第四章 目に入ってきたものは どうしようか悩んでいるとカノンの視界にある店が映った。どうやらアクセサリーショップみたいなのだが、その中のガラスケースに入っているペンダントに視線を奪われた。カノンの脚は無意識の内にその店の近くまで引きつけられた。そっとガラスに触れ間近でそれを凝視する。 「ヴァルガレイス…」 カノンの目の前には見慣れた刀の形をしたペンダントが映っていた。急いで店の中に入ると別の方向から入ろうとした客とぶつかった。 「す、すみません」 瞳をぶつかった人物に向けると、相手は驚いていた。そこにいたのは最近カノンと一騒動を起こしたシリウスだった。シリウスは間近で見るカノンを凝視していた。 「あ、あの?」 「えっ?あぁ、こっちこそ悪かった。怪我はないか?」 我に返ったシリウスはすぐにカノンの身を労わってきた。カノンは普段と態度が違うことに驚いたが、彼の言葉に首を縦に振った。 「ブラック先輩こそ怪我はないですか?」 「先輩って…。お前、俺を知ってるのか?」 「えっ?先輩、一度私のこの姿見てますよね?」 まるで話が噛み合わない二人だったが、シリウスが目を凝らしてカノンの顔を見ると、すぐに青褪めた。 「お、お前カノン・ルヴェルディッ」 シリウスが驚いて言うのでカノンは慌てて彼の口を塞ぎ、辺りをキョロキョロ見回した。周りに見知っている人物が傍にいないことにホッとすると、シリウスの口から手を離した。 「あまり大声を出さないで下さい」 「わ、悪い」 「そういえば、ブラック先輩もこの店に用事ですか?」 「あぁ」 「じゃあ、一緒に入りましょう」 そう言って扉を開けてカノンは中に入って行った。それをシリウスは呆然と見つめていた。いつもは男の姿しか見ていなかったが、カノンの今の姿を見たらシリウスの中で何か熱い思いが湧きあがっていた。 (まさか、そんなわけがない…) 自分の感情を否定するかのように髪を掻き上げてからシリウスは中に入った。 . [*前へ][次へ#] |