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囚われた鎖4


「……だって貴方はもう僕のものでしょう?」

僕のものなんですから、僕が貴方の命を預かっているんです。
生かすも殺すも僕次第。
まあ飽きたら貴方の願い通り、殺して差し上げますよ。貴方が望む方法でね。

まるで今日の晩御飯のメニューを話すかのような口ぶりで物騒な事を話す。
楽しそうに、しかし目が笑っていないというある意味物凄く器用なことをやってのける目の前の男に、少しだけ恐れを抱いた。


そのあとは気が逸れたのか、大人しく俺から離れ、何もなかったかのように扉から出ていった。
最後に一言、自分の名前を告げて。

覚えておけ、ということなのだろうか。どこかで聞いたことのある気がするその名前を。
情報屋のハルヒから聞いたのだろうか。昔の事過ぎて、どんな内容だったかなんて覚えていなかった。



拘束された状態で、何をすることも出来ない。いや、ある程度は出来るのだが……なんというか、やる気が起きない。
それもそのはずだろう、俺が届く範囲にあるのは果物などの食べ物と水。あとは……手洗い、シャワー室、位か。

果物はあっても、ナイフは置いていない。その辺りの棚を漁れば出て来るかもしれないが、何か嫌な予感がするから止めておいた。

それに、食べ物や水に変なものを入れられている可能性もある。
毒とかは入れていないだろうが、それ以外なら入っていそうだ。自白剤とか、……催淫剤とか。
前者はとりあえず置いておくとし、問題は後者だ。
こっちのほうが入っている可能性がある。
考えられる理由は、俺がどんな反応をするのかなどを楽しむ為。


誰がお前の思い通りに動いてやるもんかと監視カメラに向かって睨み付けた。そんなことしたところで相手が喜ぶだけなのは知っていたが、止められなかった。

「おやおや、まだそんな元気があったんですか」

入ってきた古泉を睨み付けると、驚いたようにそう言ってきた。
しかしその瞳はとても楽しそうに歪められていてそれを隠す様子でもない。結局、俺が自分に簡単に落ちないのを見ているのが楽しいのだろう。
俺には理解不能だ。

「……何か用かよ」

古泉を睨みながら聞く。
用があるなら早く済ませてくれ、つまらない内容なんだろう。お前と一緒の空間で同じ空気を吸っていることが既にもう忌ま忌ましいからな。

そう思っているにも関わらず古泉は気付いていない振りをして見つめてくる。
気持ち悪い。
嫌悪感たっぷりで睨み返しても効果はない。寧ろ嬉しげに表情が緩められる。
…この拘束するものが無ければ、思う存分殴ってやるのに。

「そうですね、あったにはあったのですが今回は見送りましょう。そのかわりに、……他のことを先にしましょうか」

一体何をするつもりだ、
という言葉は発っせられなかった。
かわりに潜った声が自分の口から出て来る。
気持ち悪い。
どういうことだ?

「ふぁ、は……、やめ、」

意味が解らない。
どうして端正な顔立ちの男…古泉がすぐ目の前、至近距離にいるのか。どうして俺の唇が奪われているのか。…一体何がしたいのかすら、解らない。



何分くらいそうしていただろうか、酸欠でふらふらしてきた俺に気付いたのか。はたまた自分の気が済んだのか……顔が離れていった。
つ…、とどちらのものか解らない唾液がお互いを繋いでいて忌ま忌ましい。
それを見せ付けるように舐めとる古泉に更に苛々が募る。
……あー、殴りてぇ。
殴れる位置にいるし、殴っていいよな。よし、殴ろう!

「ふふ、美味しいです」





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