第五章
身の振り方
世話になっている自分が文句を言える立場ではないのでカノンは決心した。
「私、行きます」
「「「えっ?」」」
カノンの言葉に3人は呆然となったが、すぐにイーグが心配した。
「無理をしなくてもいいんだよ。体調が悪かったとか理由なんていくらでも言えるから」
「それだとイーグさんの立場が悪くなるじゃないですか。私一人のせいでそんな迷惑掛けられません」
カノンの瞳には揺るぎのない光があった。これではもう行かなくてもいいとは言えなくなってしまったのでイーグも腹を括った。
「わかった。じゃあ、明日の夜会までに最低限の礼節だけは教えるからね」
「お願いします」
この日から詰め込みの猛レッスンが始まった。その日の夜は寝ることや休む間もなく、歩き方からの基本的なことからテーブルマナー、ダンスのステップ等、普通の人間なら何ヶ月かは掛かるであろうものをカノンは何とか頭に入れ、体に叩き込んだ。
といっても、さすがにダンスは基本のステップしか習得できなかったため誘われたらやんわり断るようにと釘を差された。
よく見なかったがダンスの時のイーグはどこか青い顔をしてカノンのステップを見ていた気がした。
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