プロローグ
始まりの始まり
あの時はまだ傍にいられると思っていた。私が教えれることの全てを伝え切れるまで…。
「止め!整列!」
周りよりもまだ幼い少女の声で数人の魔道着に身を包んでいた者達が一斉に動作を中断した。そして、少女の言葉にバラバラになっていた者達が一寸の乱れもなく整列した。
「今日の訓練はここまでです。全員、しっかり休みを取ること。以上、解散」
澄んだ声が空気を震わした。
「カノンさん!」
先程まで訓練の指導をしていた少女は名前を呼ばれて振り返ると、自分よりもいくらか年下の少女に呼び止められた。
「なのはちゃん?」
走ってくる彼女にカノンは笑顔を浮かべた。
「どうかした?」
「あの、さっき召集が掛かりました。それで至急、第一ミーティングルームに来てほしいそうです」
「ありがとう。わざわざゴメンネ」
「いえ、大丈夫です」
にっこり笑って返してくれる彼女にカノンも優しい笑顔を浮かべた。
「じゃあ、行ってくるよ」
「はい」
召集場所へ向かうために一歩足を踏み出してから、カノンは何かを思い出したかのように止まった。それになのはも不思議そうに首を傾げた。
「そういえば、なのはちゃん。いつも言っていることなんだけど」
「はい?」
「私のこと普通にカノンって呼び捨てでいいんだからね?年だって近いんだから」
「えっ?でも、カノンさんは私よりも年上でしかも上官ですから」
何度このやり取りをしただろうか。カノンが呼び捨てでも構わないと言うと必ずなのはは年上だの上官だのと理由をつけてカノンの提案を拒んできた。カノンもカノンでなのはが何度そう答えようともしつこい位言い続けてきた。
「上官でもなのはちゃんの方が私よりも技術面は先輩なんだからね」
後でちゃんと呼んでもらうからねという言葉を残してカノンは今度こそ進み始めた。
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