第二章
後悔ばかりが
小さな泉の辺にカノンを下ろすとレックスとノエルは人の姿になった。
「ここで見張りになってやるから。水浴びでもしてきたらどうだ?」
「カノン。私も一緒に入る!」
そう言ってカノンに抱きつこうとするノエルの頭をレックスが鷲掴みにした。
「お前は俺と見張りに行くんだ」
「ヤダ〜!」
ズルズルと引き摺られて行くノエルにカノンは手を振る。
二人の姿が見えなくなるとカノンは今まで自分に掛けていた変身魔法を解いた。少しだけ身長が伸び、髪は背中の真ん中ぐらいまで長さになった。
誰もいない泉でカノンは服を纏わない体で徐々に水に浸かっていく。
「少し冷たい」
泉に映る月が波紋で形を変えるがそれすらも綺麗に見えた。空を見上げると月がカノンに笑いかけているように見えた。それが最後に助けた少女の笑顔と重なる。
「結局私は…」
カノンの頬を雫が伝い、それが泉に新たな波紋として落ちた。そして、振り切るように一気に泉に潜り込んだ。泉の中は透き通ってはいるが、暗闇が支配しているようなものだった。あの優しい月の光もこの中には届かない。
息が苦しくなり、一気に水面に出たカノンはそのまま自分の服のある場所まで戻り服を着ようとしたが、このまま着ると服が濡れてしまうことに気づいた。
「どうしよう」
そうしているとどこからかタオルが投げられた。
「えっ?」
タオルがきた方角を見るとそこにはいるはずのない人物がいた。
「アデル…?」
彼女は微笑んでカノンを見ていた。
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