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闇夜の譫言14


彼に顔を近づけ、それだけを呟くと僕は彼から離れ、外へと足を運んだ。
……彼とこれからも過ごすには些か僕と彼は世界が違いすぎる。だからと言って僕も彼も、もう離れられないだろう。

自嘲気味に笑い、待っているであろう彼女の元へ向かった。
あの、小さな少女ならなにか解決策を持っているかもしれない。そう思ったからだ。
公園に続く道すがら考えるのは彼のこと。あんなに一生懸命な彼は初めて見た。僕のためにあそこまで頑張ってくれる彼を見て、全てを諦めている僕とは違うなと思った。
曲がり角を曲がったところに気配もなく立っている彼女を見、近寄る。

「お待たせしてしまったでしょうか」
「いい。貴方の願いは解っている。私から出来ることはない。貴方次第で未来は変わる」

淡々と話す彼女の言葉に僕は驚愕した。
彼女にもこれからの僕らには手を出せないということか。しかも、僕の動きによって未来が変わるということは僕が彼に対して、いや他の人に対してもどのような行動をすれば全てがいい方向にいくのか考えなければならないということか。
それが、僕に課せられた課題というのならば全て完璧に熟してみせよう。

「解りました。僕は彼と一緒に居たいですから頑張ります」
「ただ、彼に対してあのような発言はいけない。次似たような発言をした時は彼が悲しんでも私は貴方を許さない」
「……肝に銘じておきます。では、僕はまだ行かねばならないところがあるので失礼します」

彼女と別れた後向かうのはいつもいる表からは少し入り込んだ裏の道。
普通の一般人がいるはずのない、裏通りの中でも人間がいない通りに歩を進める。
見慣れた道を通りながらもこれから言わなければならない言葉を考えて、緊張した。機関を裏切るような形になるといえばなるのだから、当然だ。
出来ればもう来たくなかったそこのドアを開き、中に入る。

「こんにちは。彼女は今いらっしゃいますか?」

入ったところにいる双子の黒い少女に尋ねると、片方の少女がこくりと頷き、もう片方の少女が奥を指差した。まるで僕が来ることを知っていたかのような反応だ。

「お久しぶりです、お元気でしたか」
「久しいな、そなたがここを最後に来てから何百年経ったのかもう数えるのも面倒で百二十八年頃から辞めたぞ。……言いたいことは解っておる」

そこで一言区切り、僕の後ろにいた双子の少女に目配せ退出させた。大人しく引く彼女達を肌で感じながら、少し怖く感じる。
今、抗戦になればきっと僕は一たまりもないだろう。すぐに死ぬと解る。それは彼女達がいるからといって変わることではないけれどそれでも気分的な問題では大いに変わるのだ。
扉が閉まり、本当に僕は彼女と二人きりになった。

「安心せい。我は別にそなたらの恋に反対する気は毛頭ない。だが彼女らはやはりな、相手があやつでなければ反対せぬとは思うのだが」

ふわりと笑い、彼女は僕に向かいそう言った。あっさりとした承諾に腰が抜けそうになる。

「反対されると、思っておりました。僕のような罪人が彼と一緒にいるなんて誇り高き貴方には許されないことだと」
「何を言うか。あれはそなたの罪では無かろう。あれはあやつが悪い、我を守ろうとしああなったのであろう?」

僕の罪は確かに彼女を守ろうとして起こったことだ。だが、それで許されることでは無い。同胞を殺したのだ、それも彼女の実の兄を。

「それに関しては気にすることは無い。上でもあれに関しての処罰は不問で終わった」
「……ですがっ!」
「くどい男は嫌われるぞ」





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