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寂しい背中16


一体何と言った?
DVしていない?
どちらの古泉も?
彼女の傷は古泉の仕業じゃないのか。

「ほ、んとに…そうなのか?お前の仕業じゃなくて……」
「はい、僕も最初からそこが引っ掛かっていたんです。それに考えてもみてください。彼女の腕に煙草を押し付けたような跡があったでしょう?僕は禁煙家ですよ、出来るわけがない」

確かに古泉は喫煙者なら誰しもが解るようなにおいが、まるでない。
つまり、あの傷は……古泉じゃない。という訳か。

じゃあ、どうして彼女は俺に古泉にされたと言ってきたのだろうか。

「彼女は僕を好きではありません、それは僕もですが。お互いに好き合っていないのに付き合っていたわけですよ、彼女は僕を悪者にして別れたいのでしょう」
「何の目的でだよ、あの子が古泉を悪者にして何のメリットがあるって言うんだ」

何故だ、古泉を悪者にしたってメリットなんて思い付かない。
古泉は面はいいし、人当たりだって……まあ、基本はいい、頭もいい、で恨まれることなんてないと思うのだが。
彼女は一体何のメリットがあるんだ。

「メリットは、貴方です」
「俺……?」

意味が解らない。
メリットが俺?
俺がメリットとしても、それよりもデメリットの方が大きいだろう。まず古泉と付き合っていることがばれれば、人気者古泉と付き合ってるって他の女子からの嫉妬は凄まじいだろう。
なんか女子って色恋沙汰に関しては男子の想像の及ばないところがあるからな。

「どういう意味だ?」
「それについては後ほど。これが一部分を除く全貌ですよ。何か質問は?」

どこか腑に落ちない点があるが、古泉が俺に嘘をついてメリットがある筈がない。……いや、あるか。
こちらの古泉がやったなんて最初から思っていない。やったとするとコイズミだと思っていた。
そっちはそっちの口から聞きたい。

「コイズミと変わってくれないか?あっちと話がしたい」

古泉はあわてふためいた様子で俺を止めようとしていたが、止める訳がない。
いつもは流される俺だが、今回は流されてはいけないからな。

「襲われても知りませんよ?」
「大丈夫だ、多分。こっちにも秘策はある」

自信いっぱいに…とは言わないが、そう言うと古泉は俺の本気が解ったのか、小さく溜息をついて解りました、と言った。

「では、変わります」

瞳を閉じて、開いた時の古泉の目を見て変わったことが解った。
古泉はどこか慈愛の篭った感じなのだが、こっちは少し冷たい。

「どうかしましたか?貴方から僕に会いたいなんて。もしかして僕に襲われに…」
「話したいんだ、お前と」

そう言うとにこりと微笑み、俺へ返答を返した。勿論、目は笑わずに…だ。

「僕は今貴方を犯したい気持ちなんです。ぐちゃぐちゃになるほど貴方を犯し尽くして、僕だけのものになってほしい」

その発言を聞いて、背中がぞくりと冷えた。怖いとか、そういうのじゃない……戸惑いで、だ。
勿論、こいつがこの段階で拒否するなんて想像通りさ。そうすると次の段階へと俺も移行しなければならないな。

「……話が終わった後なら何でもしてやる。だから今は俺と話してほしい」

決めていた台詞を一字一句間違えず読んだ。
真っすぐコイズミを見ると、些か悩んだ様子でいる。
その様はまるで古泉そのもの。
まあ、古泉なんだから古泉そのものというのは当たり前なんだが、古泉とは所作が少し違う。

「……嫌です。そんなの、守ってくれるかどうか解らないじゃないですか」





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