第一章
入学前夜
イーグは不機嫌をそのまま表したような顔をしていた。
「可愛くない…」
「可愛さを求めないで下さい」
今はちょうどイーグの家のカノンのために誂えられた部屋で明日のホグワーツへの入学式に備えての準備をしていた。カノンのトランクに押し込まれる服は全て男物の服ばかり。
「なんで女の子で入学してくれないの?」
「別にいいじゃないですか。イーグさんには迷惑かけないようにしますから」
そう、カノンは変身魔法で自らの容姿と年齢を変えたのだった。実際は女であるはずなのに男へ、年齢も13歳から11歳へと。
「まぁ、帰ってきたら普通に女の子の格好になってもらうからね。にしても、君達の世界の魔法は便利なんだね」
「(帰るのいやだなぁ…)…便利って言ってもこの魔法を維持するのはけっこうきついんですよ?」
「じゃあ、なんでそんなことするの?」
「女だと何かと動きづらいですからね」
遠い目をしてカノンは呟いた。訓練校時代でも古代ベルカの騎士として、またレアスキル持ちとして疎まれていたが、さらに上の職に就くと今度は女だからという理由であれこれ雑用みたいなのを押し付けられたのが思い出された。
カノンが一人で瞑想に入っていると、近くの開いている窓から一羽の白い鳥が入って来た。
「カノン!」
「おかえり、ノエル」
ノエルと呼ばれた鳥はすぐに幼女の姿になってカノンに抱きついた。
「にしても、よくこの子を作ったね」
イーグが感心したようにノエルを観察し始めた。
「寄るな!変態イーグ!!」
「へ、変態…」
さすがに幼女姿のノエルの一言に少なからずダメージを受けていた。
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