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SS系2
命を繋ぐ花鉢 道化師
(2009/08/14 8:41)

私の名前は叶。骨董屋『魔宝堂』の主人。
魔宝堂には貴方の望む道具が有ります。

ただし、それは誰かを幸せにしたり、しなかったり……
おや?お客様がいらっしゃたようです。



扉を乱暴に開けて入って来た男は、陳列してる骨董品には目もくれず、真っ直ぐにこちらに向かって来て言った。

「お願いします。息子を助けて下さい」

蒼白な男の顔は悲壮感を漂わせていた。
せきを切ったように話す男。
私は口を挟まず男の喋るがままに任せた。
喋り終えて落ち着きを取り戻した所を見計らい、私は男に尋ねた。

『つまり、原因不明の病気に倒れた息子さんは、持っても後数日の命だとお医者様に言われた訳ですね?』

「そうです。ここは何でも願いが叶うと聞いて来たんです。どうか息子の命を救って下さい。その為なら私は何でもします」

『北斗の神に魅入られた人を救うのは自然の摂理に反します。しかしそれなりの覚悟がおありなら少し位なら』

「お願いします。息子には夢があるんです。後二・三年で叶うかも知れないんです。今、死ぬのは可哀想です。せめて夢が叶ってから」

『三年ですね。三年なら寿命を延ばす道具をお貸ししましょう』

「本当ですか?!三年でも構いません。お願いします」

私は奥の部屋から白い花を咲かせた花鉢を持って来た。

『夜中の零時に指先を少し切って貴方の血を一滴この花に垂らしなさい。ほんの少しだけ赤みが挿して息子さんの寿命は一年延びます。三日繰り返せば花がピンクになり三年寿命が延びます』



何度も礼を言いながら帰ろうとする男に、念の為にもう一度声を掛ける。

『必ず三日だけにして下さい。それ以上は責任持てませんよ』






一ヶ月ほど経ってから少年が訪ねて来た。
父の遺言で花鉢を返しに来たと言う少年は、何かを探る様に真っ直ぐに私を見つめてきた。あの日男が帰る間際に見せたのと同じ迷いのない瞳。
生命力に輝く瞳の奥に哀しみを湛えていた。

私は視線を落とし花鉢を見る。


真実を知れば少年はどんなに嘆き悲しむだろう。

花鉢は何も語らず真っ赤な花を咲かせていた。





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