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寂しい背中15


部活帰りに彼女に会って、それから普段は饒舌な古泉が寡黙になった。
彼女と会い、帰ってきた古泉になんともマニアックなプレイを強制的にさせられた。

これはもしかすると、彼女と古泉が会うこと…というか、彼女と二人きりになることによってコイズミに変わる、そう言うことなのだろうか。

「言いたくないなら言わなくていい。ただ、俺はお前を大切な仲間だと思っているんだ。だから出来たら話してほしい」

真っすぐに見てそれだけを伝えると、少し目を大きくして古泉は驚いていた。

「こんな僕でも仲間だと、大切だと思ってくださるんですか?」

そんなことに驚いていた方に俺は驚いたね。
確かに腹は立ったさ。
でもお前であってお前でない状態なら、お前に怒ったって仕方ないだろう。
お前がしたなら俺は怒って、一発二発殴らせてもらうかもしれんが違うんだからしょうがない。

「当たり前だ。で、話してくれるのか、くれないのか?」
「話させていただきます。でもそのまえに、」

古泉は言いにくそうに俺から目を逸らし、顔を赤くして小さな声で呟いた。

「……服、着てください」

一瞬何を言われたのか解らなくて、はてなマークを頭の上に浮かべていたのだが言葉の意味を理解した後、自分の今の恰好を省みて死にそうになった。
夢中だったから気付かなかったが、襲われた恰好のままだった。
思い出したら野菜の存在をはっきりと自覚し、気持ち悪くなる。

「ト、トイレ!あ、いやそのまえに着替えんとならんなっ。古泉とりあえず用意しやがれっ」
「は、はい」

床だった為、身を隠すものが何一つなくて必死で身体で隠しながらそれだけを叫ぶとしばし呆然としていた古泉が気付いたかのようにタンスへと駆けていった。


ぶかめのシャツとズボンを着て、トイレに行き、用事を済ませて帰ってくると古泉は何故か正座して待っていた。
下を向いたまま、いつも張り付けている笑顔ではない、苦しげな表情の古泉の前に座ると漸く俺に気付いたのか、顔を上げて無理矢理張り付けた笑顔を見せた。

「お帰りなさい」

いつもよりぎこちない微笑みに、眉間に皺が寄る。

「無理して笑うな。気持ち悪いんだよ」

そう言うと、古泉は無理矢理作った笑顔を引っ込め、情けない表情になった。
だが、そのほうが何倍もマシだと思う。作られた顔よりも、素の顔のほうが良いに決まっているじゃないか。


とりあえず床で話すのもなんだから、台所のテーブルに座ることにした。ついでに紅茶を容れておいた。コーヒーにするかどうか悩んだが、心を落ち着かせるには紅茶のほうが良いかもしれないと思ったから。

「ありがとうございます」

古泉にも出すと、感謝の言葉を述べ、一口飲んだ。俺もそれに倣い、グビッと飲み干した。

「……ちょっと、熱かったな」
「いえ、これくらいがちょうどいいですよ」

にこりと素の微笑み(だと思う)をし、優しくそう言ってくれた。
それよりも、と古泉は続け、真剣な表情で俺を見て、あの話を切り出した。

「僕は彼女にDVを働いたことはありません。勿論僕だけでなく、彼もです。彼の方にはどうなのか解りませんが、僕の方には全ての記憶が残っているので間違いはないでしょう。貴方が見た傷は彼女の自演……もしくは別の誰かに傷つけられた跡だったと考えられます」





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