第二章
夜の空
何とかさっきあった喧嘩はあの部屋の住人達の間で済んだため他の皆に知られることはなかった。
カノンは一人でこっそり寮を抜け出すと静けさのある廊下を歩いていた。消灯時間は過ぎているため、先生達に見つかると危ないのだが、今はそんなことを気にしている暇はなかった。
(男の子って沸点が低いものなのかな?)
近くの窓を開けると夜の空気がカノンの髪を撫でる。窓の向こうには森がうっそうと茂っているのが見える。その森を月の光が優しく照らしているのが幻想的だと思った。
カノンはここで何度目かわからない溜息を吐くと瞳を閉じた。
―レックス、ノエル。いるんでしょう?―
―あぁ…―
―今から行けばいい?―
―えぇ、ここに来てちょうだい―
カノンが瞼を上げると空中に月の光を浴びる白銀の狼と梟がいた。
「レックス、私を運んで。ノエルは周りを警戒して」
二頭の獣は頷くと、カノンがレックスの背に乗り空を駆け抜けた。
「やっぱり空はいいね」
「だろうな。ヴァルガレイスがいればお前一人でも飛べるのにな」
「うん。そうだね」
カノンのバリアジャケットを形成する役割を持つヴァルガレイスは現在行方不明。そのせいでカノンは現在空を飛ぶことができなかった。
「まず第一にすべきことはヴァルガレイスの回収が優先事項。二人ともいい?」
二人が頷くとカノンは安心したように笑った。
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