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私達は立つ!
事実、持実。

泣き止んで、落ち着く頃には、夕日が沈むか沈まないかという時間であった。
暖かな腕が離される頃、幸の耳も力無く垂れた。

「ごめんなさい」
「幸ちゃん、謝ってばっかりたね」
「……昔からの癖。」

困ったように笑って、目尻を拭う。目の前の少年が、誰だか解らず幸は首を傾ける。

「高石タケル」
「高石くん。」
「タケルでいいよ。幸ちゃん」
「ありがとう。」

素直な気持ちを述べて、幸は恥ずかしげに俯く。服の裾を掴んで、茶色のうさぎの耳が、幸の表情を隠す。泣きはらした目は赤に染まる。
それを見たタケルが、「幸ちゃんの、うさぎみたい。」なんて言われて二人でクスクス笑い出す。

「うさぎみたい。なんて初めて言われた。」

気まぐれな猫か、帰りを待ち続ける犬だと、言われたの。どっちだって、って、聞き返したのを覚えてる。
曇る幸の表情で、過去の選ばれし子供が言ったのだろうと、思った。そんな過去を楽しいけれど、叶うはずない。なんていう記憶はタケルの幼少期にもある。家族と過ごす楽しい時間だ。
だが、そんな夢のような希望も僅かに残っているのも本人が一番理解している。目の前の女の子もそうだ。とタケルは自分の姿と被せて見た。

「確かに会えないのは悲しいけれど」
「みんながいるんでしょう」

柔らかな笑みを携えた少女が見せたのははっきりと明確になった意志。両腕にある色とりどりのソレのなかの一つが反応して光りを放ち形をつくる。

「紋章が、光を放っているわ。やっぱりみんな、負けたのね」
「幸ちゃんの紋章、そんなにあるの?」
「託されたから。最後の生き残りに。って。」

勇気、友情、愛情、誠実、知識、純粋、希望、光。その中の希望もつ子供はあたしだった。
ほかの子が居なくなるにつれ紋章は個性が平均値が下がって次にその傾向の個性の強い子に渡される。最後に扉を潜る瞬間は、私を含めて三人。

「5人も居なくなったんだ」
「そう。戦いの鍵は、紋章だったから引き継がれた。」

私は希望、誠実、光を持っていたの。
今では平均する個がないから、私が一番下だから。反応することはいつまでもないと思ってた。
ないものだから、反応することはなかった。

事実、持実。
(どうして反応してるの。今更)

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