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第一章
憤慨

初めて乗る汽車もさることながら、軋む床などにもカノンは興味を示していた。しかし、あちこち見ていたせいか、急に出て来た人物に気が付かずにぶつかってしまった。


「ご、ごめんなさい」


ぶつかった相手の体からなのか、異臭によりカノンは顔を顰めた。そして、相手の顔を見ようと視線を向けると相手は脂っこい黒髪同様の瞳を怪訝そうに細めていた。カノンの顔をじっと見た後興味を失ったようにすぐに背を向け歩き始めた。


(返事をしないの!?)


一応、ぶつかったこちら側が悪いのだが、何も言わない相手に対してカノンは憤慨していた。
そんなカノン達のやり取りを近くのコンパートメントから見ていたのか、急に少年が声を掛けて来た。


「お前、もしかして新入生か?」


突然のことにカノンは驚いたが、うんと頷いた。すると、少年はこっちに来いよというような感じでカノンの腕を引っ張り、自分の席へと導いた。







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あきゅろす。
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