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第六章
不可解な行動


「ブラック先輩、用がないなら私は寮に戻るんですけど」

「…」


一向に口を開かないシリウスを置いてカノンは失礼します、と足を寮の方に向けた時に腕を引かれた。突然のことにカノンはバランスを崩しそうになった。転ぶと思い痛みを覚悟したが、すぐに視界が真っ暗になり、温かい何かに包まれていることに気付いた。それはこの間の夜会で経験した体温と一緒だと気付くと、カノンは顔を赤く染めた。

顔を上に向けると端正なシリウスの顔があった。黒曜石の瞳がカノンの呆然となっている顔を映しているのがわかる。


「は、離して下さい…」


すぐ近くにまだ生徒がたくさんいるのにこの人は何を考えているのだろうと怪訝にも思えた。しかも、傍から見たら男同士が抱き合っているのだから余計な誤解を招くだけなのにというのも考えればわかるだろう。ちなみに自分だったらそんなの嫌だなとカノンは思った。




シリウスは一瞬力を強めてカノンを抱きしめた後、すぐに離した。それにより、カノンはホッとした。


(そっちの気があったら本当に困りものだなぁ)


少し早鐘を打つ心臓をどうにか落ちつけようとカノンは自らの手を胸の前に置いた。


「結局、用って……このためだけに私を呼び止めたんですか?」

「…」









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