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恐い話*綾浦

※綾部→二年
※藤内→一年
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私が苦手なのだろうな、ということを、初めて会った時に気付いてしまったのだ。
初めてできた後輩に対して、どう接して良いか判らずに数日が経過してしまったなと、綾部はぐすぐすと鼻を啜りながら泣く藤内をじっと見た。

「泣くのは早いぞ藤内」
「もう嫌ですうぅう……」

泣かせた原因というのはこの部屋で最年長である仙蔵で、どこから仕入れたのか生首を求めて戦場を彷徨い歩く亡霊、などと在り来たりながら恐い話を生き生きと語っていた。
両手で耳を塞いで泣く藤内に構わず話を続ける仙蔵に、可哀相に、と思わないでも無いが、果たして止めていいのかという思いが綾部を動かせずにいる。

「因みにこの話を聞いたら誰かに話さないと、そいつの所に首を貰いに亡霊が来らしいぞ」
「ふぎゃあぁああっ!」

極めつけとばかりに仙蔵が良い顔をした途端、耐え切れず叫んだ藤内が突撃するように抱きついてきた事に、綾部はぱちりと瞬いた。

「おやまぁ……」
「ふむ、からかい過ぎたか」

ぎゅっ、と縋りつく藤内の身体は、一つしか歳が変わらないとは言えやはり小さい。
くしゃりと頭を撫でてやれば勢い良く顔を上げた藤内に、どうかしたのかと首を傾げた。

「あ、あの、すみません……!」
「…どうして?」
「いや、あの………」

視線をさ迷わせながら身体を離そうとした藤内の手を思わず掴んで、言葉を探している姿をじっと見る。

「藤内は、私が嫌い?」
「っいえ、そんなことは!」

今まで訊けなかったことを口に出せば、即時に否定された事にもう一度おやまぁと声を漏らした。

「お前が取っ付きにくいだけだろう」
「ひいっ」
「立花先輩」

ぽん、と後ろから肩を叩かれただけで、びくりと身体を跳ねさせた藤内が再び抱きついてくるのを受けとめながら、綾部は不思議そうにぱちぱちと瞬いた。

「取っ付きにくい、ですか?」
「自覚無しか」

厭きれたように溜め息を吐かれて、ちらりと腕の中で怯える藤内に視線を落とした。
泣いた後の顔を拭うようにした後に藤内の頬を摘めば、むぎぃ、と何とも言えないような声が漏れる。

「藤内は、私が嫌いじゃないの?」
「……はひ」
「なら、いいや」

頷いた藤内にぱっと手を離してゆるりと笑ってから、藤内をぎゅうっと抱き締めた。

「え、え……?」
「可愛い」

慌てる藤内に構わずに力を込めれば、一連の流れを見ていた仙蔵にぽすりと頭を撫でられる。

「良かったな、喜八郎」
「………はい」
「え、と……?」

こくりと頷いて頬を緩めれば、さて、と手を叩いた仙蔵に綾部と藤内はそちらに視線を送った。

「実は先程の話には続きがあってだな」
「ひっ」

嫌な予感を察してかたかたと震えだした藤内に、綾部はよくやるなぁと他人事のように思う。
反応の薄い綾部よりも藤内をからかうのが楽しいのだろうなと頷いて、綾部は藤内が耳を塞げないようにぎゅっと手を握ったのだった。



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S法。






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