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寂しい背中2


絶対に声なんて出すものかと食いしばっていたけれど、あまりの痛みにそれすらも出来ない。
一度洩れてしまっては止める事など出来ないが、それでも押さえなければ。
ここは玄関で、いつ誰が通るか解らない。
がんがんと、背中にドアが当たり音が鳴る。

……やばい、誰か通ったら怪しまれる。

確かに古泉の部屋は上の階で奥部屋だ。そのため余り人は通らないが、それでも誰かが通る可能性は必ずしも零ではない。
それなのにこんな、がんがんと音を立てていたら「どうしたのか」と思うだろう。

この時の俺は自分が殴られていたり蹴られていたりする事よりも、古泉の近所付き合いの方に気がいっていた。
だから気付かなかった。
古泉が、凄い残忍な顔で笑いながら、舌なめずりをしていたことを。

「……っぐ、あ!」

髪を引っ張られドアから部屋へ引きずられていかれる。少しした段差の所で肩や腰を強打し、声が出てしまう。
それも気にせずに歩を進める古泉に苛々が募っていくが、妙な反論をしたところで逃げられないんだからどうしようもない。
反論することも、抵抗することも無駄な事だと、この短い時間に理解させられてしまった。


連れて来られた場所は、寝室だった。リビングを抜けた寝室も古泉らしくきちんと整理されていた。
その端にあるどでかいベッドへ投げられる。
衝撃に耐えられるようにと心構えしていた俺はそのベッドの柔らかさに驚いた。
とてもふかふかで、柔らかくて、痛くなかったから。

「な、んだよ?一体…何のつも……っ?!」

最後まで話すことは出来なかった。
古泉がキスしてきたから。
彼女がいるとか、そんなことが無ければ嬉しかっただろう。
実際の所、俺は古泉のことが好きで好きで堪らないのだから。

だけど今の古泉は…可愛らしい彼女が、いる。

「……嫌だ!やめ、んぅ」

どん、と押したのだが古泉の体はびくともせず、再度口付けてくる。今度は腕も押さえられ抵抗できないようにされた。

好きな相手とのキスなのに、悲しく思えるのはやはりこれが望んだ形でのキスではないからか。こんな…無理矢理なキス、望んでなんかなかった。
恋人達の間にある、あの甘い空気の中で優しくされるのが俺の理想だったのに。
なんで、こんなことになるんだよ。

……恋人でも、何でもないのにどうしてキスなんてしてくるんだ、訳解らねぇよ。

「ふぁ、はっ……や……」

突然俺のまだ萎えているソコへ刺激が走った。
……古泉の手が、俺のを触って、る。
優しさなんて皆無の目茶苦茶な激しい愛撫だったが、古泉が触っているというそれだけでソコは緩く勃ち上がった。

古泉は勃ったソコに気を良くしたのかさっきまでとは打って変わったように優しく愛撫しだした。
優しいその動きに、射精感が高まる。

「イっちまうから…やめっ…ふぁ」
「良いですよ、イっても」

イかそうとしているのか、優しく、なのに追い詰めるように、扱いてくる。
古泉の手が、声が、息が、俺を高みへと導く。
彼女が、とか男なのに、とか何も考えられない真っ白な状態でただただ古泉に翻弄されていた。

「ふっ、や……イ…く!あ、やぁぁぁぁぁっ!!」

呆気なく俺は盛大にイった。
古泉の手にも思いきり掛かってしまう。
……そこで思い出した。

彼女がいる古泉に、イかされた、と。

後に残ったのは多数の後悔と、僅かな幸福。
自分自身信じたくなかったが、確かに俺は少し、ほんの僅かだが幸福を感じていた。

古泉が自分の汚れた右手をまじまじと見ているのに気付くと、その幸福感も綺麗さっぱり消えた。





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