寂しい背中11
気付くとそこはソファで、古泉の硬い膝の上だった。
これが朝比奈さんなら嬉しいかもしれな…いや、長門でも良いかもしれない。
「あ、目が覚めましたか?」
「硬い。」
「もう少し我慢してください、貴方いきなり倒れたんですよ」
いきなり倒れた?
確かに暗闇に連れていかれた感じはあったし、少々頭が痛かったけれど倒れるほどではなかったはずだ。
不思議なことはいっぱいあったが、心配げに見つめている古泉を安心させるため、とりあえず大丈夫だと言った。
尚も心配そうに見ていた古泉だったが、その言葉に少し安心したのか表情が緩んだ、気がする。
「あまり無理はしないでくださいね」
「お前がそれを言うのか」
「ふふ、すみません」
恨みたらしげに言うと困ったように笑いながら古泉は謝罪の言葉を述べた。
お前、ぶっちゃけ反省していないだろ。
反省の色が見受けられんっ!!
「まあ、別に構わないんだが」
謝られたくて言ったわけでもないからそれは構わない。
俺の頭を優しく撫でる古泉の手が気持ち良くて、目を閉じた。
「もう少しお休みください。きっと疲れているんですよ」
「そ、かもな。もうちょっとこのままで…」
「解りました」
落ち着くまで、俺も古泉も何も話さなかったけど触れた手が、凄く優しくて嬉しい。
「ん、もういい。ありがとな」
落ち着いて、満足したからそう言って起き上がると少しふらりと立ちくらみを起こした。
立ちくらみで倒れそうになった俺を古泉はしっかりと受け止め、床との衝突を避けられた。
優しく抱き留められ、そのお礼を言おうと顔を上げれば古泉は何故か少し、難しそうな顔をしていた。
「貴方が僕に優しいのは万人に対してのソレと同じですか?」
「はっ?…意味が解らん」
突飛な質問に頭が混乱する。
優しい?
優しいのは古泉だろうに。
俺のは、自分がしたいことを、自分が正しいと思ったことをただしているだけで優しいとかそういうのではない、と思う。
「僕は貴方の何ですか?」
「……多少お前は変わってはいるが俺にとっちゃ大切な、団活仲間だよ」
「そう、ですか」
少し沈んだ言葉に、何か悪いことを言ってしまったのかと心配したが、特に悪いことも自分では言った記憶がないので気にしないことにした。
「……僕の中で貴方は、特別な位置にいるんですけどね」
ぼそりと古泉が何かを呟いたが、全然聞き取れなかった。
聞き返そうとも思ったが、古泉の表情が聞くのを拒んでいたのでやめておいた。
「昼に、彼女と話してこいよ。俺は帰るからさ」
「――ダメです、貴方は待っていてください!」
必死にそう言われ、少し怯む。
「…そうでなければ僕を止められそうにありません」
「解った、待ってる。お前が帰ってくるのを待ってるから」
そう返すと、嬉しそうににこりと笑って彼女にメールを送っていた。
どこかもやもやした感情が俺を支配していたが気のせいだと思うことにした。
「では、行ってきますね」
「おう、行ってこい」
心なしか少しすっきりした顔の古泉が、扉を開け出ていった。
そういえば何時に帰ってくるのだろうか。
それによって夕飯の時間を変えなくちゃいけないのだがうっかり聞くのを忘れていた。
まあ、シチューを作っておけば帰ってから温めれば食べられるし良いだろうと思い、作る為、立ち上がった。
「……遅いな」
とうに八時を過ぎ、古泉が出ていってからはや七時間が経った。
もしかしたら、古泉は彼女と一緒に夕飯を食べているのかもしれない。
料理得意だもんな、あの子。
いつだったか貰ったクッキーが美味しかったのは記憶に新しい。
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