[携帯モード] [URL送信]

私達は立つ!
悲劇、否劇。

「大丈夫よ、空たちが悪いデジモンをたくさん倒したから。」
「選ばれし子供たちがヴァンデモンを三年前に倒したんやで。」
「あ、いたの。テントモン。」
「失礼でんな。」

テントモンは短い手を振りながら、解説するが。私の耳には届かずに、記憶を蘇らせる。確かあの時は…。

「待って三年前、じゃあ今は何年だっていうの。1995年?」
「なんでだよ、今は2002年だ。」
「1992年じゃないの?」
「10年、家出にしちゃあ長ェよな。」
「ジューネンってなんだ?食いもんか大輔。」

興味津々な顔をしたブイモンが大きな目を開かせる。

「二十一世紀………。」

アンゴルモアの恐怖の大魔神は来なかったし、車は空を飛んでる!?。飛んでる!?大事だから三回言うよ。車は飛んでる?

近くの少年に食らいつくように、襟首を掴んでゆさりゆさり揺らす、その後ろでゴマモンがケタケタ笑っている。お気楽な奴め。

「車は飛んでないし、アンゴルモアも来てないよ。来たのは大魔王みたいなヴァンデモンがお台場にね。…えっと、君の名前は。」
「私。君たちが選ばれし子供たちなら私は、きっと先代の生き残りの匹野幸です。」

困ったように笑う私に、一匹のデジモンが反応を示して、私の頭の上を飛ぶ。

「ねぇ、昨日のテレビに出てたね。幸ちゃん。」
「…なんの話かな?」
「ね、タケル。昨日のニュースぅ。」

匹野幸。
十年。
子供。

その三つの単語でタケルが気がついて口を滑らした。十年前に起きた八人の子が行方不明になったニュースだ。確かニュースの後番組が内容に繋がっていた。

「十年前の行方不明事件。」
「……やっぱり、十年がたっちゃったのね。」
「幸ちゃん。」
「大丈夫です。置いて行かれるのには、慣れたんで。」

悲しげに笑って、平気。と言う。じゃないと気を使う、誰かといるのも、一人でいるのも、どちらも辛いが。

「嘘。悲しそうな顔してるもの。」
「……悲しいよ。でも、私は託されたから、泣いている暇だって叫んでいる暇だって、喚いている暇もないわ。」


みんな、あのゲートを通る寸前にやられたわ。一番小さかった私が、ゲートを通ったけれど、それも間違えた出口だったの。けれども進まなきゃならないわ。帰る先に。真実を告げるために託されたから。

悲劇、否劇。
(真実を告げる?)(私がなにか)(私という存在の確立。)

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!