第一章
新しい使い魔
「そういえば、レックスはどうしたの?」
ノエルはカノンに甘えるように抱きついて胸に頭を押し付ける。それを拒まず、寧ろカノンは頭を撫でてやった。
「ちょっと締めて来た」
にこやかに言うノエルに一瞬カノンはほだされそうになったが、すぐに物騒な言葉が頭の中で反復された。
「…締めて来た?」
「うん!」
褒めて褒めてと主張するノエルの笑顔にカノンはたじろいだ。そして、間髪いれずに部屋のドアが勢いよく開けられた。ドアの所にいるのは人間姿のレックス。顔はどこか青ざめていた。
「おい、カノン…」
「ど、どうかした?」
切羽詰まったかのように言うレックスにカノンは怯みそうになった。レックスはレックスで大股でカノン達に近寄るとノエルに指差した。
「今すぐこいつを消せ!」
「え?でも、同じ使い魔同士だから面倒をみるって言ったのはレックスだよね?」
「使い魔もへったくれもあったものか!」
かなりご立腹のレックスにカノンは困るだけだった。それに不満そうな顔をしたノエルが喰らいついた。
「レックスのくせにカノンを困らせるなんて、使い魔失格!」
「まだ生まれて間もないお前に使い魔の何たるかを問われたくねぇ!」
目の前で喧嘩が繰り広げられるのを呆然とカノンは見ているしかなかった。
「彼女を作ったのは間違いだった?」
イーグが楽しそうに聞いてきたが、カノンは首を横に振った。
「仕方ないことですから。入学の際に連れていける動物が害のないものだけなのを知らなかった私が急遽作り出してしまったのに、勝手にこちらの都合で消してしまうのは可哀そうですから」
そう、ホグワーツに入学する際に動物が連れていけるのだが、カノンの傍にはレックスしかいなかった。しかも、動物形体時は狼なものだから他の生徒に怖がられても仕方ないと思い作り出されたのが、今レックスと喧嘩しているノエルである。彼女はフクロウを母体にイメージして作りだされた。
「二人とも、もういいでしょ?明日は早いんだから、今からそんなに騒がないで」
カノンにそう言われてしまうと二人は黙ってしまった。イーグはその様子を微笑ましく見つめていた。
二人の喧嘩のせいで午後の明るい時間だったはずがもう日が入り始めていた。
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