し動いただけでビクッとする。

おそらく新八自身も気づいているはずだ。
この重々しい空気を放っておいてはいけないことを。



そんな理由か、ただの気まぐれかわからないが新八が口を開いた。






「僕が小さい頃からお世話になっていたおばあさんがいるんです」



銀時は黙って話を聞いた。



「父上が亡くなった後ご飯もろくに食べれなくて。お金もないし幼い姉上や僕じゃ、どこにいっても働けない。」




「そんなときそのおばあさんがご飯をわけてくれたり、色々面倒みてくれたんです。」




「それから、僕らも少しずつ仕事ができる年になって。」




「ほとんど会うことがなくなったんです。」




「それでも何ヵ月かに一回ぐらい道で合ったりして、少し話したり。」




「今日、ここに来るとき会ったんですよ。」




「嬉しくて駆け寄りました。」



「でもね、」




「そのおばあさん、僕の事、忘れてました。」









袴の上で握りしめられていた新八の手の甲に水滴がぽたぽたと落ちた。









「仕方がない、事だって、分かって、いるんです。」




「もう、結構な、年だし、」




「でも、やっぱり、悲しくて。」







銀時が新八の頭を軽く撫でてやる。
その手の暖かさで余計、新八は悲しく、切なくなりぼろぼろと大きな瞳から涙を溢す。








「いつか、銀、さんも、僕の事、忘、れて、」




「僕も、いつか、銀、さんの事、忘れる、のかなっ、て。」




「そう思うと、悲、しくて、悲しくて、辛くて、怖、くて、……」






黙って新八の話を聞いていた銀時が口を開いた。




「確かに忘れるかもしんねぇな。」




「…っ……。」




「でも、俺が新八の事や神楽の事や定春のことを忘れても、俺が新八と過ごしたことや神楽と過ごしたことや定春と過ごしたことは消えねェんだよ。」




「………え…?」




「三人(と一匹)で万事屋やってたことも忘れても消える訳じゃねェ。




無くなるわけじゃねェんだよ。」




「…は、…い……っ…」




「な。だからもう泣くな!」




新八の髪をわしゃわしゃとかき混ぜる。
銀時は優しく微笑み、新八を自分の胸に抱いた。




「あー、もー!泣くなってば!」




「だっでェ………銀じゃんがっ、なんか、っいい、こと言うっ、からぁ"……っ…………」



顔を上げた新八の顔は涙と鼻水でぐしょぐしょで。



「ちょ!おま!俺の服で拭くなァ! 」



「うー………」





程なくして神楽が帰ってきて、万事屋は何時ものように騒がしく、下のスナックからは、うるせェェェ!、と、叫び声が聞こえて何時ものような日常に、新八は心の底から嬉しくなった。




「銀さんっ






 大好き!」



「私もネ!」





「わん!」







END









はい。終わりです。

なんかよくわからなくなった。

勿忘草の花言葉は
「私を忘れないで」です。


最初の予定じゃ

「僕を、忘れないでください。」
って新八に言わすつもりだったのに、なんか書きながら「あ、こうしよっかな。こうしたほうがよくね?」とか思いながら色々方向転換した結果がこれです。ハイ。

花言葉瞑目
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あきゅろす。
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