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囚われた鎖5


嬉しそうにそう言った古泉の頬を思いきり殴った。
後悔は……全くといっていいほどしとらん!むしろすっきりした位だ。

頬を殴られたというのに笑顔な古泉に若干戸惑う。
……怒ら、ないのか?

「怒ってますよ。ただそれよりも嬉しいんです」

……嬉しい?
どこがだよなんでだよ全く本当に意味が解らん。

頬が少し赤く腫れているところからみてかなり痛かったのは一目瞭然だ。俺自身右手がジンジンしているしな。
それなのに、怒りをあらわにしないとは…思いもしなかった。

「…怒ってほしかったんですか。怒った僕に何をされてもいいと、そう思っていたんですか」

右手を取り、俺の顔をじっと見ながらそう言う。
……近からず遠からず、といったところだろうか。怒って…殺してほしかったのだから。



それが表情に出ていたのだろう、一つ溜息をもらすと古泉がきつく右手を捻ってきた。
先に述べた通り右手はジンジンしていたので、握られた所が痛んだ。

「……離せ、」
「嫌です。期待には応えたい主義なので」

にこりと微笑まれた所で嬉しくも何ともないね。こいつの今からする行動は俺がしてほしいのとは違うのは解るからな。




その後古泉はにっこり顔で俺の手錠を短いのに変え、ベッドサイドに固定させると自分の身体で足を押さえ付けた。
この時俺は酷く抵抗した、ああしたとも。
全く効果は無かったけどな!
何をされるのか解らなくて古泉の次の動きをひとつひとつ見逃さないように抵抗しながらも見ていたのが問題だったのか。

俺から一度離れて俺が危険だろうと思ってみなかった戸棚をあけ、何やら探しているようだった。

「ここ、覗きましたか?」
「そんな嫌な予感しかしないような所覗くわけねぇだろ。それよりもこれ外せよ」
「嫌です」

それきり俺達は互いに無言だった。古泉が探し物をしているがちゃがちゃと言う音が響く、それ以外の音は…俺が手錠を外そうとしている音だけだろうか。
此処から逃げるつもりじゃない。嫌な予感がするからそれを回避できるように、そのために。


漸く探していたものを見つけたのか俺を見、にやりといやらしく笑うとそのまま近寄ってくる。
持っているのは……赤い、鉢巻きのような物だ。鉢巻きより少し幅が広いそれは一見何も恐れるような物ではないが、今のこの状態、状況の俺は少なからず恐怖心を感じた。
……古泉の表情に加虐的な物が見え隠れしているからだろうか。

「……僕のものに早くなってくださいよ。貴方の全てが…欲しい。待っていたんですよ、囮のボスの身代わりを貴方が殺す瞬間を」

何気なく囁かれた言葉には信じがたいものがあった。
俺は依頼を…遂行できていなかったということか?
あのボスは囮。身代わりでしか無かった。……つまりまだボスは生きている?この世のどこかで俺を笑いながら。

「僕の名前を聞いたときに気付いてほしかったんですが…やはり殺す相手の名前なんて覚えていないんですね」
「……っ!そ、うだ。古泉一樹……どこかで聞いた覚えがあると思ったら」

どうして忘れていたのだろうか。今までの全ての標的を覚えていたわけではないが、こんな…つい最近の標的の名を。
情報屋のハルヒから聞いた名前だったんだ。
今回の標的だったボスの名前。
それが、古泉一樹だった……。





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